日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、神奈川県旧相模湖町(相模原市)を写真とともに紹介する。
Vol.137/神奈川県旧相模湖町(相模原市)
相模川沿いを上流へ進んでいく。津久井湖を抜けて相模湖を目指した。旧相模湖町の地名は、湖の名前そのままであろう。旧相模湖町に入ると周りの景色はさらに山が近くなり、「ここも相模原市なんだ」と驚くばかりだった。
そして、相模湖を訪れる前に「小原宿本陣」へ立ち寄った。本陣は大将のいるところ、という印象が強いが、江戸時代の武家諸法度で定められた、参勤交代での諸大名や幕府役人、公家衆らが使った休憩宿泊施設も指す。
小原宿本陣は、神奈川県にかつて存在した26本陣の中で、唯一現像する建物だ。佇まいがとても立派で、建物には古い家具や時計がそのまま残されていた。立派なお屋敷と言ってしまえばそれまでだが、もっとここで長く滞在したくなる空間の優しさを兼ね備えているように思えた。
小原宿本陣を訪れたあと、相模湖へ向かう。津久井湖よりもさらに山深い自然に包まれた湖で、圧倒的な自然を感じるばかりだった。それでも、ほとりの公園が綺麗に整備されているので過ごしやすい。
遊びに来たのであろう中学生か高校生の若い三人組は、ひたすらにぼーっと湖を眺めていて、こういうなんでもない経験を、ふと大人になって思い出すときがあるんだよなあ、なんて思う。大学生であろう若者たちは、カヌーを担いで片付けていた。競技用のカヌーだろうか。カヌーをしていたら、どんな青春があったのだろうか、などと思いにふける。
ここで過ごした誰かにとっての時間が、日々積み重ねられている。今日も明日も、相模湖はただそこにあるだけなのに。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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