日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県久慈市を写真とともに紹介する。
Vol.367/岩手県久慈市
次にやって来たのは合併前の地域の久慈市だ。久慈市では2つ有名なものがある。ひとつは「琥珀」。琥珀博物館なるものがあって、全国で唯一の施設である。久慈は白亜紀後期の琥珀(化石&宝石)の産地で、恐竜時代の歴史にも触れることができる。
そして、もうひとつはみなさんもご存知、朝ドラ「あまちゃん」の舞台であること。北三陸のいろんな場所で実際に撮影が行われていて、久慈もそのひとつにあたる。
元々は琥珀博物館も行く予定にしていたのだけれど、朝の出発が若干遅れたので、小袖海女センターにそのまま行くことにした。旧山形村から約30km、海岸線を進むと大きな岩が聳え立っていて、景色も美しい。
小袖海女センターでは、展示が見れたらいいなと思っていた。すると、駐車場に警備員がいて、車も人が多い。あれ、なんだろう…。着いたのは10時40分ごろで、人ごみの中を進んでみると、「あ!海女さんがいる!」そう、ちょうど11時から、本物の海女さんによる素潜り実演があったのだ。
「うわあ、そりゃあ、ぼくも見たいよ!」とチケットを買って、実演を最後まで見た。今回登場した海女さんは二人で、エネルギッシュで誰にでも親しく接してくれるので、わたしはただファンになっていった(おじさんみたいな言い方ですみません)。
いよいよ11時から潜りの実演だ。もう、ぼくからすれば、「ああ、海女さんがいる…海に入っていく…本物の海女さんだ…すごい…」と、海女さんが目の前にいるだけで、心から嬉しい気持ちだったけれど、海に入って潜る姿が、またかっこいいのだ。
白足袋を履いているので、潜るときにその足袋が最後まで海面にギリギリ見える。それが、すごく美しく見えた。
と、十分感動している中、二人の海女さんが、ウニを次々とハイペースで獲っていく。一度の素潜りで、両手にウニを抱えて。腰につけていた網が、あっという間にウニで満杯になっていった。あまりにお見事すぎて、わたしたちは毎回「おおぉー!」と言って拍手するしかできない。水中は深いとおっしゃっていたので、体力も技術も、優れているに決まっている。ぼくは潜ったとてウニのひとつも、獲ってこれやしないだろう。
最後に、海女さんが獲ってきてくれたばかりのウニを、その場で食べるという幸せに恵まれた。みなさんあっという間に並んでしまって、最後尾から二番目に並んでぼくもウニを買って食べた。海女さんやお母さんが、見事な手捌きでウニを割り、身を取り出していく。そして、無事にいただくことができた。心の中で唱える渾身の「じぇじぇじぇ!!」…最高に美味い。採れたてほやほやという嬉しさ付きだ。小袖海岸の海女さんは、「北限の海女」と呼ばれているわけだが、あまちゃんのドラマも、今も小袖で活躍する海女さんたちも、かっこいいなあ。つくづく海女さん推しになった。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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