中国・上海の「Powerlong Museum(宝龍美術館)」にて、日本人アーティスト16名による展覧会「Under Current」が、11月11日(金)~2023年1月29日(日)まで開催中だ。
沓名美和氏をキュレーターに迎え、絵画や立体作品約100点が体系的に展示されている。
上海で注目が高まっている「Powerlong Museum」
アジア最大級のプライベート・ミュージアムといわれる「Powerlong Museum」は、近年アジアのアートシーンの中心地として発展を遂げる上海において最も注目される美術館だ。
日本とアジアの懸け橋として活躍
同展でキュレーターを務める沓名美和氏は、魯迅美術学院現代美術学科教授、多摩美術大学客員教授で、現在は清華大学日本研究所にて東アジア文化芸術の専門家として外交行事にも携わっている。
日本とアジアの懸け橋となり活躍する同氏をキュレーターに迎え、今後国際的にさらなる躍進が期待される日本人アーティスト16名の絵画や立体作品約100点が体系的に展示され、その豊かで多様な表現を上海から世界に向けて発信している。
見えにくいが、確かに存在する流れ
展覧会タイトル「Under Current」は、見えない流れを意味し、流行や時代のメインストリームのうねりの下にある、見えにくいけれど確かに存在するもうひとつの流れを示唆している。
同展で紹介されているのは、90年代以降、「失われた20年」といわれる日本経済の停滞期間に青春時代を過ごした、現在30代~40代のアーティストたち。
彼らは、世界的評価を受けた草間彌生・村上隆・奈良美智の次の世代のアーティストであり、世界のメインストリームと隔てられた日本アートシーンのなかで新たな時代性を模索してきた人々といえる。
4つのセクションに分けて展示
同展では「Another Story」「Scream」「Division and Conversation」「Song of the City」という4つのセクションに分けて展示が構成され、これまで日本の現代美術史のなかで体系的に語られる機会のなかった彼女/彼らの作品と活動を一挙に取り上げる初の試みとなっている。
華やかな時代の終焉を生きてきた彼らの表現は、「個」のアイデンティティを突き詰めることで、国家や文化的背景といった社会の枠組みや、ジェンダーやジェネレーションの差を超えて、誰しもが共感しうる人間の存在意義や普遍性に問いかける作品を数多く生み出してきた。
また、自然への畏怖や生命に対する尊重、自然環境と人間社会が新たに紡いでいくべき関係性などに焦点を当てた未来志向の力強い作品も生まれているそう。
作品に織り込まれたメッセージは、日本、中国といった国を越え、人々の心に訴えかけくるのかもしれない。作品を実際に体感したい人は足を運んでみて。
■「Under Current」開催概要
会期:11月11日(金)~2023年1月29日(日)
会場:Powerlong Museum Hall 4&5
住所:中国上海市閔行区漕宝路3055号
休館日:月曜日
「Under Current」URL: http://www.powerlongmuseum.com/exhibition_detail/80.html
(鈴木 京)