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NPO法人さいたまユースサポートネット

「生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業に関する調査」結果のお知らせ

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生活困窮層の子どもたちへの学習支援の現状を浮き彫りにしたNPOによる大規模調査。全国の自治体と学習支援事業受託団体 計577団体に実施しました。

社会に居場所を見つけられない若者や子どもへの支援活動を展開するNPO法人さいたまユースサポートネット(所在地:さいたま市、代表:青砥 恭)は、この度、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の助成を受け、2015年9月~10月の間、全国の福祉事務所を設置する自治体(479団体)と生活困窮者自立支援法(以下、生困法)に基づく学習支援事業受託団体(98団体)の合計577団体を対象に、「生活困窮者自立支援に基づく学習支援事業」をテーマに大規模アンケート調査を実施いたしました。

子ども・若者の貧困と格差の拡大は日本社会の最大の課題です。とりわけ貧困層の子どもや若者の対策として、生活保護世帯など生活困窮層の子どもたちへの学習支援が全国で広がっています。ただ、全国一律ではなく、自治体によって様々であることが分かりました。そのため、全国の学習支援の現状と、課題を把握し、今後の子どもの貧困対策の一助になればと思い、本調査を実施いたしました。

【リリース記載内容】
1.福祉事務所を設置する自治体に調査

学習支援での実施自治体は約3割。ただ、来年度は半数以上が実施する見込み。
人口数と実施自治体数は、基本的には比例。ただ、自治体により高い積極性が見られた。
委託での実施が約7割。委託先としては、NPO法人など民間団体が中心。
実施しない最大の理由として「地域に実施できる団体や人がいない」が6割強。
実施自治体の約7割が「生活保護受給世帯」を学習支援の対象としている。
中学1~3年生を対象に実施している自治体が約7割。
対象世帯が全て参加しないのは、学ぶことへのあきらめが子ども、親の双方に見られる。
学習予算事業の費用は「基準額」があるものの自治体によって大きな差がある。等

2.生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業受託団体への調査

NPO等の学習支援事業受託団体は、教育機関との連携に必要性を感じていながらも、実際にはできていない。等

3.本調査を通じて得られた、学習支援の現状と課題について

特定非営利活動法人 さいたまユースサポートネット 青砥 恭

なお下記一部を抜粋になりますが、本調査結果内容は、「学習支援事業の運営実践事例集」としてまとめており、各自治体の福祉事務所で閲覧可能です。ぜひご活用ください。
※プレスリリースダウンロード
http://prtimes.jp/a/?f=d18249-20160318-4252.pdf

■学習支援の実施状況について [対象:自治体]
生活困窮層の子どもたちへの学習支援の実施自治体は現在約3割。ただ、来年度は半数以上が実施する見込み。子どもの貧困に関する関心は確実に広がっている。
自治体に、生活困窮者自立支援法(以下、生困法)施行後の生活困窮家庭の子どもを対象とした学習支援の実施状況についてお聞きしたところ、最も多かった回答は「実施予定なし」が45.3%になりました。続いて、「すでに実施している」が32.2%ですが、来年度実施予定(20.3%)を含めれば、来年度は学習支援を行う自治体が半数以上になることが分かりました。

Q. 生活困窮者自立支援法(以下、生困法)施行後の生活困窮家庭の子どもを対象とした学習支援の実施状況について、あてはまるものを1つお選びください。【N=479】

■【都道府県別】学習支援の実施状況について [対象:自治体]
人口数と実施自治体数は、基本的には比例。ただ、茨城、福井、鳥取、高知には高い積極性が見られた。
上記設問への回答のうち、「すでに実施」と「実施予定」の回答を都道府県別に分け、各人口と比較しました。本調査によると、人口数と学習支援事業実施自治体数(予定含む)の割合は、基本的には比例しているように見えますが、都道府県によっては異なるところもありました。特に、茨城県、福井県、鳥取県、高知県に関しては、人口に比べて予定含む実施割合が高く、学習支援事業の高い積極性が見られました。
※人口は平成22年度国勢調査による。(単位1,000人)

■実施機関及び委託先について [対象:自治体]
委託での実施が約7割。委託先としては、NPO法人など民間団体が中心で、行政と市民の協働が進み、地域づくりにもつながっている状況が見える。
自治体に、学習支援の直営・委託方式(実施機関)についてお聞きしたところ、委託が最も多い約67%となりました。委託先としては、NPO法人等が約40%、社会福祉協議会が14%と、民間団体に委託されている傾向がはっきりと分かりました。全国的に、子どもの貧困対策が検討され、民間団体や個人と行政の連携が進んでいることが分かります。

Q. 生困法施行後に学習支援を実施(実施予定含む)している場合、直営・委託方式(実施機関) について、あてはまるものを1つお選びください。【N=251】

■学習支援事業を実施しない理由について [対象:自治体]
実施しない最大の理由として「地域に実施できる団体や人がいない」が6割強。費用(予算、財源)も課題。
学習支援を実施していない(予定も含む)自治体に、理由(複数回答)についてお聞きしたところ、「実施するための人員や団体が確保できないから」が最も多い64.5%。続いて、「実施するための財源が確保できないから」が45.5%となりました。これらの回答から、地域社会で、子どもの教育に関わる人材、団体の育成が大きな課題であること。また学習支援事業を地域社会や行政がどのように子どもや保護者に支援を行うか、十分なコンセンサスができていないことも明らかになりました。
※備考 生活困窮者自立支援法では、国と自治体の費用負担は2分の1ずつ。

Q. 実施状況について「以前は実施していたが、現在は実施していない」、「実施する予定はない」と回答された場合、その理由についてお選びください。(複数回答)【N=220】

※以降は、学習支援事業を「すでに実施している」、「実施予定である」選択団体のみの回答。

■対象世帯について [対象:自治体]
実施自治体の約7割が「生活保護受給世帯」を学習支援の対象としている。ただ、地域によって、就学援助世帯、児童扶養手当世帯など、対象の幅が異なる。

実施自治体に、学習支援の対象世帯についてお聞きしたところ、「生活保護受給世帯」が最も多い68.1%。続いて、「就学援助制度利用世帯」(約23%)、「児童扶養手当受給世帯」(約14%)となりました。
また、上記世帯のほとんどが、一人親世帯、特に母子世帯。しかも「生活保護受給世帯」の親の約半数が中卒、または高校中退という調査もあります。学校歴の低い親のためには、家庭で行われるはずの親との進路や教育費などの多面的な相談の場も必要になってくると考えます。

Q.生困法施行後に学習支援を実施(実施予定含む)している場合、事業の対象となる子どもの世帯要件について、あてはまるものを全てお選びください。(複数回答)【N=251】

■対象学年について [対象:自治体]
中学1~3年生を対象に実施している自治体が約7割。
貧困層の生徒の多くが通う高校での中退率が非常に高いことから、高校を卒業後の進路保障まで支援事業の目標にすることも検討しなければならない。
実施自治体に、学習支援の対象学年についてお聞きしたところ、最も多かった回答は中学3年生で74.5%。続いて中学2年生(69.7%)、中学1年生(67.7%)の順となりました。小学校高学年を対象としている自治体は35.1%。高校生は、1年生が最も高く22.7%でした。
しかし、貧困層の生徒の多くが通う高校(定時制高校や地域の教育困難校など)での中退率が非常に多いことから、高校を卒業後の進路保障まで支援事業の目標にすることも検討しなければならないように思われます。

Q.生困法施行後に学習支援を実施(実施予定含む)している場合、事業の対象となる子どもの学年等について、あてはまるものを全てお選びください。(複数回答)【N=251】

■登録者が100%にならない理由について [対象:自治体]
対象世帯がすべて参加しないのは、「学習支援に対する消極性」、「学ぶことへのあきらめ」が子ども、親の双方に見られる。これは、保護者と対象者本人の「将来への希望、期待」の無さが伺える。
対象者の3割以下の生徒たちしか学習教室に登録しないという課題があります。
そこで、実施自治体に、対象人数に対する登録の割合において、100%にならない理由についてお聞きしたところ、最も多かったのが「保護者が事業に対して消極的」で60.0%、続いて「子どもが事業に対して消極的」が49.7%となりました。
これは、親も子どもも、学ぼうという意欲がないことが分かります。これは、保護者と対象者本人の「将来への希望、期待」(自己肯定感)の無さが伺えます。
生活保護世帯では世帯主(親)は、中学校卒や高校中退といった体験が五割存在するという調査もあります。学校での学習や仲間づくりといった体験を持たない親を持つ世帯の子どもたちに、学習教室への参加を呼び掛けてもなかなか参加が難しいのが現状です。

Q. 「対象人数に対する登録の割合」において、100%にならない理由を全てお選びください。(複数回答)【N=155】

■人口規模ごとの平均予算について [対象:自治体]
学習予算事業の費用は厚労省が定めた「基準額」があるものの自治体によって大きな差がある。中でも50万人未満の自治体では、相当低く見積もられていることが分かった。自治体の「意欲」、「財政力」が影響しているものと思われる。
実施自治体に、一年間の事業費及び自治体・国の負担額についてお聞きしたところ、全国の学習支援事業の基準額とは大きな差があり、中でも50万人未満の自治体では、相当低く見積もられていることが分かりました。
学習支援事業を始めたい自治体にとって、支援者を確保したくても人件費がなければ安定して確保することはできません。安定した事業にするにはやはり、予算が必要となります。学習支援はボランティアでというのが全国の趨勢であることがわかりますが、安定した支援事業にはなりません。

Q. 生困法施行後に学習支援を実施(実施予定含む)している場合、一年間の事業費及び自治体・国の負担額についてお答えください。【N=251】

■関係機関との連携状況 [対象:学習支援事業受託団体]
NPO等の学習支援事業受託団体は、小・中学校、高校等教育機関との連携に必要性を感じていながらも、実際にはできていない。ただ、困難を抱える子どもたちのセイフティネットになるためには、連携しなければならない。
生困法に基づく学習支援事業受託団体に、「運営上、連携・協力の必要性を感じる機関」と、「実際に連携ができている機関」についてお聞きしました。
「連携・協力の必要性を感じる機関」について、最も多かった回答は、「小・中学校」で88.8%、続いて「行政・福祉事務所」(81.6%)、「教育委員会」(66.3%)、「高校」(50.0%)、「児童相談所」(44.9%)の順となりました。
また「実際に連携ができている機関」について、最も多かった回答は、「行政・福祉事務所」(82.7%)、続いて「小・中学校」(45.9%)、「教育委員会」(32.7%)、社会福祉協議会(23.5%)、NPO・ボランティア団体(22.4%)の順となりました。

上記より、事業を運営するNPO等の民間の学習支援団体は、行政・福祉事務所とはしっかりと連携が取れているようですが、最も必要性を感じる「小・中学校」、また、「高校」、「児童相談所」といった子どもたちと実際に日々接している機関との連携ができていないことが分かりました。
これは、学校・教育委員会だけに責任があるわけではなく、学校にとっても制度として定着するかどうか分からない民間団体に生徒の個人情報を出したり、生徒の指導を委ねるのは不安と思われるのはある意味仕方ないかもしれません。
しかし現在、「学校をプラットフォームに」という議論がされています。それを実現するためにも、学校は、地域の子ども支援を行うNPOや民生委員・児童委員、児童相談所、教育機関、医療機関、厚生機関など外部資源の力を借りなければならない時代になっています。そのネットワークの構築こそが、最も困難を抱えた子どもたちのセイフティネットになっていくものと思われます。

Q. 運営上、連携・協力の必要性を感じる機関にあてはまるものを全てお選びください。(複数回答)【N=98】
Q. 上記質問にて、実際に連携ができている機関にあてはまるものを全てお選びください。(複数回答)【N=98】

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■本調査を通じて得られた、全国の学習支援の実態と課題
 今回の調査で、全国的に子どもの貧困対策としての学習支援に大きな関心があることがわかりました。学習支援が子どもの貧困対策として大きな柱になっています。 
学習支援事業を本年度、実施する自治体は三割台ですが、来年度(4月以降)に学習支援を始める自治体は五割を超えます。しかし、都市部と地方では、事業の担い手のNPOなど民間団体や個人、財源などに大きな差がみられ、地方では、まだまだ事業の実施に困難があることもわかりました。

 事業の対象世帯(生活保護世帯、ひとり親世帯、就学援助世帯など)がすべて参加(登録)しないのは、学習支援に対する消極性、学ぶことへのあきらめが対象世帯の子ども、親の双方に見られます。学習予算事業の費用は厚労省が定めた「基準額」があるものの自治体によって大きな差があります。自治体の「積極性」、「財政力」が影響しているものと思われます。学習支援の方法も「教室」「訪問」「両方」と様々ですが、保護者支援、教室に来られない世帯への支援が訪問という形で行われています。
 学習支援事業ですが、「悩みなど相談」「あいさつや話題の提供」「基本的なマナー、言葉づかい」「いじめや虐待への気づき」など、日常生活の相談・支援や居場所としての事業にもなっています。
 本事業は、生活困窮者自立支援法を根拠に行われており、事業内容は自治体の主体性が生かされる事業づくりが可能になっています。事業の目的も、学習習慣の改善、学習成績の向上、進学率の向上とされていますが、仲間づくり、不登校対策、中退対策も行われています。
 しかし、運営上の課題も少なくありません。とりわけ、関係機関の連携学校、教育委員会との連携の必要性を訴える団体は少なくありません。

特定非営利活動法人 さいたまユースサポートネット 青砥 恭(あおと やすし)
NPO法人さいたまユースサポートネット代表理事。1948年生まれ。
元埼玉県立高校教諭、現在、明治大学講師。子ども・若者と貧困、自立支援問題を研究する。2011年、さいたまユースサポートネットを設立し、さいたま市において居場所のない若者の支援活動をおこなっている。
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◆「生活困窮者自立支援に基づく学習支援事業に関する調査」調査概要と主な質問内容
【調査概要】
1.調査の方法:FAXまたはEmailでのアンケート方式で実施
2.調査の対象:全国の福祉事務所を設置する自治体(全901団体)と生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業受託団体を対象に実施
3.有効回答数:自治体479団体、学習支援事業受託団体 98団体、合計577団体
4.調査実施日:2015年9月~10月の2か月間

【主な質問内容】
<自治体向け>
・自治体内部の実施機関及び委託先はどこか。
・学習支援の実施状況は。実施しない理由はなにか。
・学習支援事業の対象世帯は何か。
・学習支援事業の対象学年は小中学生、もしくは高校生か。
・対象世帯のうち登録者が100%にならないのはなぜか。
・学習支援の実施状況は。事業費は。

<学習支援事業受託団体向け>
・教科指導以外で気をつけていることは何か。
・学習支援事業の目的は何か。
・運営上の課題は何か。
・必要な連携と課題は何か。

【引用・転載時のクレジット表記のお願い】
※本リリースの引用・転載は、必ずクレジットを明記していただきますようお願い申し上げます。
(例)社会に居場所を見つけられない若者や子どもへの支援活動を展開する「NPO法人さいたまユースサポートネット」の調査によると

◆生活困窮者自立支援法とは
既存の制度では十分に対応できなかった生活保護に至る前の段階の生活困窮者に対し、「自立の促進」を図ることを目的として、平成27年4月に施行。これにより福祉事務所を設置する自治体は、生活困窮者がワンストップで相談できる窓口の創設など、自立相談支援事業を行っている。また、生活困窮者が就労できるよう各種支援を実施。失業などにより一時的に住む家を確保できない人のために、家賃を補助する制度も盛り込まれている。

◆NPO法人さいたまユースサポートネットとは

高校を中退、通信制高校生、不登校や引きこもりを経験、障害で生きづらさを感じている子ども・若者など、この社会に居場所がなかなか見つからない子ども・若者たちを、学び直し、居場所づくりなど地域づくりを通じて、無償で応援するさいたま市を中心に活動するNPOです。

◆独立行政法人福祉医療機構(WAM)とは

独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、特殊法人等改革により、社会福祉・医療事業団の事業を承継して、平成15年10月1日に福祉の増進と医療の普及向上を目的として設立された独立行政法人です。
 少子・高齢化が急速に進行する中で、国民一人ひとりが心豊かに安心して暮らすことができる社会を築くためには、社会保障の基盤を揺るぎないものとしていく必要があります。このため、福祉医療の分野では、国及び地方公共団体において、社会福祉施設等の計画的整備、質の高い効率的な医療を提供するための医療制度改革に即した医療提供体制の構築など、社会保障を支える福祉医療の基盤づくりのための施策が進められています。
 独立行政法人福祉医療機構は、こうした国の施策と連携し、福祉医療の基盤整備を進めるため、社会福祉施設及び医療施設の整備のための貸付事業、施設の安定経営をバックアップするための経営診断・指導事業、社会福祉を振興するための事業に対する助成事業、社会福祉施設職員などのための退職手当共済事業、障害のある方の生活の安定を図るための心身障害者扶養保険事業、福祉保健医療情報を提供する事業、年金受給者の生活支援のための資金を融資する事業、年金資金運用基金から承継した年金住宅融資等債権の管理・回収業務及び教育資金貸付けあっせん業務など、多岐にわたる事業を展開しています。

◆「学習支援事業の運営実践事例集」

(特定非営利活動法人 さいたまユースサポートネット著)
今回の全調査結果内容をベースに、運営実践事例集として作成しました。3月中旬以降、各自治体の福祉事務所で閲覧できます。
なお、個別で入手希望の方は、さいたまユースサポートネットまでお問い合わせをお願いいたします。
・さいたまユースサポートネット TEL.048-829-7561

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