日本橋高島屋では、千葉市美術館所蔵「新版画-進化系UKIYO-Eの美」を、8月25日(水)~9月12日(日)の期間に開催。川瀬巴水、吉田博、伊東深水をはじめ、世界を魅了した「shin-hanga」約120点が集まる。会場は、日本橋高島屋S.C. 本館8階ホールで入場料は、一般1,000円、大学・高校生800円となっている。
海外でも人気の「新版画」
「新版画」は、江戸時代に目覚ましい進化を遂げた浮世絵版画の技と美意識を継承すべく、大正初年から昭和のはじめにかけて復興したジャンル。
版元・渡邊庄三郎(わたなべしょうざぶろう・1885-1962)のアイデアをもとに、伝統的な技術を用いながらも画家たちの新鮮な感覚を重視して生み出された数々の優品は、アメリカを中心に国内外で広くファンを獲得してきた。今や「shin-hanga」は、「ukiyo-e」とともに、世界の共通語になりつつあるという。
千葉市美術館所蔵の約120点を展示
同展は、千葉市美術館が誇る新版画コレクションから選りすぐった約120点で構成。
橋口五葉の《浴場の女》や伊東深水の《対鏡》といった最初期の初々しい傑作から、川瀬巴水の情感豊かな日本風景、吉田博の精緻な外国風景、山村耕花や吉川観方による個性的な役者絵を経て、昭和初期のモガを鮮烈に描いた小早川清《近代時世粧》に至る、新版画の成立から発展形への歴史をたどることができる充実の内容だ。
美人・風景・役者の各ジャンルの花形作家たちの競演と、伝統技術の粋を革新的な表現の煌びやかな融合を堪能できる。
展示作品からいくつか紹介しよう。
川瀬巴水の作品
まず、「川瀬巴水《東京十二ヶ月 谷中の夕映》1921年(大正10)年」。
『東京十二ヶ月』は、大正9年12月から翌年10月にかけての写生にもとづく連作。12点が予定されていたが、正円の4点と正方形の1点のみで終了。
《谷中の夕映》は、夕陽を受けてほの赤く輝く五重塔を描いたもの。巴水は、ちょうどスケッチを終えた時に鐘の音が響き渡り、思わず襟を正したと回想している。
伊東深水の作品
「伊東深水《対鏡》1916年(大正5)年」は、伊東深水の新版画第一作。
原画を単純化して黒と赤、肌の白の三色が映える構成とし、陰影を表すかげ彫り(鋸歯状の刻み)を施した。
特別に取り寄せた上質な紅を3、4度重ね、背景にはざら摺り(わざとバレンを傾けてその軌跡を見せる摺り)を大胆に入れるなど、摺りにも工夫が凝らされている。
《対鏡》は、彫刀とばれんによる、肉筆ではない「版の絵」であることを前面に押し出し、作家が語る「黒髪と赤い長襦袢の間に覗いている襟足の美しさ」を存分に伝える名作となっている。
大阪でも開催予定
また、同展は9月15日(水)~27日(月)の期間、大阪高島屋 7階グランドホールでも開催予定。
同展の詳細については、日本橋髙島屋S.C.ホームページを参照してみて。