日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、茨城県旧牛堀町(潮来市)を写真とともに紹介する。
Vol.205/茨城県旧牛堀町(潮来市)
旧潮来町から北西へ進み、旧牛堀町へ向かう。霞ヶ浦に接しており、水郷めぐりの要路でもある。江戸時代の葛飾北斎も「冨嶽三十六景」の中で、「常州牛堀」として、旧牛堀町から見た富士山の景色を描いている。船がダイナミックに描かれた作品だ。
そして、旧牛堀町では、あじさいが有名なお寺があるようで、訪れることにした。そのお寺の名前は、二本松寺。道中も、「あじさいの杜」というのぼりがいくつも立っていて、どうやらピッタリ見頃かもしれない。
二本松寺へ到着し、入場料を支払っていざ境内へ。淡い期待で進んでいくと、とにかくすごかった。今まででいちばん、といってしまうのは尚早かもしれないけれど、過去に出会ったあじさい群の中でも、飛び抜けていた。
フラワーガーデンのような場所は、「質」と「量」に分けられるように思う。園内が美しく整備され調和が保たれているかどうかという「質」と、圧倒的な「量」による景色。いずれかを比重にアピールポイントをつくる。だが、この二本松寺のあじさい園は、質と量のどちらも兼ね備えた、スーパーガーデンだった。
序盤は下り道がひらけて、田んぼとあじさいがマッチする。何より赤土の道路が良い。後半は石畳に変わり、上り坂だ。その傾斜部に、さまざまな色と種類のあじさいが一面咲き誇る。自然に包まれた杜(もり)の中に立ったとき、見渡す限りのあじさいが咲いているのである。普段はあまり写真を撮らないであろうおじいさんも、バシャバシャと夢中で写真を撮っていた。それはここにある世界が魅力だからだ。
圧巻のあじさい群を通り抜けて、最後に社殿に戻ったとき、お寺であったことを思い出した。呼吸を整えてお礼の参拝をした。あっという間に時間が流れた、とても良い体験だった。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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