
ベイルートの避難所となっている学校で、ユニセフが提供したおもちゃで遊ぶ10歳のアミールさん(レバノン、2026年3月17日撮影) (C) UNICEF/UNI964784/Choufany
【2026年3月27日 ベイルート(レバノン)発】
ユニセフ(国連児童基金)レバノン事務所代表のマルコルイジ・コルシは3月27日にジュネーブで行われた国連の定例記者会見にベイルートからオンラインで参加し、レバノンの子どもたちが置かれている過酷な状況について、以下のように報告しました。
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わずか3週間のうちに、レバノンでは37万人を超える子どもが自宅を追われました。これは、1日当たり少なくとも1万9,000人の子どもが避難を強いられている計算です。その規模感を表すなら、毎日、何百台ものスクールバスが、命からがら逃げようとする子どもで満員となり、走り出しているような状況です。
1カ月も経たないうちに、レバノンの人口のおよそ2割が避難を余儀なくされました。そのスピードと規模は驚異的です。現在、全土で100万人を超える人々が住まいを追われており、その多くは2度や3度、あるいは4度も、場所を変えて避難を強いられています。これは突発的で混乱を伴う大規模な避難であり、家族を引き裂き、コミュニティそのものを空洞化させています。その影響は、暴力が収まった後も長く尾を引くことでしょう。

避難生活を送るベイルートの学校で、6歳のジャワードさん(左)と7歳のユーセフさん(右)を抱きしめる父親のジハードさん(中央)(レバノン、2026年3月17日撮影) (C) UNICEF/UNI964793/Choufany
レバノンの子どもたちは、計り知れないほどの心の傷を負っています。前回の衝突激化で受けたトラウマを癒やす間もなく、子どもたちは再び暴力によって家を追われています。絶え間なく続く爆撃と避難の連鎖は、心の傷をさらに悪化させ、深い恐怖を植え付け、将来にわたる深刻な情緒的影響を及ぼす恐れがあります。
ベイルート市内の学校の校舎にある避難所で会った11歳の女の子ゼイナブさんは、家族と共にベイルート南部から逃れてきました。ここは彼女が18カ月前にも避難生活を送った校舎でした。周囲に大勢の人が寝ている中で、ほぼ毎晩砲撃や爆撃の音を聞きながら過ごすような日々を、再び送ることになるとは想像だにしていなかったと、彼女は話しました。彼女はただ、家に戻り、学校に戻り、普通の生活を取り戻す、それだけを願っています。

避難所となっているベイルートの学校で、避難民の家族から話を聞くユニセフのテッド・チャイバン事務局次長(レバノン、2026年3月17日撮影) (C) UNICEF/UNI964789/Choufany
現在、13万5,000人を超える国内避難民が、660カ所強の集団避難場所に身を寄せており、その多くは子どもです。生活環境は一段と逼迫しています。建築中の建物や公共スペース、車両など、正式な避難所ではなく、過密で安全とは言えない場所に避難している世帯も少なくありません。レバノンでは、経済危機とインフラの劣化により、もともと基本的なニーズに十分応えられない状況でしたが、今やインフラは需要に耐えきれない状況に陥っています。
子どもたちの生存と未来を支える不可欠な社会サービスが、深刻な打撃を受けています。レバノン東部のベカーやバールベックといった地域では、爆撃によって極めて重要な貯水池や揚水施設が破壊され、何万人もが安全な水を利用できなくなっています。さらに、学校が避難所に使用されることになったため、おおよそ435校の公立学校の11万5,000人を超える児童・生徒の教育が突然中断されました。
この紛争激化による人的犠牲は衝撃的です。これまでに少なくとも121人の子どもが命を落とし、395人が負傷しました。爆撃を生き延びた人々を待ち受けているのは、人道的に極めて過酷な状況です。多くの家族が着の身着のままで逃げ出し、相次ぐ避難命令を受けて、数日間に何度も移動を強いられています。
同時に、病院、学校、橋、水・衛生施設など、子どもたちが日常生活を送る上で不可欠な民間インフラが、繰り返し攻撃を受け、損傷し、あるいは破壊されてきました。
ユニセフは現地で、パートナーや関係当局と連携し、移動を余儀なくされた子どもたちや避難所にいる子どもたち、到達困難な地域にいる子どもたちを支援するため、昼夜を問わず活動しています。ここ数週間だけで、即応メカニズムを通じて16万7,000人を超える避難民に対し、生活必需品(食品を除く)と冬用キットを届けました。

ベイルートのスポーツ施設内に新たに設置された避難所へ、支援物資を運び込むユニセフのトラック(レバノン、2026年3月18日撮影) (C) UNICEF/UNI965171/Choufany
また、140トンを超える必須医療用品を病院に届け、40カ所のプライマリ・ヘルスケア拠点を稼働させ、避難所にいる子どもと家族がケアを受けられるようにしています。約190カ所の避難施設に水と衛生に関する緊急支援を提供するとともに、教育省と連携してオンライン学習の環境整備や仮設学習スペースの計画を支援することで、子どもたちの未来を守る取り組みを進めています。
しかし、人道支援だけではこの危機を解決することはできません。救急隊員や保健スタッフが度重なる攻撃を受け、緊急対応能力は著しく損なわれています。治安上の懸念や輸送手段の欠如により、多くの世帯が到達困難な地域で孤立したままです。
この紛争で、最も大きな代償を払わされているのは子どもたちです。私たちは、支援を必要とするすべての人々への妨げのない人道的アクセスを強く求めます。学校、病院、水道システムなどの民間インフラへの攻撃を直ちに停止するよう求めます。何よりも、避難を余儀なくされた37万人の子どもたちには、即時の停戦が必要です。子どもたちは、逃げ続ける日々を終え、本来あるべき子どもとしての生活を取り戻す必要があるのです。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。https://www.unicef.or.jp