日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、茨城県旧水府村(常陸太田市)を写真とともに紹介する。
Vol.239/茨城県旧水府村(常陸太田市)
次にやって来たのは旧水府村だ。ひとつ前に訪れた旧金砂郷町と同じように、秋そばの名産地として知られている。市街地を訪れると、やはり蕎麦屋さんを見かける機会が何度かあった。いつか秋に再訪したいと思うばかりだ。そして、関東近郊にお住まいの方は、知っている方も多いかもしれないが、ここには「竜神大吊橋」という有名な橋がある。東日本最大級の、バンジージャンプがある橋だ。
竜神大吊橋は前回の旅でも訪れたのだけれど、そのときは橋を渡らなかった。有料だったからだ。しかし、今回は節約する気持ちを大切にしながらも、使うべきときは使いたいと思っているので、320円を支払って渡ってみる。
ダム湖からの高さは約100メートル。もちろん怖いけれど、高さが100メートルある橋なら、多分ほかにも渡ったことがある。しかし、「バンジージャンプならば、ここから飛ぶんだ」ということを想像した瞬間、守られていた心理的安全性が消え去り、命綱がなければ確実に命がないのだという恐怖感に襲われる。バンジーに挑戦しているテレビ番組などをみて、「早く飛ばないかなあ!」なんて思っていた自分へ。君は今、すごくビビっているよ。
そして、橋を渡っていたとき、「5、4、3、2、1、バンジー!」の声と、展望所にいたおばあちゃんたちの金切り声が、同時に聞こえた。あ、たった今、さっきの方が飛んだんだなって。でも、その瞬間は見えなかった。橋をあとにして次のまちへ向かうとき、ぼくは飛ぶべきだったのだろうかと、悶々とした気持ちに揺られた。ひとりで飛んだところで、つまらない。逆に、ひとりで飛ぶから、面白い? ああ、いや待て。そもそも、怖いんだぞ。でも、さっきの人も飛んでいたし、帰り際に見かけたピンク髪の若い女性も、「今から空飛べるんでしょ? サイコー!」と言っていた…。いつかは飛んでみようか。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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