本格的なシーズン到来を告げる「ふぐの初競り」が、山口県下関市の南風泊(はえどまり)市場で、9月26日(月)に実施される。新型コロナウイルス感染防止に配慮しながら、伝統ある下関の秋の風物詩として「ふくの食文化」を継承していくという。

山口県では、ふぐを「ふく」と呼ぶことが多く、諸説あるものの縁起の良い「ふく(福)」と呼ばれるようになったといわれている。

全国で唯一のふぐ専門市場

下関漁港南風泊分港にある南風泊市場は、全国有数のふぐ取扱量を誇り、全国で唯一のふぐ専門市場として知られている。

この時期市場には、日本各地で水揚げされる天然ふぐをはじめ、長崎県や熊本県などで養殖されるとらふぐなど、約20種類のふぐが集まる。

ふぐの猛毒を取り除く技術「みがき」

ふぐは猛毒を持つため、ふぐ食は室町時代以降禁止されていた。しかし、1888年に初代内閣総理大臣で山口県出身の伊藤博文が下関で食べたふぐに感嘆して、当時の山口県令(知事)原保太郎にふぐ食の解禁を命じたことがきっかけで、ふぐ食が全国に広がった。近代においては、山口県は最初のふぐ食解禁の地となる。

下関では、ふぐの猛毒を取り除き食べられる状態にする技術「みがき」が発展し、現在でも下関には数多くの専門加工業者が集結している。

ふぐ漁が正式に解禁

例年通り、9月1日(木)に市場関係者が集まり、航海の安全と大漁を祈願するふぐ延縄船団出航式が行われた。

以降、ふぐ漁が正式に解禁となり、26日(月)には水揚げされた「ふぐの初競り」が行われる予定だ。

南風泊市場の独自の手法「袋競り」

ふぐの競りは「袋競り」といわれる南風泊市場の独自の手法で行われる。

「袋競り」とは、競り人が筒状の黒い袋に片手を入れ、買受を希望する買受人が袋の片方から順番に手を差し入れて、袋の中で握手するように競り人の手指を握って希望額を伝える方法のことだ。

日本で唯一のふぐの冷凍自販機も

山口県下関市にある「唐戸市場」には、ふぐの水産仲卸・吉田水産が設置した「ふぐの冷凍自販機」がある。日本で唯一のふぐ専門の自販機で、福岡県で活躍するアートパフォーマー・カラリズムリサさんによる、とらふぐのイラストが正面と側面に描かれている。

メニューはとらふぐの刺身、まふぐ唐揚げ用切り身、ふぐ茶漬けなどを冷凍で販売。土産として購入できるよう、保冷剤が入った状態になっている。ただし、メニューの内容は季節により変更になる場合がある。

また、下関 南風泊市場直送 ふく専門店「ふくの里ネットショップ」もあるので、オンラインでふぐを購入することも可能だ。

冬の味覚の王者・ふぐを味わいたい人は、足を運んでみては。

​■山口県 下関市 南風泊市場 ふぐの初競り
日時：9月26日(月)午前3:20～
開催場所： 山口県下関市 下関市地方卸売市場南風泊市場

下関 南風泊市場直送 ふく専門店「ふくの里ネットショップ」：https://fukunosato.net/

(鈴木 京)