日本独自の近代建築の創生を目指し、モダニズムと伝統の架け橋の実現に努めた建築家・吉田鉄郎。生誕125周年を迎えた今年、彼の思想と手法を建築資料を通して紹介する展示が湯島の国立近現代建築資料館で開幕しました。
公式サイト:http://nama.bunka.go.jp/

「モダニズム」と「伝統」に橋を架けた建築家
日本の近代建築を牽引した建築家の一人である吉田鉄郎(1894-1956)。東京中央郵便局(1931)や大阪中央郵便局(1939)など、日本近代建築の名作を残した「逓信省の建築家」として知られています。彼が活躍した1920年代から1950年代初頭は、日本に限らず世界中で、いかに「近代」を空間的に、建築的に表現するかが問われた時代でした。


当時重要だったのは、ヨーロッパに端を発するモダニズムを模倣するのでも、それを土着の伝統と折衷するのでもなく、モダニズムと伝統との間に橋を架けわたすことでした。この「架け橋」によってモダニズムが定着し、同時に伝統が新たに再生してきます。本展では、吉田の住宅作品に鮮明に現れるモダニズムと伝統の相克と、この両者への「架け橋」を追求する彼独自の思想と手法を建築資料から読み解いていきます。

視察旅行、海外の建築家との交流
吉田の日本的な近代建築への探求は、1931 年から翌年にかけての欧米の視察旅行とその後の海外建築家との交流によって急速に深まります。視察旅行の間には『新日本住宅図集』(1931年)などの自書を配り歩き、ドイツ語圏が日本建築を需要する重要な契機を作りました。後に刊行されたドイツ語による著作『日本の住宅』(1935 年)は、欧米建築界で長く尊ばれる名著となっています。1930年代当時、彼はすでに海外の建築家・建築史家などにも知られた日本人建築家でした。

2,000枚に及ぶ図面が寄贈。建築資料から読み取る吉田の功績
本展開催の理由の一つとして、彼が自宅に保管していた2,000枚に及ぶ建築図面が文化庁国立近現代建築資料館に寄贈される運びとなったことがあります。大学時代の課題や設計コンペに応募した図面など、保管されていた膨大な図面からは、吉田の多彩な活動の源を知ることができます。彼がどのようにモダニズムと伝統に橋を架けたのか…。ぜひ建築資料から読み取ってください。

関連イベント
会期中にギャラリートークを開催します。(※入場無料・予約不要)
ギャラリートーク1
2019年11月9日(土) 13:30~15:30「吉田鉄郎の住宅にみるモダニズムと伝統」
登壇:大川三雄(元日本大学教授)・山崎徹(豊岡クラフト)
ギャラリートーク2
2019年11月30日(土) 13:30~15:30「吉田鉄郎の建築とその現代性」
登壇:塚本由晴(東京工業大学大学院教授)・豊川斎赫(千葉大学大学院准教授)・田所辰之助(日本大学教授)
ギャラリートーク3
2019年12月21日(土) 13:30~15:30「吉田建築の保存と再生」
登壇:横田昌幸(NTT ファシリティーズ)・観音克平(郵政建築研究所)
モデレーター:川向正人(当館主任建築資料調査官・東京理科大学名誉教授)
開催概要
「吉田鉄郎の近代 ― モダニズムと伝統の架け橋」

【場所】文化庁国立近現代建築資料館(〒113-8553 東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内)
【会期】2019年11月1日(金)~2020年2月11日(火・祝)
【入場方法】
展覧会のみ閲覧する場合(平日のみ利用可能):湯島地方合同庁舎正門よりご入館ください。入館は無料です。
都立旧岩崎邸庭園と同時観覧する場合:都立旧岩崎邸庭園よりご入館ください。ただし旧岩崎邸庭園の入園料(一般)400円が必要です。
※土・日・祝日の入場には旧岩崎邸庭園の入園料(一般)400円が必要です。
【休館日】2019年12月29日(日)~2020年1月3日(金)
【開館時間】10:00~16:30
【主催】文化庁
【企画】吉田鉄郎展実行委員会
【協力】NTTファシリティーズ逓信建築アーカイブス、公益財団法人東京都公園協会