個人投資家の約6 割が消費税増税に慎重
マネックス証券株式会社(以下「マネックス証券」)は、2009 年10 月より、マネックス証券に口座を保有する個人投資家を対象に、相場環境に対する意識調査を月次で実施しております。
このたび、2013 年8 月16 日~19 日にインターネットを通じて実施したアンケート調査1,262 件の回答結果を報告書にまとめました。マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木 隆の総括と併せてご活用ください。
【調査結果要約】
(1)個人投資家の見通しDI(※1)は日本株小動き、米国株低下、中国株は上昇
【日本株DI】 (2013 年7 月) 32 → (2013 年8 月) 33 (前月比+1 ポイント)
【米国株DI】 (2013 年7 月) 48 → (2013 年8 月) 30 (前月比-18 ポイント)
【中国株DI】 (2013 年7 月) -68 → (2013 年8 月) -50 (前月比+18 ポイント)
前回調査時(2013 年7 月)以降、日経平均株価は下落傾向だったが、日本株DI は小幅な動きとなりました。8 月上旬にNY ダウ平均が史上最高値を連続して更新しましたが、米雇用統計が予想よりも下回ったこと、FRB の量的緩和縮小の開始時期の予測観測などの影響からか米国株DI は低下しました。HSBC が発表した7 月の中国製造業PMI が47.7(6 月:48.2)と前月より悪化しましたが、金融市場への不安感が後退したのか、中国株DI は上昇に転じました。
(※1)「上昇すると思う」と回答した割合(%)から「下落すると思う」と回答した割合(%)を引いたポイント
(2)業種別魅力度ランキングは、8 ヶ月連続で「自動車」と「医薬品」が上位2 位を独占
個人投資家が「魅力的であると思う業種」ランキングでは、8 ヶ月連続で「自動車」と「医薬品」が上位2 位を独占しています。今回の調査では、前回調査時より引き続き「自動車」が首位となりました。また、「不動産」(3 位→5 位)、「銀行」(5 位→8 位)、「石油関連」(10 位→12 位)が順位を下げる一方、「ハイテク」(6 位→4 位)、「鉄鋼」(12 位→11 位)がそれぞれ順位を上げました。
(3)今後3 ヶ月程度の米ドル/円相場の見通し:円安を見込む向きは減少し約5 割に
8 月上旬から中旬かけて円高傾向だったこともあり、今後3 ヶ月程度の米ドル/円相場の見通しでは、円安を見込む層は前回調査時より12 ポイント減少の50 ポイントとなりました。(62→50)逆に円高を見込む層は11 ポイント増の20 ポイントとなりました。(9→20)
(4)個人投資家は、欧州の企業業績にも着目
個人投資家の国内のトピック(企業業績/金融政策/政治・外交/金利動向/為替動向/マクロ経済)への注目度は依然として高水準です。ユーロ圏の4~6 月期の域内総生産(GDP)が7 四半期ぶりにプラス成長に転じたということもあり、前回調査時よりも欧州の企業業績について注目が高まっています。
(5)個人投資家の約6 割が消費税増税に慎重
消費税の増税および増税が相場に与える影響について、個人投資家にたずねました。また、QUICK月次調査(8 月)(金融機関、運用会社、事業法人の担当者、以下「機関投資家」)の結果から、個人投資家と機関投資家の見解について比較しました。
「消費税増税について、あなたはどうするのがよいと考えますか?」(※)とたずねたところ、「消費税率を予定通り2014 年4 月に8%、2015 年10 月に10%まで引き上げたほうがよい」と回答した個人投資家は、42.2%(機関投資家:64%)でした。1%ずつ段階的に引き上げるなどの改定案を含めれば、個人投資家は消費税増税に対して慎重派が約6 割となりました。反対に、「増税を当面見送ったほうがよい」と回答した個人投資家は27.5%(機関投資家:7%)でした。
※ QUICK 月次調査での設問は「現行5%の消費税率を2014 年4 月に8%、15 年10 月に10%まで引き上げる可能
性についてどう考えるか」
2014 年4 月の消費税率の引き上げが見送られた場合の相場に与える影響をたずねたところ、「円安になる」と回答した個人投資家は42.6%(機関投資家:59.0%)でした。また、消費税率の引き上げ見送りが日本の株式市場に与える影響として「下落要因になる」と予想した個人投資家は回答者全体の53.1%(機関投資家:64.0%)、「上昇要因になる」とした回答者は28.5%(機関投資家:27.0%)「影響はない」との回答は、18.0%(機関投資家:9.0%)でした。
また、「消費増税論議を踏まえ、日本銀行の年内の金融政策をどう予想するか」についてたずねたところ、「現状の金融政策を維持する」と回答した個人投資家は60.1%(機関投資家:65.0%)でした。
(6)日本株式(個別銘柄)への投資方針は、長期保有が47.1%
日本株式(個別銘柄)への投資方針をたずねたところ、「長期間保有し、値上がり益や配当・株主優待を重視している」という回答が47.1%、「短期間での値上がり益を重視している」という回答が23.4%だった。
また、米国株や中国株など海外資産への株式投資についてたずねたところ、「興味があり取引している」という回答は15.4%、「興味はあるけれど、取引していない」という回答が49.4%「興味がない」という回答は35.3%で、海外株式の個別銘柄への投資はまだまだハードルが高いことが伺える。
■調査結果
1. 株式市場を取り巻く環境について
2. 為替市場について
3. お客さまの日本株取引について
4. 注目するトピック
5. 消費増税および消費増税が相場に与える影響について
個人投資家の回答とQUICK 月次調査(8 月)(金融機関、運用会社、事業法人の担当者)の結果
を合わせて掲載いたします。
6. 個別銘柄への投資方針について
米国株や中国株など海外資産への株式投資について「興味はあるけれど、取引していない」または「興味がない」と回答したその理由について
・為替の影響が大きく魅力がない。情報がどうしても少ないので判断材料に迷う。
・情報不足と情報解析に要する時間の不足。
・外国株式の売買判断が難しい。国内株だけでも十分面白い。
・日本株の情報収集、取引で精いっぱいのため。
・非常に興味はあるが手数料が若干割高であり、まとまった投資資金が無いと手数料率が高くなってしまうため。まとまった投資
資金もないので。
・個別銘柄の情報や実際のサービス等に触れる機会が少ないのでどの銘柄に投資してよいかわからない。また、忙しくて研究し
ている時間的余裕がない。 など
■総 括 (マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆)
今回の調査で目を引いたのは、なんと言っても消費税増税に対する個人投資家の考え方である。「あなたはどうするのがよいと思うか」という問に対して、「予定通り2014 年4 月に8%、2015 年10 月に10%まで引き上げたほうがよい」と回答した個人投資家は42.2%だった。反対に、「増税を当面見送ったほうがよい」と回答した個人投資家は27.5%だった。これに1%ずつ段階的に引き上げるなどの改定案を含めれば慎重派が約6 割と、予定通りに行うという支持派の4 割を上回った。
これに対して、QUICK が金融機関、運用会社、事業法人の担当者を対象に行なった月次調査では6割強が予定通り実施と回答している。ここで注意が必要なのは、QUICK 調査は、「現行5%の消費税率を2014 年4 月に8%、15 年10 月に10%まで引き上げる可能性についてどう考えるか」という質問への回答であって、個人投資家サーベイのように、「あなたはどうするのがよいと思うか」と個人の考えを尋ねるものではないということだ。つまり、自身の意見は別として、増税実施のシナリオの確率を尋ねるものとなっているのだ。
個人は、見送りや増税ペースの変更をしたほうがいいという(すなわち、それを望む)声が多数派である一方、プロの見通しは予定通りに実施されるであろうというのが多数派である。仮に、プロの予想能力が高いとすれば、個人投資家の多数が望む税制政策は実現されないことになる。
これで政治が民意を表しているといえるだろうか。無論、政治というものは大衆迎合的になることを戒め、国の将来のために断固とした政治的判断が求められる場合もある。
しかし、デフレ脱却を最優先課題に掲げるアベノミクスを推進するなか、このタイミングで増税というのは明らかに経済政策的に矛盾である。衆参のねじれを解消した安倍政権には「デフレ脱却と財政再建の両立が求められている」という意見もあるが、無理難題をふっかけているように思える。両立ではなく、優先順位をつけることが賢明ではないか。まずはデフレ脱却をしっかりと視野に捉えるところまできてからの増税で決して遅くないと考える。巷間、1997 年橋本内閣の時に消費税を上げて却って税収が減少した事例などがよく引き合いに出されるが、経済状況が違うのでどこまで参考にできるかは不明である。
しかし、ひとつだけ、極めてシンプルなことを指摘したい。デフレ脱却のためにアベノミクスは本の矢を打つ - ひとことで言うなら景気をよくしようということだ。景気をよくしようというときに増税という選択肢は、どう考えても変である。個人投資家の多数意見が、正しい選択肢だと思う。政府には消費税増税時期の先送りか増税ペースの変更を希望したい。
今回も皆様方のご協力で、大変貴重なデータを作成・分析することができました。本当にありがとうございました。今回のサーベイが個人投資家の皆様方の投資判断の一助となれば幸いです。
(マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆)
■調査の概要と回答者の属性
調査方式: インターネット調査
調査対象: マネックス証券に口座を保有している個人投資家
回答数: 1,262 件
調査期間: 2013 年8 月16 日~8 月19 日
【性別】
男性:84.3%、女性:15.7%
【年齢】
未成年:0.1%、20代:3.8%、30代:19.3%、40代:32.9%、50代:21.3%、60代:16.2%、70歳超:6.4%
【金融資産】
500万未満:27.2%、500万~1000万:22.4%、1000万~2000万:18.6%、2000万~5000万:20.6%、5000万~1億:8.3%、1億以上:2.9%
【売買頻度】
デイトレ:4.4%、週に数回:16.0%、月に数回:31.6%、数ヶ月に1回:28.0%、それより少ない:20.0%
【株式投資のご経験】
1年未満:8.0%、、1年~5年:18.4%、5年~10年:27.8%、10年以上:45.8%
本情報は当社が実施したアンケートに基づいて作成したものです。
・ 本情報は売買のタイミング等を反映したものではなく、また示唆するものではありません。
・ 当社は記載した銘柄の取引を推奨し、勧誘するものではありません。
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