日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県旧大信村(白河市)を写真とともに紹介する。
Vol.250/福島県旧大信村(白河市)
大きく信じる村。そこに込められた願いは何か、と意味を探していくのも良いが、昭和30年4月、大屋・信夫の両村が合併してできたのが、大信村である。両村の頭文字をとって、大信村。2005年に合併するまでの50年間、大信村として存在していた。地形は西側に高峻な山岳地帯が広がり、東へ進むほど平坦な地形になる。
町屋の二本カヤと呼ばれる木を見に行った。市街地に近い水田のそばにその木は立っており、幹が見えないほど葉が深く茂り、大きく空まで伸びている。カヤは成長が遅く、木目の細かさから碁盤や将棋の高級品としても知られている木だ。このカヤも樹齢は約1,000年と推定されている。1世紀の時を経て、今もなお生き生きと育つ姿は、まだまだ1000年では足りないというエネルギーだろうか。
大信庁舎に向かうタイミングで、土砂降りの雨が降ってきた。このとき合羽を着ていなかったので、スーパーカブと一緒にずぶ濡れになった。合羽を着るのが間に合わなかったと言えるし、一旦濡れてしまえば、後の祭りだった。少し待つと小降りになり、空も明るくなったと見込んで再出発する。だが、雲の動きは思っていたよりも早く、再び土砂降りになった。合羽を着ていなかったので、流石に着ることにした。すると雨がやみ、それからはもう、降らなかった。
晴れの日の記憶よりも、あの場所で雨に降られた、という記憶の方が鮮明に残っている。振り返れば、ほろ苦さも懐かしさに変わるわけだ。たまには雨に濡れるのもいい。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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