~第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の議事録で見えた「予備率3%」と5つの焦点~

系統用蓄電池に関する重要情報を無料で公開する専門ニュースサイト「BESS NEWS」はこのたび、経済産業省・資源エネルギー庁の第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」に掲載された議事録および配布資料をもとに、2026年度の電力需給見通し、電気事業法改正案、燃料調達、インバランス料金制度、ワーキンググループ再編など、BESS事業者が確認すべき論点を整理した解説記事「電気は足りなくなる?電力制度改革は実装段階へ~第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の議事録で見えた「予備率3%」と5つの焦点~」を公開しました。
今回参照した公式ページには、資料1~10、参考資料、議事要旨、議事録が掲載されています。会合日は2026年3月27日、公式ページの最終更新日は2026年5月7日です。BESS NEWSでは、一次情報に基づき、「決定されたこと」「法案・方針として示されたこと」「将来の見通しとして示されたこと」を分けて整理しています。特に、2026年度の電力需給については、夏季・冬季とも全エリアで安定供給に最低限必要とされる予備率3%を確保できる見通しが示されています。一方で、予備率3%は停電リスクがないことを意味するものではなく、設備停止、燃料価格、異常気象、系統制約などの前提条件を合わせて確認する必要があります。BESS NEWSでは、今回の資料を単なる審議会情報としてではなく、系統用蓄電池の事業開発、投資判断、収益モデル、市場参加、系統接続に関係し得る制度環境の変化として整理しています。
目次
- BESS NEWSが今回解説するテーマ1-1. 第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の議事録・資料1-2. 「決定」「案」「見通し」を分けて読む重要性
- BESS事業者が注目すべき制度・需給の論点2-1. 2026年度電力需給見通しと予備率3%2-2. 電気事業法改正案、燃料調達、インバランス料金制度
- 実務で誤解しやすい注意点3-1. 予備率3%は「停電リスクゼロ」ではない3-2. 改正案・見直し方針を成立済み制度として扱わない3-3. 蓄電池の収益性は市場制度と案件条件の確認が必要
1. BESS NEWSが今回解説するテーマ
今回のBESS NEWS記事では、経済産業省・資源エネルギー庁の第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」に掲載された議事録および配布資料をもとに、BESS事業者が確認すべき制度・市場・需給の論点を整理しています。同ページには、資料1~10、参考資料、議事要旨、議事録が掲載されています。議事録によると、会合は2026年3月27日11時から13時52分までオンラインで開催され、電気事業法改正案、次世代電力産業、燃料確保と電力・ガス安定供給、2026年度電力需給見通し、インバランス料金制度、ワーキンググループ再編などが議題となりました。
BESS NEWSでは、今回の資料を読むうえで、「何が決定済みなのか」「何が改正案や見直し方針なのか」「何が将来の見通しなのか」を分けて確認することが重要だと考えています。たとえば、「電気事業法の一部を改正する法律案」は、2026年3月24日に閣議決定された法案です。閣議決定は、政府として法案を国会に提出する意思決定であり、法律が成立したことを意味するものではありません。また、2026年度の電力需給についても、現時点の供給計画などを前提とした「見通し」として扱う必要があります。
2. BESS事業者が注目すべき制度・需給の論点

今回の資料で特に注目されるのが、2026年度の電力需給見通しです。資料8では、2026年度の夏季・冬季ともに、全エリアで10年に一度の厳しい暑さ・寒さを想定しても、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しとされています。予備率とは、電気を最も多く使う時間帯に対して、どれくらい余分な供給力があるかを示す割合です。必要な供給力が100で、供給できる供給力が103であれば、予備率はおおむね3%です。一方で、予備率3%は「十分な余裕がある」というよりも、「安定供給に必要な最低限の余白」と見る必要があります。資料8では、東京エリアなどについて、柏崎刈羽原発6号機が2026年3月27日時点では営業運転に至っていないものの、見通し上は運転している計画として予備率に計上されています。また、東京エリアでは、一般送配電事業者によるkW公募で最大約120万kWの追加供給力も見込まれています。BESS NEWSでは、こうした前提条件を確認したうえで、BESS事業者は需給見通しを「市場環境を読むための材料」として捉える必要があると整理しています。電気事業法改正案も重要な論点です。改正案では、大規模送電線や大規模電源の整備促進、電力取引市場の整備などが柱として示されています。送電線整備計画や大規模電源整備計画を経済産業大臣が認定し、電力広域的運営推進機関が財政投融資などを活用して必要資金を貸し付ける仕組みが示されています。
また、中長期市場や需給調整市場を法律上位置付け、経済産業大臣が指定・監督できる仕組みを設ける方向も示されています。蓄電池は短時間で充放電できるため、需給調整や市場取引と関係し得ます。ただし、今回の一次情報は、蓄電池の具体的な収益単価や参加条件を直接決めるものではありません。燃料調達も、電力市場を考えるうえで重要です。資料7では、2025年時点で日本の原油輸入は中東依存度94.0%、ホルムズ依存度93.0%である一方、LNGは中東依存度10.8%、ホルムズ依存度6.3%と整理されています。また、2026年1月末時点で石油備蓄が約8カ月分あること、電力・ガス会社が400万トン程度のLNG在庫を持っていることも示されています。在庫があることは安定供給上の安心材料です。一方で、在庫があることと、燃料価格が上がらないことは別問題です。燃料価格が上昇すれば、火力発電コストや電力市場価格に影響する可能性があります。さらに、資料9では、2026年10月1日以降、kW需給ひっ迫時補正インバランス料金のC値を300円/kWh、D値を50円/kWhとする見直し方針が示されています。あわせて、対象日の直前7日間でスポット市場価格200円/kWh以上のコマが30コマに到達した場合、翌日から上限価格を100円/kWhに引き下げる累積価格閾値制度を新設する方針も示されています。資料10では、制度設計WGと制度検討作業部会を改組し、「電力安定供給WG」「電力事業環境整備WG」「中長期取引市場検討WG」を設置する方針が示されています。これは、電力制度改革が方向性の議論から、市場ルールを具体的に設計する段階へ進みつつあることを示すものといえます。
3. 実務で誤解しやすい注意点
今回の資料で誤解しやすいのは、「予備率3%を確保できる見通し」と「停電リスクがない」を同じ意味で捉えてしまうことです。予備率3%は、安定供給に最低限必要な水準とされる余白です。しかし、発電設備の計画外停止、燃料価格の上昇、想定を超える猛暑・厳寒、系統制約などが重なれば、需給が厳しくなる可能性は残ります。
また、電気事業法については「改正案」として扱う必要があります。閣議決定された法案であっても、成立済みの法律として表現することは避けるべきです。インバランス料金制度についても、資料9では2026年10月1日以降の見直し方針として示されており、すでに実施済みの制度として扱うべきではありません。BESS事業者にとって重要なのは、今回の一次情報だけで蓄電池の収益性を判断しないことです。需給調整市場、中長期市場、インバランス料金制度は、蓄電池の事業環境に関係し得ます。
一方で、具体的な収益単価、参加条件、アグリゲーター経由の参加可否、市場併用の可否などは、今後の制度設計や案件ごとの条件を確認する必要があります。
ROIを検討する際には、市場収入だけでなく、電気料金削減効果、非常用・BCP価値、運用費、劣化・交換費、PCS交換費、接続関連費、工事負担金、系統制約などを含めて判断する必要があります。制度変更だけを見て収益を過大評価するのではなく、案件ごとの条件に基づいて資金計画と運用計画を確認することが重要です。
【記事内で参照した主な一次情報】
- 経済産業省・資源エネルギー庁「第5回 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「第5回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 議事録」
- 経済産業省「『電気事業法の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「資料4 次世代の電力産業の構築に向けて」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「資料7 燃料調達をめぐる動向と電力・ガスの安定供給について」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「資料8 2026年度の電力需給見通しについて」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「資料9 電力・ガス取引監視等委員会からの建議を受けた対応について」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「資料10 制度設計WG・制度検討作業部会の見直しについて」
【重要なテーマ解説】
今回のテーマで重要なのは、電力制度改革を「蓄電池に直接関係する制度だけ」で見ないことです。
BESS事業の収益性や実現可能性は、蓄電池そのものの性能だけで決まるものではありません。需給調整市場、中長期市場、インバランス料金制度、燃料価格、系統整備、接続条件など、複数の制度・市場要因が重なって決まります。今回の資料は、蓄電池の収益単価や参加条件を直接決めるものではありません。一方で、今後の市場設計や系統整備の方向性を確認するうえで、BESS事業者にとって重要な一次情報です。BESS NEWSでは、制度変更を単なるニュースとして扱うのではなく、事業開発、投資判断、資金調達、運用設計の現場で使える情報として整理していきます。特に、一次情報に書かれていない収益数字を推測で補うのではなく、何が確認済みで、何が今後確認すべき論点なのかを明確にすることを重視しています。
【この記事は、こんな方におすすめです】
この記事は、系統用蓄電池の開発事業者、事業企画担当者、電力市場担当者、アグリゲーション事業者、系統接続を検討する事業者、投資判断に関わる担当者におすすめです。また、BESS案件に融資・出資する金融機関、投資家、アセットマネージャー、スポンサー企業にとっても、制度変更と市場設計の方向性を確認するうえで重要なテーマです。特に、次のような案件では、早い段階で確認しておきたい内容です。
- 2026年度以降の電力需給や市場価格動向を前提に事業計画を検討している案件
- 需給調整市場や中長期市場への参加可能性を検討しているBESS案件
- アグリゲーター経由での市場参加を検討している案件
- 系統接続、工事負担金、出力制御、通信要件などを確認中の案件
- ROIだけでなく、劣化費用、PCS交換費、保守費、接続関連費も含めて投資判断する案件
- 非常用電源、BCP、電気料金削減効果も含めて蓄電池導入を検討している案件
BESS NEWS本編では、こうした案件で確認すべきポイントを、一次情報ベースで整理しています。
【BESS NEWSについて】
BESS NEWSは、系統用蓄電池に関する重要情報を無料で公開する専門ニュースサイトです。制度改正、系統連系、電力市場、事業開発、EPC、調達、運用、金融・投資まで、実務に必要な情報を一次情報ベースで整理し、意思決定に役立つ形で発信しています。
【公開記事】

BESS NEWS公開記事名:
電気は足りなくなる?電力制度改革は実装段階へ~第5回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の議事録で見えた「予備率3%」と5つの焦点~
【WATT-TUNE株式会社について】
WATT-TUNE株式会社は、株式会社テクノロジーズグループである株式会社エコ革の100%子会社です。低圧系統用蓄電池をはじめとする分散型エネルギー領域において、情報発信、事業開発、運用体制の構築を通じ、実務と制度をつなぐ取り組みを進めています。
【本件に関するお問い合わせ先】

会社名 :WATT-TUNE株式会社
所在地 :栃木県佐野市高萩町1322番地9
代表者 :代表取締役 青柳 福雄
事業内容:アグリゲーションフランチャイズ
URL :BESS NEWS https://bessnews.jp/
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