脱炭素“後発組”からモデル地域となった今治市の取り組みのポイントとは?
愛媛県今治市(市長:徳永繁樹)と東京海上日動火災保険株式会社愛媛支店(支店長:今津啓司)は、第5回ローカルSDGs四国表彰において「審査員特別賞」を受賞しました。受賞の対象となったのは、2024年に地域の企業、金融機関、関係機関などが連携して立ち上げた脱炭素経営支援体制「今治モデル」です。地域の中小企業を対象に、脱炭素の取り組みを“意識変容”から“行動変容”、“伴走支援”、さらには“コミュニティ形成”まで一貫して支えるプログラムを構築。CO2削減と経営改善の両立を目指す今治オリジナルの仕組みです。2025年度には、環境省から「モデル地域によるフェロー地域への横展開」の対象として全国で唯一採択され、愛媛県内の自治体へも横展開が始まっています。なぜ「今治モデル」が注目されるのか――後発組からフロントランナーとなった今治市の取り組みのポイントを解説します。

第5回ローカルSDGs四国表彰で「審査員特別賞」を受賞した東京海上日動火災保険株式会社愛媛支店の皆さんと今治市環境政策課の職員
地域を支える産業のCO2排出量削減に向き合うため、ゆるやかな座組みで企業支援をスタート
造船やタオルなど、ものづくり産業が地域を支える今治市では、地域全体のCO2排出量の約7割を産業分野が占めています。一方で、脱炭素化に向けた取り組みは、企業の主体的な努力に委ねられがちで、特に中小企業へ向けた脱炭素支援が十分に行き届いていないという課題がありました。
転機となったのが、2023年11月の「ゼロカーボンシティ宣言」です。2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた姿勢を明確にし、2024年度には、中小企業を対象に脱炭素化の取り組みを後押しする支援事業をスタートしました。
実施にあたって、今治市を中心に、包括連携協定を締結している東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上日動」)をはじめ地元金融機関、今治商工会議所などが参画する“ゆるやかな座組”を形成。各機関が役割分担しながら支援できる体制を構築することで、支援する側も無理なく継続できる運用体制を整えました。この“ゆるやかな座組”が、今回の受賞理由となった地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築の基盤となりました。

「今治モデル」を推進する「イマバリグリーンプロジェクト」のロゴマーク
最初のハードルは低く――「学び」だけで終わらせない“4ステップ”で実装まで支援をつなぐ
「脱炭素」という言葉には、どうしても心理的なハードルがあります。取組の必要性を理解していても、最初の一歩が踏み出せなければ、せっかく整えた支援体制も十分に機能しません。そこで「今治モデル」では、独自の「脱炭素経営支援プログラム」を設計し、第1ステップにカードゲーム型ワークショップを採用しました。
経営支援といいつつ参加対象を経営者に限定せず、現場の担当者も含めて参加できる形にすることで、体験を通じて脱炭素を“自分ごと”として捉える入口を用意。難しそうに見えるテーマを、まずは楽しく理解できる場に変えることで、参加のハードルを下げ、参加者の裾野を広げることにつながっています。
続く第2ステップでは、東京海上日動の教育プログラムを「今治版」にカスタマイズした座学を実施します。自社のGHG(温室効果ガス)排出量の把握・算定の進め方や、脱炭素経営のロードマップ策定のポイントなど、現場でそのまま使える実践手法を学習。理解を「行動」に変えるための土台を固め、次の一歩へつなげます。
第3ステップでは、専門家である脱炭素コンシェルジュが企業ごとの課題を丁寧に掘り下げ、各社に最適なGHG排出量削減プランの検討を伴走支援します。さらに、第4ステップとして、プログラム履修者を「今治グリーンフェロー(通称:バリグリ)」として認定。推進役同士がつながり、学びや実践を共有できるコミュニティを育成することで、企業単体の取り組みを地域全体の機運へと広げていきます。
意識変容から行動変容、伴走支援、そしてコミュニティ形成へ――4つのステップで支援をつなぐことが「今治モデル」の核です。

第1ステップ「意識変容」プログラムで実施しているカードゲーム型ワークショップ
他の参加者とコミュニケーションを取りながら、楽しく脱炭素を学べると好評
「今治モデル」の詳細はこちらから
○地域ぐるみで脱炭素を加速!「今治モデル」から描くゼロカーボンの未来(PR TIMES)
○バリグリプロジェクト(今治グリーンプロジェクト)HP
ローカルSDGs四国「審査員特別賞」――今治モデルが選ばれた理由
この地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業が評価され、第5回ローカルSDGs四国表彰で「審査員特別賞」を受賞しました。
ローカルSDGs四国(LS四国)は、2021年2月17日に設立された産官学民金連携プラットフォームで、環境省中国四国地方環境事務所四国事務所と四国環境パートナーシップオフィスが事務局を運営しています。2022年2月から、ローカルSDGsを加速する事業や取り組みを表彰し、広く紹介する目的でローカルSDGs四国表彰を実施しています。
表彰式当日の2月13日は、今治市で2025年度「今治モデル」成果報告会が開催されており、表彰式会場とオンラインで中継をつないで事例発表を行い、表彰状を受け取りました。
今回の受賞は、「今治モデル」が環境・経済・暮らしの調和を図りながら、新たな成長につなげる取り組みとして評価されたことの表れです。さらに、愛媛県内の他自治体で横展開が進んでいる点も、注目を集めた要因の一つと考えています。既存のサービスを組み合わせ、行政・企業・金融機関など地域の実施主体が役割分担して運営できる仕組みは、導入のハードルが低く、無理なく広げやすい――その“波及しやすさ”も高く評価されました。
2023年にゼロカーボンシティ宣言を行った時点で、今治市は脱炭素“後発地域”でしたが、「今治モデル」の取り組みを契機に、2025年には愛媛県内で初の「脱炭素先行地域」にも選定され、今回の受賞を経て、さらにその評価は高まっています。
脱炭素のフロントランナーとして、「今治モデル」のさらなる普及と調和のとれた脱炭素化を目指して、今治市の取り組みはさらに続いていきます。
■第5回ローカルSDGs四国表彰
【審査委員特別賞】「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」
東京海上日動火災保険株式会社・今治市(愛媛県)
○LS四国表彰式での 環境省中国四国地方環境事務所四国事務所 福井智之 所長の講評
受賞理由として、民間と自治体との連携が非常にうまくいっていること、他の自治体のモデルにもなり得る取り組みであることの2点が高く評価されました。
プレゼンを聴きながら、連携がうまく機能している理由を改めて考えましたが、取り組みの目的とビジョンが明確であることに加え、実現に向けたストーリーとプログラムの設計がよくできていると感じました。「ゆるやかな座組」と説明されていましたが、全体のシステムがよく作り込まれていて、各主体のミッションがうまく活かされ、それぞれの特性に応じてしっかりと役割分担ができている点が素晴らしいと思います。
個々のプログラムについても、各ステージに応じた内容が工夫されています。導入部分の意識変容プログラムではカードゲームを活用し、やさしいところから入り、徐々にレベルを上げながら、段階的に行動変容を促していくプロセスが素晴らしいと感じました。
また、課題の一つとして企業の人材不足や地域の人口減少への対応を掲げ、「働きがいのある職場は、脱炭素も進んでいる職場ではないか」という仮説のもとで解決策を検討してきた点も、面白い視点だと思います。
今後も取り組みの輪を広げていくとのことですので、さらなる展開を期待しています。

オンラインでの事例発表と表彰式に臨んだ今治市環境政策課 住吉淳 係長(左)と東京海上日動火災保険(株)愛媛支店今治中央支社 津村侑子 マネージャー(右)
「今治モデル」成功の立役者の二人
横展開事例についてはこちらから
○脱炭素経営支援「今治モデル」を県内自治体へ横展開――環境省モデル事業の新設枠に全国唯一の採択決定!【愛媛県今治市】(PR TIMES)
【関連情報】
○今治市が愛媛県初の「脱炭素先行地域」に選定!唯一無二の地域資源を生かした今治型脱炭素モデル構築へ【愛媛県今治市】(PR TIMES)
○全国初!今治市が官民連携でのアクセルトレーニングをスタート(PR TIMES)
【関連サイト】
○今治市公式ホームページ
○今治市環境政策課ホームページ
○今治市広報戦略プロジェクト(旧:戦略的情報発信プロジェクト)