日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、栃木県旧馬頭町(那珂川町)を写真とともに紹介する。
Vol.133/栃木県旧馬頭町(那珂川町)
旧馬頭町へやってきた。ここでは温泉街や馬頭広重美術館が知られている。今回は『もうひとつの美術館』へ訪れた。
もうひとつの美術館とは、アールブリュット、アウトサイダーアートを主なテーマに掲げる、日本で最初の美術館だ。旧小口小学校の校舎を再利用し、2001年に開設された。
「アールブリュット」、「アウトサイダーアート」、という言葉の定義も本来難しいのだけれど、かつて同じテーマに関して取材をしたことがあったので、個人的に訪れてみたかったのであった。
展示には番号が振られており、手元の資料で名前などを確認できた。そして、何より圧倒的な展示だと感じられたのであった。相当なインパクトがあった。展示作品を作り上げている方々の若さにも驚いた。ぼくより若い方もいた。緻密で熱量に溢れ、生き生きとした力強さがあった。じぶんももっと写真を撮ろう、そう思った。
美術館を訪れた後、観音湯さんで日帰り入浴をした。ぬるぬるした泉質は美肌効果があるとされている。露天風呂には午後の光が差し込んで、温泉の心地よさに加えて光の美しさもあった。
ただ、最初に浴室に入ったときに、「お兄ちゃん」と湯船に入っているおじさんに声をかけられた。「寒いから、扉をちゃんと閉めてくれ」と。振り返ると、扉が完全に閉まりきっていなかった。無意識にやってしまったことだ。観光客の立場でやって来ているのだから、地元の方々の時間を邪魔しちゃいけないのに。この日から、浴室に入るときは扉をしつこく確認するようになった。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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