愛知大学綜合郷土研究所は、1965年に同大学が発掘調査をした「寺西1号墳」(現在は滅失)の出土品の整理作業を行っている。その一環として保存処理を行った大刀のひとつに、龍の文様が発見された。刀身に銀で龍の文様の象嵌(ひとつの素材に異なる素材を嵌め込む工芸技法)が施された例は極めて珍しく、国内では4例目になる。
龍と考えられる文様を発見
この大刀は、愛知県豊橋市にある「寺西1号墳」から60年ほど前に出土したもの。古墳自体は直径25メートルと小ぶりだが、大刀10振、短刀2振、馬具などの大量の副葬品が出土していた。
同研究所が長年保管し、経年劣化が進んでいた出土品を整理する作業の過程で、さび落としや破片の接合などの保存処理を複数の大刀に行った結果、龍と考えられる長さ15センチほどの文様を発見した。
龍文が大刀に象嵌された例は極めて少なく、国内では8例程度だ。こうした大刀は、当時の大和政権から有力な豪族に与えられた、権威を象徴する重要な品だった。よって大刀が出土した古墳に埋葬された人物は「中央にも顔が利く人物だった」と、同研究所の廣瀬憲雄教授は推測する。
国内で確認された例では、刀を入れる刀装具に龍文が施されたものが一般的だが、刀身自体に龍文が象嵌された例は、今回を含め国内では、「吉備塚古墳(奈良県)」「島内114号地下式横穴墓(宮崎県)」「新沢千塚327号墳(奈良県)」でしか確認されていない。
魚文や花文も
また、大刀の刀身には龍の文様のほかに、魚文と考えられるものや花文を見ることが出来る。龍文を含め、華やかな装飾や、まじない的な意味を持たせた大刀であったと推測される。
「寺西1号墳シンポジウム」で一般公開
今回龍文を発見した大刀は、3月19日(土)に開催する「寺西1号墳シンポジウム」で一般公開し、併せて今回の報告内容を詳細に記した報告書を無料配布する。
この機会に、「寺西1号墳シンポジウム」に参加し、その目で龍文が刻まれた大刀を見てみては。
■副葬品がかたる古墳文化 -寺西1号墳シンポジウム-
日時:3月19日(土)13:00 ※開場12:00~
場所:豊橋市公会堂(八町通二丁目22番地)
定員:300人(当日先着順)