日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県旧浄法寺町(二戸市)を写真とともに紹介する。
Vol.365/岩手県旧浄法寺町(二戸市)
JR花輪線とは荒屋新町駅付近でお別れをする。路線は西に折れて秋田方面へ向かっていくのに対し、私は安比川沿いを北東に進んで行く。ここで八幡平市から二戸市へと市名が変わり、旧浄法寺町へ入った。ただ、旧浄法寺町の区域が二戸市の町名として引き継がれているので、今も「浄法寺町」だ。何より浄法寺、と聞くとなかなか珍しい地名だなあと。
まずはまちを通りながら、うろこ滝を目指す。途中の畑には鮮やかな緑色をした、独立した背の高い茎で、元気な葉々が空に向かって茂っている野菜があった。なんという名の野菜なのだろう。
やがて着いたうろこ滝では自然の岩肌を清水が流れ、その岩肌が凹凸となって、確かにうろこのように見えた。
また、天台宗の名刹・天台寺というお寺に向かう。境内まではなかなかきつい階段で、やっとの思いで御本堂が見える参道まで着くと、深い木々の合間から青空もよく見えた。灯籠の並ぶ参道の先に佇む本堂では畳に上がることができたので、そこで正座をする。周囲には誰もいない。静かに目を閉じると、木の香りと蝉の鳴き声だけがした。これまで聞こえていたはず蝉の鳴き声なのだから、いかに聞こえてくる音というものが、自分自身と繋がっているかということだ。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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