三田村印章店は、大阪市西区にあるギャラリースタジオ メゾンダールにて、5月24日(水)~28日(日)の期間、初の個展「はんこと大阪の文学」を開催している。
リピ買いの数も多い三田村印章店
印章には全く縁のなかった店主が、妻の実家の印章店にあった印章のデザインに感動したことから職人の道を目指すことによって始まった、店主の地元大阪で開業した三田村印章店。
三田村印章店は、師から教わった“真善美”という言葉に触発されながら、印章道を歩んできた。
現在は、押印廃止が叫ばれ、押印回数が激減することで廃業する同業者も続出。全日本印章業協会の会員数や、国家検定である印章木口彫刻の技能検定受検者数も減少傾向にあり、検定の廃止の検討がされている状態だ。
その一方で、早くも安くもない三田村印章店では、昔ながらの印章製作に特化した業態でありながら、文字のデザインに感動したというメールを多数受け、リピ買いの数も多い。
技術継承のために尽力する三田村熙菴氏
また、三田村印章店の三田村熙菴(きあん)氏は、2014年 現代の名工、2017年 黄綬褒章を受章。長年、印章製作の技術継承のために尽力している。
同店の商品は、すべて三田村煕菴氏がフリーハンドで描いた文字デザインを元に作成している。
仕上がりのデザインを頭の中で完全にイメージでき、それを自在に反転して、表現できることで可能な技術だ。
こうした技術を背景に、独自の特徴を持つデザインが可能に。きちんと間を保ちつつ、間延びをしない、植物の蔦のような曲線美が空間を満たしている。
三田村印章店の印鑑の愛用者からは、「繊細なデザインとオリジナル感。見ているだけで幸せになりそうな印影」「調印の一時は、朱色の芸術品をどんどん紙に刷り出しているような楽しい時間となりました。」「格好良くて品があるのに、どこか優しく、遊び心もあり、字が嬉しそうに喜んで生きてるような感じ」「美と品格を備えた印を手に入れたからには、それにふさわしい人間になりたい」といった声が上がっている。
世界で初めての実用印章の美の個展
今回、あまり公開されてこなかった印章の文字の美を、印章を必要としない人々にも見てもらいたいとの三田村印章店の思いから、美の個展「はんこと大阪の文学」が開催されている。
同展では、大阪の文豪の心地良い言葉の調べの中に、実用印章のデザインをアクリル絵の具で描くことで表現している。
「はんこと大阪の文学」で、文字の配置や大きさのバランスを調整しながら自由自在に調和のとれた印面を構成する、三田村印章店のはんこの世界を覗いてみては。
■はんこと大阪の文学
会場:ギャラリースタジオ メゾンダール
住所:大阪府大阪市西区靱本町1-16-19 2F
「はんこと大阪の文学」公式サイト:https://exhibition.mitamura-inshouten.com/
(佐藤ゆり)