日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、栃木県旧粟野町(鹿沼市)を写真とともに紹介する。
Vol.105/栃木県旧粟野町(鹿沼市)
栃木市方面から北上し、そのまま進めば鹿沼市の市街地へと近づいていくところを、思川(おもいがわ)が流れている西の方角へ折れる。すると、上都賀郡旧粟野町へ入る。途中の景色は穏やかな田園風景が広がっていたけれど、徐々に低い山が迫ってきて、旧粟野町のまちなかへ入るころには小さな盆地に入ったような感覚だった。建物も昔ながらの趣が残っており、中には明治や大正を思わせるようなオーラが漂った建造物もあって心揺すぶられる。
城山公園に訪れてみると、ぐるりとすべて巡ろうものなら数時間はかかるような、自然の山城であることに気付かされた。坂道はたいへん急で、かろうじてまちを展望できそうな方角を見つけて進むと、旧粟野町を見渡すことができた。奥まで低い山に囲まれていて、鹿沼市街地の宿場町の気配とは違う時間軸が流れていたのだった。
日光街道のルートを見ていても、旧粟野町の市街地は含まれていない。地元ではない人間が、日光街道を元に日光へ進んで行ったとしたら、旧粟野町の暮らしになかなか気づくことができないかもしれない。以前、鹿沼市を訪れたことはあるけれど、この旅で旧粟野町を訪れるまで、知ることができなかった。新しいまちが現れたような感覚だった。だから、ここに素朴で落ち着いたまちなみがあり、今も暮らしの時間が流れていることを、知ることができてすごく嬉しい。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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