東京 北参道のショップ・ブランド「chisa(チサ)」は、現存すれば来年で100周年となる「サリール工房」の功績を称え、50点を超える名品たちを紹介する最初で最後の展覧会「さよなら、サリール – イタリアデザインの革命を支えた、小さなガラス工房」を11月18日(金)~12月25日(日)の期間、開催している。
サリール工房
「サリール工房」は、1923年に設立されたヴェネチア・ムラーノ島のガラス工房。
溶けたガラス種を熱いうちに巻き取り、息を吹き入れ成形する、いわゆるホットワーク技法を世界に誇るムラーノ島にありながら、北欧より「グラヴィール技法」を取り入れ、冷え固まったガラス器の表面に彫刻を施す、いわゆる「コールドワーク製法」を極めた唯一無二の工房である。
さらにデザイン界の巨匠ジオ・ポンティ、エットレ・ソットサス氏など名だたるアーティストがデザイナーとして参画。
また、ミラノ発の人気インテリアブランドとして世界中で愛されている「フォルナゼッティ」など、数々のアーティストのデザインをガラス工芸として誕生させた。
それまで貴族をターゲットにデザインされてきたムラーノガラスのモダニズム変革に大きく貢献し、ヴェネチア・ビエンナーレをはじめ、世界でセンセーションを巻き起こした。同工房は、2018年に閉鎖を決定。
一部作品の紹介
ここで一部作品の紹介をしよう。
『グラヴィール 円錐型花器』¥480,000(本体)、
『グラヴィール 葡萄文足付花器』¥460,000(本体)、
『エナメル彩 四方鉢「聖母の百合」』¥135,000(本体)、
『グラヴィール リキュールグラス』各¥60,000(本体)、
『エナメル 八角鏡』¥1,300,000(本体)。
20世紀ムラーノガラス研究家 小瀧千佐子氏が監修
同展では、「サリール工房」のクライアントとして40年ほど関係を築いてきた20世紀ムラーノガラス研究家 小瀧千佐子氏が、アートを暮らしの中に取り入れて欲しい、という願いを込めて作品を厳選し監修。
購入可能な作品から自身所蔵の貴重な美術品までを展示し、工房の尊い歴史とともに紹介する。
ヴェネチア共和国とムラーノガラスの歴史
13世紀末、ヴェネチア共和国はガラス技術の流出を防ぐべく全ての職人とその家族をムラーノ島に幽閉。逃亡すれば死罪、ガラス工芸発展に寄与したものは貴族の称号を与えるという、飴と鞭の政策下でガラス文化は開花し、共和国繁栄の財源となった。かつては数百のガラス工房が存在したムラーノ島だが、後継者問題や昨今の燃料費高騰なども手伝って、イタリアの貴重な伝統工芸品であるムラーノガラスは、かつてない危機的状況下にあるという。
最初で最後の展覧会「さよなら、サリール – イタリアデザインの革命を支えた、小さなガラス工房」へ足を運んでみては。
■さよなら、サリール – イタリアデザインの革命を支えた、小さなガラス工房
開催日時:11月18日(金)~12月25日(日)11:00~18:00※最終日17:00まで 毎週月・火・水曜休み
会場:chisa
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-21-2
Web site:https://chisa.jp/
(角谷良平)