伝統的な錨(いかり)の製造に使われる鍛造技術を活かしたオリジナル製品の製造・販売に取り組む三暁は、家具ブランド「TAonTA(タオンタ)」やアウトドアブランド「cocinero(コシネロ)」のショップ、オープンファクトリーを備えた「santo(サント)」を、8月8日(月)に広島県福山市の工場敷地内にてオープンする。
鞆の浦に古くから伝わる鍛造技術を後世に
三暁は、精密な切削加工技術によりクレーンや橋、エレベーターなどに使われる金属製品の製造を主業としながら、2016年に廃業した老舗の錨製造会社の事業を引き継いだ。この会社が保有していた、鞆の浦に古くから伝わる鍛造技術「鞆鍛冶」を後世に伝えるための取り組みとして、同技術を家具づくりに応用したブランド「TAonTA」やアウトドア向け調理器具を中心としたブランド「cocinero」を展開している。
また、従来は地元の学生向けに実施していた鍛造体験プログラムを「鍛造体験プラン」として事業化し、ものを販売するだけではなく、技術を啓蒙する活動も継続している。
自由鍛造を取り入れた家具ブランド
「TAonTA」は、型を使わず、鉄を直火で焼いてハンマーで叩いて成形する自由鍛造を取り入れているのが特徴。
そのためテーブルやスツールの脚には独特の凹凸ができ、それが味わいを生む。高度な技術を要する金属製品を得意とする三暁の3D設計技術、最新の工作機械と組み合わせて、デザイン性に優れた家具の製造・販売を行っている。
伝統技術の鍛接を用いたフライパン
「cocinero」のフライパンには、鉄を熱してたたいて接合する鍛接という伝統技術を使用。
この技術によって、パン部と持ち手の間につなぎ目のない一体のフライパンを作り上げ、さらにパン部の側面を2.2mmになるまでCNC旋盤で切削加工し、錆びにくくする「窒化」という熱処理を施して仕上げている。
“道具を作って、使う”ところまでを体験可能
「santo」内には、両ブランドのオリジナル商品の展示・販売を行うショップと、鍛造体験参加者に応対するスペースがある。また、敷地のおよそ半分を占める半屋外の空間に、フライパンを試用できる暖炉やキッチンスペースを設けることにより、“道具を作って、使う”ところまでを一貫して体験できるのもポイントだ。
設計は、「ホロコースト記念館」などを手掛けた近畿大学教授の建築家・前田圭介氏が担当。おおらかな屋根が作り出す軒下空間が特徴で、「TAonTA」の家具の構造からインスピレーションを得たシンプルな構成によって、温かみのある力強い空間を実現している。
同施設は、スレートで覆われた工場が立ち並ぶ鉄鋼団地のフラッグシップとして、新たなランドマークになることを目指している。また、新たな観光資源としても位置付け、地元の観光産業とのコラボレーションを図り、鞆の浦の活性化に貢献することも計画しているという。
■santo
住所:広島県福山市鞆町後地26-30
営業時間:11:00~17:00
定休日:土日祝 ※今後変更の可能性あり