銀座アートホールB室(1F)にて、12月12日(火)~17日(日)の期間、入場無料の『江見絹子生誕100年―「いのち」華やぐ』展が開催される。
世界で活躍した画家・江見絹子
1923年兵庫県明石市に生まれ、神戸市立洋画研究所で学んだ江見絹子(1923-2015)は、行動美術協会で活躍しながら、1962年の第31回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展に日本人女性として初めて出品するなど、抽象絵画が興隆した1960年代の綺羅星のひとつとして注目を集めた画家。1953年には行動美術協会会員となり渡米し、翌年2月にカリフォルニア州サウサリトで個展を開き、まもなくフランスのパリ6区に移って野見山暁治、菅井汲、向井良吉、堀内正和、浜口陽三らと親交した。
当時のパリではアンフォルメル(非定型)という抽象画が流行していたが、旅先のアルタミラとラスコーで見た先史時代の生命力溢れる洞窟壁画から強い刺激を受けて、半抽象的な絵を描き始めた江見。1955年に帰国し、翌年に『生誕』(神奈川県立近代美術館蔵)でシェル美術賞・三等賞を受賞した。
同年9月の第11回行動展に『陽』と共に出品されたのが『いのち』である。
行動美術協会会員作品集『ぱれっと』に掲載された写真には、未完成の『いのち』を前に絵筆を握るお腹の大きな画家が、夫アンリ・ガイ ヤールと一緒に写っている。
70年代からは四大元素をモチーフにした宇宙的空間を描く作風で知られ、抽象表現を貫くとともに、神奈川県女流美術家協会の会長として地域の美術振興に一身を捧げた。
初期の代表作『いのち』や『断片』も公開
今回開催されるのは、9点の絵画からなるささやかな企画ながら、1950年から晩年までの江見絹子の画業を“いのち”をキーワードに振り返る『江見絹子生誕100年―「いのち」華やぐ』展。修復された初期の代表作『いのち』や『断片』も公開される。
また、12月16日(土)13:00からは、江見絹子の長女で、作家・荻野アンナ氏の、事前予約制トークイベントも開催予定だ。
身近な“いのち”の誕生と別れ、あるいは自然災害による大きな喪失、戦後の高度経済成長期に社会に吹き込まれた“いのち”、さらには、作品そのものの“いのち”の再生。さまざまな面からこれらの作品を鑑賞して、江見絹子の創作を将来に受け継いでいくべき共有の文化遺産として理解してみては。
■銀座アートホールB室(1F)
住所:東京都中央区銀座8丁目110番地(銀座コリドー街)
展覧会開催時間:11:00〜18:30(最終日は16:00まで)
公式Facebook:https://www.facebook.com/kinukoemi.artist
(佐藤ゆり)