日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県遠野市を写真とともに紹介する。
Vol.355/岩手県遠野市
遠野市にはご縁があり、これまでも何度か訪れたことがあった。まず、ぼくは現在の旅を始めるまでに、日本の市町村をすべて巡っている。当時は大学生だったので、資金もアルバイトのお金だ。ただ、旅が残り2割というところで、資金的なむずかしさを感じて、クラウドファンディングに挑戦させてもらった。そのとき支援してくださった方の中に、遠野市在住の方がいて、御礼に遠野市へお伺いさせてもらってから、遠野がより親しみのある土地になった。
遠野市の歴史といえば、なんといっても『遠野物語』であろう。柳田國男の代表作として知られ、日本民俗学の原点にもなった。しかし、柳田國男に遠野の民話を伝えたのは、地元出身の佐々木喜善という人物だ。彼の存在なくして、今の遠野の風土は続いていないかもしれない、ということも同時に考えつつ、遠野の民間信仰の奥深さに魅了されている。
たとえばオシラサマと呼ばれる神様や、妖怪の河童。今でも小さな川にはきゅうりが流れていることもしばしばだ。あるとき民宿に泊まったとき、ご高齢のお母さんが民宿の玄関に集まる猫に向かって、神様のように話しかけていた姿も、とても印象的だった。
今回の訪問では、知り合いの方とのご縁で遠野市のホップ畑に伺わせてもらった。遠野市は日本随一のホップ生産地であり、夏にもなれば高さ5mにもなるグリーンカーテンを見ることができる。
そして、遠野市はホップの生産地であることのみならず、ビールの里として、持続可能なまちづくりに力を入れている。今年発表された、『世界の持続可能な観光地TOP100選』に、遠野市も選出されている。日本で選ばれたのは、5地域のみだ。遠野の持つ文化と伝統と産業、そして、それらが持続可能なものとして、未来へ受け継がれていくように。と、そうした未来を真剣に目指して奮闘する方々が、遠野にはたくさんいる。そのことを心にずっと留めていたい。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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