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「日本企業のAI導入、2年で20%→ほぼ60%へ」MPower村上由美子氏、グロービス廣瀬氏、Crafter小島氏が議論--T4IS2026『AI時代の学び』

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「米国はエントリーレベル雇用を大量レイオフ、日本では起きていない--この時間差が再教育の窓」(村上氏)

▼ 開催概要

ソーシャス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:尹世羅)は、2026年4月26日(日)、東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井カンファレンスにて開催した招待制エグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」(以下、T4IS2026)のメインステージにて、パネルディスカッション「Learning in the Age of AI(AI時代の学び)」を実施いたしました。

フィナンシャル・タイムズ(FT)東京特派員のハリー・デンプシー氏をモデレーターに迎え、政策・スタートアップ投資の視点からMPower Partnersジェネラルパートナーの村上由美子氏(元OECD東京センター所長/内閣府経済財政諮問会議 民間議員)、ビジネス教育の視点からグロービス経営大学院 研究科長の廣瀬聡氏、企業のAI導入現場の視点から株式会社クラフター(マネックスグループ)創業者CEOの小島舞子氏が登壇。AIが教育・職場・キャリアをどう再編するかについて、率直な議論が交わされました。

過去のサミットには、オードリー・タン氏(元台湾デジタル担当大臣)、平井初代デジタル大臣、チャールズ・ホスキンソン氏(Cardano創設者)、キャシー松井氏(MPower Partners 共同創業者・元ゴールドマン・サックス副会長)らが登壇しています。

▼ 登壇者

・村上由美子(Yumiko Murakami)氏 - MPower Partners ジェネラルパートナー(元OECD東京センター所長/内閣府経済財政諮問会議 民間議員)

・廣瀬聡(Satoshi Hirose)氏 - グロービス経営大学院 研究科長/グロービス マネージングディレクター

・小島舞子(Maiko Kojima)氏 - 株式会社クラフター(マネックスグループ)代表取締役CEO・創業者

・ハリー・デンプシー(Harry Dempsey)氏 - フィナンシャル・タイムズ 東京特派員(モデレーター)

▼ 議論のハイライト

▶ 1. 日本のAI政策--「軽い規制、イノベーション・ファースト」

村上氏は、岸田・石破両政権下で政府のAI政策に関わる諮問委員を務めてきた経験を踏まえ、欧州との対比で日本のスタンスを整理しました。

「日本のAIアプローチは、欧州の重い規制中心のアプローチとは対照的に、極めて軽い規制でイノベーション・ファーストの方向性です」(村上氏、要旨)

教育政策については、文部科学省が昨年末にAI教育の基本方針を発表していること、初等教育からAIを建設的に取り込む方向性であることを紹介。インフラ面では2020~2021年から公立校の児童生徒一人ひとりに端末が配布済みで、整備はおおむね完了しているとした上で、次の課題は「人的レイヤー」だと指摘しました。

「インフラは整っています。問題は人的レイヤー--AIを使いこなす指導ができる教員が、現場にはまだ十分にいないことです」(村上氏、要旨)

その背景として、村上氏は日本社会の構造的事実を強調しました。

「日本は『人がいない』という現実を受け止め、それを直視し始めています。だからこそ、AIを建設的に教室に取り入れようとしている。残された時間は、5年かもしれないし、10年かもしれない。技術の進展次第では、2年かもしれない」(村上氏、要旨)

▶ 2. 企業のAI導入--2年で「20% → ほぼ50~60%」へ

小島氏は、株式会社クラフターが日本の1,000社超に対して実施してきたAI導入ヒアリングを引用し、ここ2年の急激な変化を提示しました。

「2年前は、大企業もSMBも含めて、AIを業務に取り入れている企業は約20%でした。2か月前にNTTドコモが出した調査では、ほぼ50~60%まで到達しています。導入の段階は終わり、次は『どう使うか』の段階に入っています」(小島氏、要旨)

その一方で、ボトルネックは「導入そのもの」から「現場での活用」に移行しているといいます。社員が業務にAIを組み込めていない、どのプラットフォームを選べばよいか分からない、そしてAI生成情報の真偽を判断する力(メディアリテラシー/批判的思考)が不足している--という3点を、現場の共通課題として挙げました。

「フィンランドは欧州のメディアリテラシー教育で1位とされています。教員が18~20項目のチェックリストを生徒に渡し、有名人や著名人の動画を見せて『これは本物か、フェイクか』を議論させる。発信者の意図を読み解く訓練です。これは生徒だけでなく、いま社員教育の中核になりつつあります」(小島氏、要旨)

▶ 3. グロービスのAI教育--「ゼロから1を生む力」と「最終意思決定」

廣瀬氏は、グロービスがAI時代のビジネス教育で「AIにできないこと」に焦点を絞っていると述べ、2つの教育領域を提示しました。

「私の見方では、AIにできないことは2つです。1つ目はゼロから1を生み出すこと--『あなたは人生を何に使うのか』というゴール設定。2つ目は最終意思決定です」(廣瀬氏、要旨)

1つ目について、グロービスでは「志(こころざし)」教育を中核に据えており、学生は毎年、5分間の「私の志」プレゼンテーションを行うといいます。

「『あなたは人生を何に使うのか』--これは今のところAIが答えを与えてくれない問いです。これは、あなた自身が考えなければならない」(廣瀬氏、要旨)

2つ目の「最終意思決定」については、すべての授業がケーススタディ形式で、教員は「正解」ではなく「あなたの答え」を学生に求めるとしました。

「AIは選択肢を素晴らしく提示してくれます。けれども、最終的にどれを選ぶかを決めるのは、あくまであなた自身です」(廣瀬氏、要旨)

加えて、グロービスは「テクノベート(Technovate=Technology+Innovate)」という独自の言葉について商標を取得しており、ファイナンス・会計を含むすべての授業に、AIやビッグデータの要素を組み込んでいると紹介しました。

さらに廣瀬氏は、グロービスのファカルティ(教員)はすべて100%実務家であり、アカデミシャンではない、と強調しました。

「ビジネスの本質は単純です。他人と同じことをすれば、あなたはディスラプトされる。ナンバーワンにはなれない。だからこそ、ユニークでなければならない、他人と異なる意思決定をしなければならない。これを教えるには、厳しい意思決定の経験がある実務家しかいない、と私たちは考えています」(廣瀬氏、要旨)

▶ 4. AI依存リスク--20代中盤の学生に顕著

廣瀬氏は、ロンドンで初等教育を受けた後に帰国した自身の経験を踏まえ、日本の教育が「人と同じであれ」と教える文化の中で、AI依存がさらに深まる懸念を共有しました。

「英国にいた頃は『Satoshi、君はユニークであれ、他人と違うことに価値がある』と常に言われました。日本に帰ってきたら、『なぜ君はそんなに他人と違うんだ、同じであれ』と言われた。ここは日本の教育が改善できる、唯一にして最大の点だと感じています」(廣瀬氏、要旨)

そのうえで、海外の体験クラス等で観察された懸念を率直に述べました。

「20代中盤の学生にチャットに質問を投げかけると、AIが先に答えを出してくれるのを待つ学生が一定数います。『どうやってその答えに辿り着いたんですか』と聞くと、平然と『それはAIの答えです』と返ってくる。これは特定の国の問題ではなく、世界的な傾向です」(廣瀬氏、要旨)

廣瀬氏は、フルタイムMBA(平均年齢29歳)とパートタイム/オンラインMBA(平均35歳)世代の比較も提示。一定年数の社会人経験のある後者は「自分で考える訓練」がすでにできており、AIをアイデア拡張のツールとして使うのに対し、若年層ほどAIに「飼われた(hostage)」状態になっていく傾向が見えると述べました。

「AIは確実に思考を拡張する素晴らしいツールです。しかし現実に見えているのは、人がAIに飼われていく状況です。これは意思決定を担う人材を育てる側として、極めて注意深く扱わなければいけない問題です」(廣瀬氏、要旨)

▶ 5. 日本人のOECD最高水準の数学・読解力--「次に必要なのは批判的思考」

村上氏は、元OECD東京センター所長としての経験から、日本の教育システムの「強み」と「次の課題」を整理しました。

「OECDのPISA調査では、15歳の日本人生徒は数学(numeracy)と読解力(literacy)の両方で世界トップクラスです。」(村上氏、要旨)

そのうえで、米国・中国との比較を、トップ層と母集団全体(マス)の双方から提示しました。

「母集団全体で見ると、米国よりも中国よりも、平均では日本の方がはるかに高い。これは、私はナショナリスティックでなく、現実主義者として申し上げています--私はアメリカで人生の半分を過ごしましたから」(村上氏、要旨)

「ただし、日本の教育システムの最大の課題は、批判的思考--『箱の外で考える力(think outside the box)』です。現実の世界には、明らかな正解がない問いも、そもそも答えがない問いもある。日本の教育は、これを伸ばすのが遅れています」(村上氏、要旨)

「AI時代において、これが一番のスキルです。これが、教育が一番フォーカスすべきところです」(村上氏、要旨)

そのうえで村上氏は、日本にはすでに強固な基盤があることが、変化の前提として大きな強みだと指摘しました。

「クリエイティブに考えろ、箱の外で考えろと言われても、簡単な計算もできない、読み書きもできなければ、そこに到達できません。日本は、その基礎をすでに築き上げた稀有な国です。だからこそ、ここからのリープが可能なんです」(村上氏、要旨)

▶ 6. 米国はエントリーレベル雇用を大量レイオフ--日本では起きていない

パネル後半、デンプシー氏が、米国の法律業界、銀行業界、メディア業界などでエントリーレベル職がAIに置き換えられつつある現実を提起。村上氏は、日本との対比を構造的に説明しました。

「米国を見れば、スタートアップも大企業も、エントリーレベル職を大量にレイオフしています。日本では起きていません。日本では、一切起きていない、と言ってもいいでしょう」(村上氏、要旨)

「これは部分的には人口減少という構造要因によるものですが、もう一つ大きな要素があります。それは、雇用主が従業員と『生涯のパートナーシップ』を結ぶという日本企業のマインドセットです」(村上氏、要旨)

「AIの巨大な津波が来て、『労働力の20%は要らなくなる』というメッセージが届いたとき--米国企業の少なくない数は、その20%をレイオフします。日本企業はそうしません。再教育(リスキリング)し、再配置し、人材プールをより生産的に活用しようとします」(村上氏、要旨)

「日本のこの『硬直的』と批判されてきた労働市場構造が、この時代においては優位に働き得る--再教育と再配置の時間を、日本企業に与えているんです」(村上氏、要旨)

▶ 7. 新人ではなくCEO側に問題がある--AIネイティブ世代の活かし方

デンプシー氏が「エントリーレベル職の喪失で若手が現場経験を積めなくなるのではないか」と問いかけたのに対し、小島氏は、むしろ問題は「若手」ではなく「上司側」にあると応じました。

「若い世代は、どの国でも、AIを使いこなしています。SNSもそうですが、AIにもネイティブです。彼らは『この部分、AIで置き換えられないですか?』とすぐに発想する。私はむしろ、新人を心配していません」(小島氏、要旨)

「心配なのは、長く同じ業務をやってきた、いわゆるドメインスキルを持つ層、そしてCEOです。新しいアイデアを止めてしまう人にならないでください、と私は伝えています。新しい使い方を知らないなら、まず学んでほしい」(小島氏、要旨)

▶ 8. 中小企業(SMB)にこそ大きな機会--日本企業の98%は中小

小島氏は、企業規模によってAI活用の最適解が大きく異なることも提示しました。

「日本企業の98%は中小企業(SMB)です。エンタープライズはマニュアルもワークフローも整っているので、AIを乗せれば活きる。けれども中小は、人が採れない、若い世代も入ってこない、いま現場にいる10年・20年のドメイン人材が、AIに置き換えるのではなく、AIを自分の業務にどう乗せるかを評価できなければいけません」(小島氏、要旨)

「ここに、日本のスタートアップが入っていく余地があります。米国・中国のアプリケーションは数多くありますが、中小企業はそれを見つけられないし、サポートしてくれるスタートアップ/ベンダーを求めている。スタートアップ側にも、現場から学んでプラットフォームを提供できる大きな機会があります」(小島氏、要旨)

▼ Q&A--「日本の教師不足、AIは解決できるか」(公益財団法人KIBOW より)

会場質疑では、公益財団法人KIBOW(GLOBISグループの非営利財団)の参加者から「日本の公教育では教員が不足し、過重労働も深刻。AIはこれを解決できるか」との質問が出ました。

廣瀬氏は、自身がKIBOW投資委員会のメンバーでもあることに触れつつ、教員の業務分析を起点とした事業機会として答えました。

「教員、特に小・中学校の教員の業務量を分析してみてください。評価業務にどれだけ時間を使っているか、生徒の基礎的な質問にどれだけ時間を使っているか。ここは、AIで大きく時間を圧縮できる領域です」(廣瀬氏、要旨)

「グロービスはAI関連で2件の特許を取得しています。1件はレポート評価システムで、評価時間を劇的に削減します。もう1件はチャットシステムで、生徒の質問の大半をチャットで解決できます。これらは教員の時間を取り戻すための、非常に大きな領域です」(廣瀬氏、要旨)

▼ 登壇者・モデレーター プロフィール

▶ 村上由美子(Yumiko Murakami)氏 プロフィール

ジェネラルパートナー、MPower Partners

村上由美子氏は、日本初のESG重視型ベンチャーキャピタルファンドであるMPower Partnersのジェネラル・パートナーを務めている。日本の大学を卒業後、渡米しスタンフォード大学大学院に進学。卒業後の最初の職場は国連で、バルバドス、カンボジア、ニューヨークで勤務した。ハーバード大学でMBAを取得後、約20年間にわたり投資銀行業界で活躍し、主にゴールドマン・サックスのニューヨーク、ロンドン、東京のオフィスで勤務した。2021年にMPower Partnersを立ち上げる前には、OECD(経済協力開発機構)東京センター所長として7年間にわたり、各省庁の経済政策立案に携わった。現在は内閣府経済財政諮問会議の民間議員をはじめ、複数の省庁の委員を務めている。

▶ 廣瀬聡(Satoshi Hirose)氏 プロフィール

グロービス経営大学院 研究科長、グロービス マネージングディレクター

日本長期信用銀行にてデリバティブ・リスク管理業務に従事後、米系戦略コンサルティング会社ATカーニーにて、全社/事業戦略立案・提携戦略支援・M&A推進プロジェクト等、多数のプロジェクトに参画。その後AIG/AIU保険会社執行役員として全社構造改革、事業買収・統合等を推進。更に大手プライベートエクイティファンド、ベインキャピタルに買収されたベルシステム24の常務執行役員・共同COOを経て、2016年よりグロービスに参画。既存事業の変革、新規事業の立ち上げ経験多数。また、危機管理対応面での経験も豊富。慶応義塾大学経済学部卒業、カーネギーメロン大学大学院経営管理工学科(MSIA/MBA)修了。

▶ 小島舞子(Maiko Kojima)氏 プロフィール

代表取締役CEO、株式会社クラフター(マネックスグループ)

北海道生まれ。早稲田大学在学中の2010年にスタートアップを共同創業し、副代表兼CTOとして30本以上のiOS/Androidアプリを開発。累計500万人超のユーザーに利用される。2016年に株式会社クラフターを設立。マーケティング特化型チャットボット「CraftChat」を開発し、300社以上の法人に導入。2022年7月、同社をマネックスグループへ売却。2023年6月には、社内資料を安全に参照できる企業向け生成AIプラットフォーム「Crew(クルー)」をリリース。現在は、一般社団法人Women AI Initiative Japan理事、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員、NPO法人Waffle理事、Newspicksプロピッカーも務める。Forbes Japan Women in Tech 30選出。2025年8月『企業競争力を高めるための生成AIの教科書』出版(Gakken)。

▶ ハリー・デンプシー(Harry Dempsey)氏 プロフィール

フィナンシャル・タイムズ 東京特派員

フィナンシャル・タイムズの東京特派員として日本企業を取材。以前はFTのコモディティ担当記者を務め、さらにその前は産業記者・速報記者として活動。FT入社前は約5年間日本に滞在していた。

▼ 関連リンク

・Tech for Impact Summit 公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja

・ソーシャス株式会社 コーポレートサイト:https://socious.io/ja

▼ ハイライト映像

「AI時代の学び」パネル全編は、Tech for Impact Summit 公式 YouTube チャンネルにて公開しています。

・YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=uGiWg4GqSeI

▼ メディア取材のお問い合わせ

本パネルの引用・写真・取材のお問い合わせは、Tech for Impact Summit 運営事務局(summit@socious.io)まで。

引用にあたっては、本リリースに掲載した発言を、出典「Tech for Impact Summit 2026『Learning in the Age of AI』パネル(2026年4月26日、東京・紀尾井カンファレンス)」明記の上、ご利用いただけます。なお、本リリース中の登壇者の発言は、英語での議論を日本語に要約・翻訳したものです。

▼ Tech for Impact Summit について

Tech for Impact Summit(T4IS)は、ソーシャス株式会社が2023年から東京で主催する、テクノロジーと社会的インパクトの交差点を扱う招待制エグゼクティブサミットです。SusHi Tech Tokyo の公式パートナーイベントとして開催され、ビジネス・政策・文化の各領域のリーダーが、人類が直面する最も緊急な課題への対応を議論しています。

▼ お問い合わせ先

ソーシャス株式会社

Tech for Impact Summit 運営事務局

・Email:summit@socious.io

・公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja

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