ワイズメンズクラブ国際協会西日本区瀬戸山陰部とYMCAせとうちは、Y’s*SDG’s Youth Action2024を、11月9日(土)11:00~13:00に、日本基督教団岡山教会・岡山市中心市街地にて開催する。
Y’s*SDG’s Youth Action2024は、若者たちが岡山市の中心市街地落書き消去活動にチャレンジする活動だ。
岡山県の中心市街地で落書きが再び増加
岡山県では、中心市街地の落書きが再び増加していることに着目し、100人規模で10カ所の落書きを一斉に消去することを計画。かつて岡山は、全国一の落書き県として全国に悪名を轟かせていた。そのことに心を痛めた有志市民が開発した「岡山方式落書き一斉消去」という取り組みが功を奏し、瞬く間に沈静化して、その結果付随して多発していた犯罪も減少したことがある。
あれから20年、世の雰囲気の悪化とともに再び全国各地で治安が乱れ、岡山の落書きも再び増加してきているそう。そのことに心を痛めた同世代の大学生たちの発案で、今回の落書き消去活動の実施に至った。
落書き調査の一環で住民にヒアリング
落書き調査隊隊長・岡崎久弥さんによると、2002年、近所の国道に面した巨大な壁に、巨大な猥褻落書きが書かれ、あっけにとられたことが活動のきっかけだという。よく見ると、街じゅうが落書きで溢れかえり、犯罪の空気が充満し、そのことに岡崎久弥さん自身が麻痺している現状に愕然としたという。
岡崎久弥さんは、当初デジタルカメラで落書きを一個一個撮影し、その場所を住宅地図へ正確に落とし込み、住民へのヒアリングを同時並行で進めるというフィールドワークの手法で落書きを調査。その結果、ある傾向が判明し、落書き犯罪対策の30ページほどの企画書を作成して、関係者へのプレゼンテーションを実施した。
街の住民へのヒアリングでは、住民同士とのコミュニケーション、そして街と行政との関係、住民と警察とのやりとり、住民と青少年との意思疎通、街で働く若者と落書きとの関係や見解、犯罪動向と地域の対応、死角や場所と犯罪の傾向、薬物の取引と落書き実行犯の関係など、ありとあらゆる情報を入手できたそうだ。
落書きには複雑で深刻な背景があることが明らかに
調べれば調べるほど、「落書きは、こどものいたずら」でもなければ「たかが落書き」ではない、複雑で深刻な背景があることが明らかに。都市中心部の空洞化と高齢化などによる地域自治管理・地域教育能力の低下と、街で生起する問題への社会的無関心の増大が様々な「スキ」を生んだ。それが落書きとして目に見える形へ可視化されてはびこり、重犯罪者の誘引効果を生み出して、犯罪の温床となっていることがわかってきたという。
調査によると、落書き犯は、対象を小さな店舗や高齢者の家などに集中させていることが膨大な写真記録から見え始め、犯罪特有の「弱いものいじめ」のメカニズムも発見。しかし、いざ消すとなると落書きは一定の規模でまとめて消さなければ、いたちごっこになってしまうという実情もある。
落書き犯罪は、地域自治、私有財産管理という自己責任論と現実の都市経営資源の不足、そして管理手法の陳腐化が三位一体となって相互作用しながら、自治管理の真空状態を作っているところに入り込んでいる現象だ。落書き消去で効果をあげる方法を試行錯誤で模索するなかで、「一斉消去」という方式に行き着いたという。
ひたすら頼んで落書きを消させてもらう
しかし、落書きを消すためとはいえ、人の家の壁にペンキを上塗りするには事前の許可と段取りが必要だ。たくさんの壁をボランティアで消すとなると、予想以上の手間がかかるもの。「ひたすら頼んで消させてもらう」という、謙虚さが問われる準備の中で地域との交流が生まれ、地域の中でも薄れていたコミュニケーションの再構築が進んだ。
その中で、子どもたちや若者が落書き消しを心から楽しむ姿も。子どもたちが傷ついた街を汗を流して楽しく修復することで、「自分たちの街は自分たちが守る」という気付きが芽生え、消した壁を気にして見ることで街への愛情を自然に育み、卑劣な犯罪を許さないという自覚を新たにするだろう。
もちろん、子どもたちが消した跡に落書きがかかれることもあるが、そこで彼らは「犯罪被害者」の気持ちを擬似体験し、こころのそこからの悔しさや悲しさを感じて、人の痛みを想像できるようになるはずだ。
街の落書き10カ所を一斉消去
今回行われる岡山市中心市街地落書き一斉消去活動でも、少人数に分かれて、街の落書き10カ所を一斉消去。なお、雨天決行だ。
この機会に、Y’s*SDG’s Youth Action2024をチェックしてみては。
YMCAせとうち「中心市街地落書き消去活動を実施しました」:https://setohime-ymca.org/?p=4747
(佐藤ゆり)