日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、宮城県旧花山村(栗原市)を写真とともに紹介する。
Vol.294/宮城県旧花山村(栗原市)
小さな峠を越えて、次にやってきたのは旧花山村。栗原市の中で、唯一の村だった場所だ。まだ朝の開門時間より早いもの、「仙台藩花山村寒湯番所跡」という史跡を目指して進んでいく。
その途中、花山湖という湖が現れたとき、思わずバイクを止めた。小高い山が織りなす陰影と、凪いだ湖面、やわらかく差し込む朝日。そこに赤い橋が架かっている。「なんだこの湖は!」と、吸い込まれるような気持ちだった。ただひたすらに惹かれ、日本も広いなあと思うばかりだった。
その後、花山湖から15km弱走って、仙台藩花山村寒湯番所跡へ向かった。寒湯番所は、秋田県に通じる花山越えの秋田口の関所にあたる。200年余り、往来する人と荷物の検問を行っていたとのことで、表門と関所守の大規模な役宅が現存しているのだ。
茅葺切妻造の立派な表門は、木々に囲まれて静かながらも堂々たる風格を持っていた。さらに、関所守の居宅はとにかく屋根が大きくて、屋根の艶が輝いていた。中に入ることはできなかったものの、とてもすごいものを見させてもらった、という気持ちに素直になるばかりだった。
番所跡のすぐ横には、花山温泉の山荘が建っている。日帰り温泉もできるので、番所と温泉を合わせて巡ることも、きっといい体験になるだろう。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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