日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県旧衣川村(奥州市)を写真とともに紹介する。
Vol.344/岩手県旧衣川村(奥州市)
旧胆沢町から南へ進み、旧衣川村へやってきた。胆沢郡の南端に位置する旧村で、村域の大部分は奥羽山脈の山地が占めている。まずは衣川総合支所へ向かうと、静かな暮らしが広がっていた。雨上がりで泥をかぶった車や、大きな水たまりがある。それにコンクリートにできた水たまりには何匹ものアメンボが泳いでいるので、どうやってコンクリートの水たまりにアメンボがやってくるのだろうと思ったし、そういうことは旅をしていないと考えないよなあとも思った。
旧衣川村の中心部を訪れたあと、10kmほど離れた黒滝温泉にも向かう。道中はさらに山深くなり、ふと見下ろせば木々が密集していたり、わずかに広がる平野部には田んぼが広がっていたり、自然がそばにある景色だった。そして、黒滝温泉は山間部にありながらも、駐車場には車が多く停まっており、とても賑わっていた。ぼくも時間があればお湯に浸かりたいけれど、時間があまりないからなあ、と思って入らなかった。しかし、昨年の秋から設備故障による臨時休館になり、今年の三月末には温泉営業が終わってしまったそうだ。「また来ればいい」という小さな足踏みは、こういうことを生む。そのときに後悔しない選択を重ねることだと、しみじみ思う。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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