日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、福島県二本松市を写真とともに紹介する。
Vol.277/福島県二本松市
二本松市では、地元の方に街を案内していただいた。やっぱり、自分だけで街を訪れて出会う景色とは違う世界を見ているし、そこに少しでも触れさせてもらうと、その街がもっと好きになっていく。
最初に連れてきてくださったのは、雑貨と喫茶のお店。木の温もりに包まれた店内には、心踊る雑貨がたくさん置かれていた。
そして、喫茶でもあるので水出しコーヒーとレモンケーキを食べた。優しい味で最高だ。何より、とっても明るい店主の方だった。30年越しの思いでオープンした雑貨とカフェの場であると。素晴らしいなあ。
途中、常連だというおじいさんがやってきて、どこから旅でやってきたのかとなり、倉敷出身ですと伝えると、「倉敷に花があるんだ。なんの花だったか…」と、ずーっと考えて、思い出せない。でも、こういう会話が面白い。さらに数学の先生や高校生も合流して、お店が賑やかになった。それぞれのご縁にあやかって、不思議な化学反応の場に混ぜていただいたのだった。
さて、今度は「岳温泉」という温泉街へ向かった。地域おこし協力隊の方々がいて、お会いできたらいいねと。数学の先生も一緒に岳温泉へ行くことになって、先生、巻き込まれちゃってませんか!? と思ったけれど、みなさん自由で爽やかだ。
道中、二本松城に戒石銘が刻まれた石があった。戒石銘、二本松の方々は知っていて当然だと。「爾俸爾禄 民膏民脂 下民易虐 上天難欺」つまり、民のお金を大切に使いなさいという戒めの言葉だ。
そして、岳温泉で地域おこし協力隊の方々にご挨拶をし、話を伺った。かつて、ここには独立国があったと。その名もニコニコ共和国。独自通貨が流通し、夏場は毎日のようにイベントがひらかれ、一世を風靡した。協力隊の一人は湯守(お湯の番人)を担当されていて、こうして温泉が守られているのだなあと。
今、ニコニコ共和国としての姿は主に閉じているけれど、岳温泉として、素晴らしい温泉がこれからも残って欲しいなあと思うばかりだ。温泉の歴史は長く、それでもかつては山津波や大火に遭い、さまざまな変遷を経て大切に紡がれてきた温泉街なのだ。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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