水墨アーティストOHGUSHIさんが八大龍王尊を描いた襖絵「雲龍図」が、第102回 ニューヨーク ADC賞 (ADC 102nd Annual Awards)でシルバーとブロンズを受賞。
水墨画の技法を継承しつつ、日本の古典的な様式美を更新した斬新な作品として国際的評価を得た。同作は、岡山市の最上稲荷山妙教寺で6月29日(木)~7月20日(木)に公開される。
デザインの国際賞で二冠達成
ADC 102nd Annual Awardsとは、1921年に広告美術団体「アート・ディレクターズ・クラブ(ADC)」によって設立された、世界で最も歴史あるデザインの国際賞。
今回「雲龍図」は、シルバー/ Silver Cube/ Illustration部門とブロンズ/ Bronze Cube/ Illustration部門を受賞した。プロジェクト名は「UNRYU THE WATER DRAGON」だ。
水を司る“八大龍王尊”を描く
1200年もの間、地域の人々に愛され続けている岡山市にある最上稲荷山妙教寺。
ここで古来より祀られる、水を司る“八大龍王尊”を水墨アーティストOHGUSHIさんが描き上げた。
同作は、日本の伝統的な書道具を使用し、約10mに渡り緻密な描写を重ねて描かれている。
一方の背景の雲や嵐は自然現象として表現すべく、墨を流動的に滲ませる技法を使用。それにより、具象と抽象が共存した、雄々しく躍動する作品が完成した。
同氏は水を司る神の姿を、人々に恵みを与える「清らかな水」そのもので表現したいと考え、日本の古典的な様式美を踏襲せず、類例のない、新たな様式美へと更新させた。
作品右側の嵐は、コロナや世界の紛争など現在の困難な社会情勢を表現し、一方で作品左側の空白は光を表している。これは「全人類が明るい未来へ向かうように」という作者の願いが込められている。この襖絵は、永続的に年に一期間公開される予定だ。
襖絵の奉納までの経緯
1200年前から普遍的に地域の人々に愛される最上稲荷。OHGUSHIさんはその光景に感銘を受け、「数百年先も受け継がれるに相応しい作品を、全身全霊を捧げ制作し、この寺院に納めたい」という希求に駆られ、襖絵の奉納を申し出たことから奉納されることとなった。
今回の評価に対して同氏は、「本作の総制作期間の6年間もの間、ご支援いた最上稲荷のご担当者様、家族、友人に心からお礼申し上げます。また、本作が国際的な評価を得ることができたのは全てノミネート制作チームのおかげです。心より感謝いたします。今後の展望として、この雲龍図のように日本の古典的な様式美を更新する役割を担いたく、障壁画制作とクライアントワークの2つの柱を軸として活動し、世界中に発信していきたいです」とコメントしている。
2023年の八大龍王尊「雲龍図」特別公開は、6月29日(木)~7月20日(木)の期間に10:00〜15:00。場所は最上稲荷山妙教寺 大客殿で、入場料は無料。
二冠を達成した襖絵を観に、最上稲荷山妙教寺へ足を運んでみては。
■最上稲荷山妙教寺 大客殿
住所:岡山県岡山市北区高松稲荷712
HP:https://inari.ne.jp/unryuzu/
(山川温)