日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧熱塩加納村(喜多方市)を写真とともに紹介する。
Vol.262/福島県旧熱塩加納村(喜多方市)
旧山都町から喜多方市街地へ入り、さらに北へ進んで、旧熱塩加納村を目指した。一瞬、なんと読めばいいかと思ったが、そのまま「あつしおかのう」と読むと知り、少し安心した。主に熱塩と加納の両村の合併によってできた村である。
北の方角に豊かな山が見える。水田風景と相まって素晴らしい。春夏秋冬の季節によって、現れる風景は異なるだろう。しかし、今目の前でたっぷりと緑をたくわえた山並みを見るのは、ほんとうに心地良かった。
三ノ倉高原花畑、という花畑を目指す。ぐんぐん山を登り、一気に高原地帯へと標高が上がっていく。地図を見て、おそらく着いたと思われる場所には、何もなかった。いや、よく見れば土地が整備されていて、土も綺麗にならしてある。そうか、花畑のシーズンはこれからやってくるから、準備ということなのか。と、花畑から視線を外に向け、会津盆地を眺めた。町並みが見えなくなるまで広がっている。会津という土地はひとつひとつ、スケールが大きい。
市街地へ降りて、旧国鉄の熱塩駅へ向かった。ここにはかつて、「日中線」という路線があった。日本と中国みたいに聞こえてしまうが、喜多方市から熱塩駅を結ぶ、12km足らずの短い路線だったという。駅舎が記念館になっていて、当時の写真などが飾られていた。よく見ると、火野正平さんの「にっぽん縦断 こころ旅」にまつわる手紙も掲示されていた。放送もあったらしい。すなわち、火野さんもここへやってきたということだ。すなわち、この土地にさまざまな思いを持つ人がいることを想像するのだった。土地の時間は常に変化をしつづけるものだけれど、誰かの生きた証が染み付いた時間というものは、尊い。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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