NHK出版より、歌川国芳、河鍋暁斎、小村雪岱、渡辺省亭、鏑木清方、そして横尾忠則ら「破格の表現者たち」を軸に、従来の日本美術史を再考する書籍『商業美術家の逆襲 もうひとつの日本美術史』1,210円(税込)が、12月10日(金)に発刊。国宝顔負けの71作品をカラーで収録している。判型は新書判。
これまで顧みられてこなかった「商業美術」
浮世絵から新版画、そしてイラストレーション、マンガ――。これらは画壇の権威を軸とする作家や作品を称揚してきた教科書的な美術史の世界では、「商業美術」は研究対象として、ほとんど顧みられてこなかったという。
そのため、素晴らしい才能、素晴らしい作品が、商業美術というだけで正当な評価を得られず、ときに忘れられてきた。しかし、こうした商業美術こそが、じつは日本美術の伝統を継承し、次の時代の表現を生み出す原動力となってきたとか。
美術史家の著者が再評価する作家たち
著者の山下裕二氏は、美術史家として室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、これまで幅広く研究を行ってきた。
今回発刊となった同書では、著者が近年力を入れて再評価に取り組んできた「商業美術家」たちを70点を超えるカラー図版で紹介するとともに、彼らを軸に浮世絵以降の美術史を再考する。
3つのパートで構成
同書は3つのパートで構成。
パートⅠ「商業美術の到達点」では、渡辺省亭と小村雪岱を中心に、江戸の粋を継承する作家、作品を紹介。
続くパートⅡ「浮世絵から新版画まで」では、浮世絵に始まる多色摺木版の美と伝統に着目し、近年注目を集めている新版画までを歴史的にたどる。
最後のパートⅢ「戦後の商業美術へ」では、グラフィックデザインとマンガを中心に、田中一光や横尾忠則、つげ義春といった戦後の商業美術家たちを取り上げている。
普段、美術に触れる機会が少ない人にとっては、同書で初めて名前を知る作家も多いかもしれない。「この人が忘れられていたなんて信じられない!」と言いたくなる、知られざる才能に出会ったり、新しい発見があったりしそうな一冊になっている。
年末年始にゆったりと美術史について学びを深めてみては。