愛媛・四国中央市のいりこ倶楽部は、新たなプロジェクトとして「いりこ酵母パン」の開発・販売をスタートした。
限られるいりこの使い道
いりこといえば、美味しいお出汁の材料として認識されることが多く、それ以外には使い道が考えにくいというのが一般的な認識だ。特産地であるこの地域においても認識は変わらず、若い母親世代や子どもたちに魅力がなかなか伝わらず、食卓に登場することも減ってきているのが現状となっている。
同時に、四国中央市内のいりこ製品出荷量は、2021年度の集計で前年度比36%減の約341トンに留まっており、ここ2年はいずれも前年度比3割以上減という苦しい状況が続いてる。さらに燃油高騰の向かい風も受ける中で、採算がとれないという判断から漁獲を手放す事業者も増えているという。
水福連携で雇用を創出するプロジェクト
この度、同団体は「この地域の大切な特産品として人の暮らし・食文化を支えてきた、いりこの魅力を再発見してほしい。いりこの風味を味わってもらうことで、家庭の食卓に取り入れてもらえる機会をつくりたい」との思いから「いりこ酵母パン」を開発。
地元で採れたいりこを使って新たな食べ方・味わいを開発し、水福連携(※)しながら雇用を創出することを目的としたプロジェクトとなっている。
風味豊かな味わい
「いりこ酵母パン」は、いりこのうまみと麹の甘みが重なり合うこれまでにないパン。
日本の食文化に古くから伝わる発酵に注目し、瀬戸内ひうち媛いりこの魅力を最大限に伝えるためにいりこで酵母をつくりパンにしたところ、風味豊かな味わいに出来上がったという。
徐々に販売施設を増やす予定
製造・販売に協力した四国中央市内の福祉就労施設である「パン工房ともむぎ」と、
「ステップbyすてっぷ」は、いずれも地元でとれたものや安全・安心の国産素材を使った手作りのパン・製菓の製造を得意とする施設。販売は両施設の出店先販売所のほか、市内病院や役場の売店を皮切りに、少しずつ手に取ってもらう場所を増やしていく予定だ。
四国中央市の特産品であるいりこの可能性を地域に伝えながら、街を活性化するプロジェクトから生まれた「いりこ酵母パン」を、いち早く味わってみては。
■販売場所
パン工房「ともむぎ」
住所:愛媛県四国中央市土居町小林1785-1
ステップbyすてっぷ直営販売所「ゆーみん」
住所:愛媛県四国中央市川之江町2472-1
四国中央市役所内販売所「だんだん」
住所:愛媛県四国中央市三島宮川4-6−55
■販売価格:200円から
(※)水福連携とは、障害者等が水産業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み。水福連携に取り組むことで、障害者等の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む水産業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もあります。
(丸本チャ子)