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株式会社日本総合研究所

脱炭素における2026年以降の5つのメガトレンドを発表

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~グリーンバブル崩壊で企業戦略は現実路線へ~

 株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:内川淳、以下「日本総研」)は、政治・経済・社会における脱炭素の潮流を分析し、日本企業が2026年以降行うべき現実的な脱炭素戦略を提言するホワイトペーパー「脱炭素の『終焉』か、是正か?-- データで読み解く脱炭素潮流の失速と『実利』への回帰」(以下「本レポート」)を発表します。
 本レポートは、以下からご覧になれます。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/0318.pdf

■背景
2015年のパリ協定採択以来、官民一体で拡大してきた脱炭素の取り組みは、2022年以降の歴史的なインフレと高金利によって、大きな転機を迎えています。日本ではGX2040ビジョンや第七次エネルギー基本計画などの国策による強力な推進圧力がかかる反面、コスト上昇やAIなど他分野への資金流出によって、洋上風力発電や水素、CO2回収・利用・貯留(CCUS)といった次世代技術への投資は縮小し、採算性の壁に直面しています。また、世界各国が2050年カーボンニュートラルを実現する目標を掲げ続ける一方で、欧州の右傾化や、米国の急激な脱炭素化を支えていたインフレ抑制法(IRA)の見直しなど、環境政策の揺り戻し(バックラッシュ)も顕在化し、国内外で脱炭素プロジェクトの撤退や最終投資決定(FID)の遅延が生じています。
 こうした脱炭素を加速させる動きとブレーキをかける要因が交錯する現在、企業には、日本や各国が置かれている現状を正確に把握し、変化するリスクと機会に適切に対応していくことが求められます。

■提言のポイント
〈全体総括〉
 本レポートでは、2015年のパリ協定採択以降にグローバルな規模で進展してきた脱炭素の取り組みの変遷を概観し、脱炭素潮流の現在地を整理しました。脱炭素潮流の「確立」フェーズに見られた脱炭素分野への熱狂的な資金流入(グリーンバブル)が落ち着き、2024年以降の脱炭素の取り組みは「減速」フェーズにあります。ただし、これは脱炭素化の終焉ではなく、「実利・安全保障・適応」がより重視されプロジェクトの選別と淘汰が進む「現実路線(リアリズム)」への回帰を意味しています。

〈脱炭素潮流変遷の4つのフェーズ〉
【契機:2015年~2019年】
パリ協定およびSDGsが採択され、金融機関などの主要機関投資家が脱炭素を収益機会と認識転換し、ESG投資が急拡大した。
【確立:2020年~2021年】
米国のパリ協定復帰と主要国のカーボンニュートラル宣言を経て、欧州グリーンディールなどの産業政策を通じた官民一体の活動が確立した。
【揺らぎ:2022年~2023年】
パンデミックとウクライナ危機に起因するインフレ・金利上昇が発生し、事業環境が悪化し始めた。【減速:2024年~】
コスト増加によるプロジェクト中止・大規模な事業投資見送り・凍結、防衛・AIへの資金流出、政治的なグリーンバックラッシュにより取り組みが失速している。

〈2026年以降の5つのメガトレンド〉
 脱炭素の熱狂的な推進から現実的な対応への回帰が進む2026年以降、脱炭素の取り組みは以下5つの方向へ修正される見通しであり、それに対して企業が取るべきアクションを整理しました。

1.実利ある脱炭素の生き残り(二極化)
 総花的なESG投資は終了し、より確実に収益を上げる「実利ある脱炭素」が生き残り、脱炭素プロジェクトの二極化が進む。具体的には、2025年に最も脱炭素に対する逆風が吹いた米国で見られたような、省エネなど経済合理性のあるプロジェクトと、高コストなCO2回収技術といった経済合理性の低いプロジェクトの選別が厳格化される。
 これに対して、企業は投資収益率(ROI)や限界削減コストカーブ(CO2削減施策の費用対効果分析)の観点から一層厳しく自社の脱炭素関連プロジェクトを精査し、削減コストの大きい技術やプロジェクトを中止するなど、事業ポートフォリオの再編を検討する必要がある。

2.2050年カーボンニュートラルの非現実化と修正
 主要各国の温室効果ガス(以下「GHG」)排出削減量は、目標に対して十分な成果を上げられていない。また、これまでの脱炭素化の進展に伴い、残る領域は「排出削減が困難な(Hard-to-Abate)セクター」と呼ばれる産業となり、今後はGHG排出量削減ペースが落ちる可能性がある。2050年カーボンニュートラルは非現実的であることが次第にコンセンサスとなり、パリ協定で掲げられた「2030年頃に気温上昇を産業革命前比で1.5度に抑える」目標を達成できないことを前提とした現実的な計画へ修正が進む。
 企業は自社の脱炭素ロードマップで想定する社会シナリオを現実的なものに見直すことに加えて、電力調達ポートフォリオにおける再エネ偏重も見直し、安定性とコストを重視したベストミックスへと再構築することが重要となる。

3.「排出削減(緩和)」から「気候変動への備え(適応)」への関心シフト
 GHG排出削減のペース鈍化によって2050年カーボンニュートラルが非現実化すると、気候変動自体は一定程度避けられないことがコンセンサスとなる。そのため、すでに保険業界などで顕在化しているような、防災・減災などの気候変動被害への「適応」への関心が高まる。
 企業は、GHG排出を「緩和する」という考え方から、すでに起きている気候変動に「適応する」という考え方へシフトし、適応ビジネスの開拓や適応策への設備投資を進めるべきである。具体的には、金融機関は適応プロジェクトへのファイナンススキームを構築し、事業会社は気候変動リスクを前提とした新商材・事業を開発する。また、気候変動の影響が大きい企業が先陣を切って適応価値を定量化することで、適応策への設備投資や適応に関する開示も進めることが重要となる。

4.急進的な脱炭素化への反発と規制の現実路線化
 GHG排出に対する各国の足並みが揃わなくなっている現状の下、国境炭素調整措置(CBAM)や内燃機関車禁止などの急進的な規制は、産業競争力の阻害や環境規制が緩い国への排出逃避(カーボンリーケージ)といった問題をもたらす可能性が高まることから、緩和・延期される可能性が高まる。2026年4月から義務化されるGX排出量取引制度(GX-ETS)も最初は事業者負担が過大にならない範囲で導入され、徐々に本格化する見通しとなっている。
 こうしたなか、企業は足元で本格化するGX-ETSに対応しながら、脱炭素領域に関しては規制緩和の可能性も見越した柔軟な経営戦略構築・ビジョン策定を行うべきである。

5.中国による競争力強化と欧米による対抗
 欧米と異なり「低インフレ・低金利・強力な政府支援」下にある中国では、脱炭素潮流が失速せずに再エネやEVなどのサプライチェーンを独占しつつある。これに対して欧米や日本はCBAMなどによるブロック経済化で対抗せざるを得ない。
 そこで、脱炭素関連プロジェクトを行う企業はコスト競争力が高い中国製部材を活用する一方で、規制要件の厳しい市場では中国以外の部材を活用するなど、許容可能なコスト増の範囲内でサプライチェーンの多角化を進めることが重要となる。

 現在の脱炭素潮流の「減速」は、脱炭素の長期的な後退局面の始まりではなく、むしろ2050~2060年に向けて現実的な気候変動対策を実現するための方向修正・調整局面といえます。脱炭素の理想を語るフェーズから現実的な解を見つけるフェーズに移行するなか、日本企業にはこれらのメガトレンドを踏まえた戦略転換を図ることが求められています。
 詳細は本レポートをご覧ください。

以上

■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】広報部 金井  電話:080-3437-9449
【一般のお客様】リサーチ・コンサルティング部門 宗形 メール:munakata.keigo@jri.co.jp
                        猪股 メール:inomata.mirai@jri.co.jp
                        三木 メール:miki.yutaka@jri.co.jp     

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