東京・京橋にある加島美術では、12月2日(土)~10日(日)の期間、「安倍安人展『焼く備前−語りかける桃山茶陶・備前−』」を開催する。
同展では、備前焼の巨匠・安倍安人氏の真骨頂とも言うべき「彩色備前」をはじめ、奥深く古典的な備前焼、油彩画まで、安人氏の多彩な表現を、観覧無料で楽しめる。
備前焼の新たな可能性を導き出した安倍安人氏
安人氏は、1959年、昭和を代表する洋画家・宮本三郎に師事し、作家の道に入った。1972年34歳のときに陶芸の道に入り、以降新たな表現を模索し始める。
安人氏の桃山時代の茶陶に対する探究心と作陶技術の追求は、単なる古典の継承にとどまらず、備前焼の新たな可能性を導き出した。
赤・青・黄・緑と豊かな色彩が施された安人氏の代表的シリーズ「彩色備前」は、安人氏が「三点展開」と「焼おとし」と呼ぶ独自の技法によって、生み出されている。
桃山茶陶を現代陶芸へと昇華した安人氏の作品は、国内外で高く評価され、アメリカのメトロポリタン美術館や台湾国立故宮博物院にも収蔵されている。
「彩色備前」など約50点出展、作品販売も
「安倍安人展『焼く備前−語りかける桃山茶陶・備前−』」では、「彩色備前」に加え古典的な備前焼、そして創作の起点である油彩画作品など、約50点を出展。安人氏が築きあげた、時代を超えた豊かな表現を楽しめる。
「彩色備前水指・替蓋付 20×20×20cm」や、
「彩色備前扁壺 24×21×19cm」、
「備前茶碗 7.5×12×11.5cm」、
「備前徳利 12.5×8×8cm/13×8.5×8.5cm」、
「打 キャンバス 油彩 146×112cm」などが出展作品の一例だ。
会場では、出品作品を掲載したカタログを無料で配布し、作品販売もある。
作家ステートメント
安人氏によると、桃山時代のお茶の道具として生まれた備前焼の名器の数は極めて少ないのだそう。
興味深いのは、壷や擂鉢のような民芸とは焼成法が全く異なること。その大きな違いは、民芸の一度の焼成に比べ、茶の物は何度も、ものによっては何十回も繰り返して焼き込んであることだという。
また、その焼きの手順が、茶碗・水指・花入・鉢・手鉢に至るまで、上下・裏表を逆に窯詰めして何度も焼成し、最後に上下・裏表を正常に窯詰めして仕上げ焼成しているのも特徴のようだ。
安人氏は「やきものにとってこの違いは、世界に類がないのではと考えられる」と言う。安人氏の作品は、土も窯も関係なく、焼成温度と酸化・還元のみで構成。桃山でも現代でもなく、自身の焼き成りをと考えているとのことだ。
この機会に、備前焼の巨匠・安倍安人氏の多彩な表現を楽しんでみては。
■安倍安人展「焼く備前−語りかける桃山茶陶・備前−」
日時:12月2日(土)~10日(日) 10時~18時 会期中無休
会場:加島美術ギャラリー2F
住所:東京都中央区京橋3-3-2
入場料:観覧無料
展示点数:約50点 ※作品販売有り
Web:https://www.kashima-arts.co.jp/exhibitions/abeanjin_yakubizen/
(Higuchi)