自社栽培綿花で靴下を製造するプロジェクトを進めている神奈川県横浜市の靴下メーカー「三笠」は、奈良工場で初の「収穫祭」を10月22日(土)に開催する。地域住民も参加し、地場産業の靴下づくりを盛り上げる。
大和高田で栽培した綿花の初の収穫祭
三笠は、2024年に完成予定の奈良県大和高田市の新工場隣接地で、靴下の原材料である綿花を栽培。今年5月に種まきした綿花は順調に育ち、初の収穫を迎えるにあたり「収穫祭」を開催する。分業が主流のアパレル産業において、製品メーカーが原料の開発を行うことは非常に稀で、試験的に自社栽培の綿花を原料に、製品づくりまでの一貫生産がスタートする。
同イベントでは、奈良県の橿原神宮宮司による祈祷の後、参加者が収穫体験を行う。
また、綿から糸にする工程の説明も実施。ペットチャルカより、糸を紡ぐ作業の講師を招く。
さらに、靴下のはぎれを再利用したアクセサリー作品の紹介も行われる。
大量消費を見つめ直すきっかけに
大和高田を含む周辺地域は、現在でも靴下製造が盛んな地域。綿花栽培も盛んだったが、今日の靴下産業で使用される糸のほとんどは輸入品で、靴下のみならず国内で生産されるアパレル製品は減少し、そのほとんどを輸入品に依存している。また、安価な製品が一般的になり、ファストファッションに代表される大量生産、大量消費の時代が長く続いている。
三笠は、糸になる前からの生産背景を学ぶことで大量消費という行為自体を見つめ直すきっかけになればとも考え、綿花栽培をスタート。すべての糸を賄えるようになるには広大な綿花農場が必要なので、生産される靴下のごく一部にはなるが、最初の一歩を踏み出した。農業の活性化とまではいかないものの、メーカーが栽培に係わることは、同社が目指す持続可能な産業活性化に沿うものとなる。
新工場で生産される製品
紡績は地域の糸商の協力を得ることができ、今後開発されるいくつかの製品に栽培された綿花から作られた糸を使用していく。
近い将来、奈良県内で素材から編み上げまでのすべてを賄った靴下が発売される。地域で販売すれば、流通に関わる輸送費やエネルギー消費を抑えることもでき、環境負荷の低い製品となる。
また、これまで開発、販売してきた製品に自社栽培の綿花を編み込んだ製品など、アップデイト、リニューアルをしながら、新たなビジネスモデルの開発も進めていくという。
三笠が自社栽培した綿花の収穫祭に参加してみては。
三笠HP:https://www.kk-mikasa.co.jp
(山本えり)