「子供の家 ゆずりは」は、東京都江東区にて、団体で2つ目となる拠点「ながれる」を開設する。
「子供の家 ゆずりは」の活動について
「子供の家 ゆずりは」は、2011年、児童養護施設などの社会的養護を巣立った子どもたちを対象とした相談所として運営をスタートした。
同団体は、社会的養護を経験した子どもたちの多くは、深刻な虐待や貧困の中で心に傷を抱えており、施設を巣立った後も、家族を頼ることができないと語る。そして、虐待のフラッシュバックが起きたり、生活資金を手に入れるために危険な環境に身を置いたりするケースも後を絶たないそう。
同団体では、相談者の困りごとにひとつひとつ向き合い、行政手続きのサポートや通院同行、専門機関へのつなぎなどのサポートを届けてきた。
社会的養護の経験の有無に関わらず、性的虐待や教育虐待などの苦しみの中で生きてきた若者からも多くのSOSが届き、9月時点で年間のべ6万件を超える相談に対応している。
同団体が長年の活動の中で大切にしてきたのは、支援と被支援の関係を越え、「安心」をともに育むこと。福祉の枠組みでは、相談者が「自立」することが一つのゴールと考えられている。しかし、「自立」へと駆り立てられる中で、新たな苦しみを抱える若者も少なくないと同団体は話す。
同団体は多くの若者との出会いの中で、「自立」を迫るのではなく、相談者が「ただ、ここにいてもいいんだ」「生きていてもいいんだ」と思えるような「安心」を育むことこそが、明日を生きる力につながることを実感してきたと振り返る。
また、感情労働の面を持つ対人支援の現場において、支援者が一方的に「安心」を提供し続けることは困難。
そして相談者にとっても、やがて社会に戻り生きていく上で、さまざまな人と接点の中で「安心」を育む経験が必要だと同団体は考える。
“半開き”のシェルターとして「ながれる」を設立
DVなどを理由に帰る場所がない人は、公的なシェルターにつなぐのが一般的な対応とされている。しかし、避難を必要としている人の数に対して、シェルターでの受け入れ可能数が不足しており、明確な身体への危害が認められない場合は入居できないケースも少なくない。
また、DV加害者やストーカー等から被害者を守る観点から、被害者の携帯電話や所持金を没収し、外出を禁止するなど厳しいルールが敷かれている施設も多いのが現状だ。
こうした現状からシェルターを忌避し、DVの環境下に戻ったり、生活費を手に入れるために危険な環境に身を置いたりする人も後を絶たないと同団体は語る。
このような背景を踏まえ「ながれる」は、施設の個室に閉じこもらず、他者や街の気配を感じながら心地よく過ごせることをコンセプトの中心に据えている。
「ながれる」は、さまざまな理由で今日帰る場所がなく避難が必要な人を、一時宿泊で受け入れる機能を有している。加えて、専門スタッフに相談したりゆっくりとくつろいだりできる事務エリア、街に開かれさまざまな人と交流できる“半開き”のエリアを備え、地域とのつながりと安心を生み出す。
既存のシェルターも当然必要だが、サポートを必要とする人のバックグラウンドが多様であるからこそ、“半開き”のシェルターが多様な選択肢のひとつとなることを同団体は目指している。
寄付を募集中
「ながれる」の施設機能は、最大2名が宿泊できるシェルター、相談・事務スペース、“半開き”のコミュニティスペース。開設までのスケジュールは、9月に内装工事開始、12月にオープン予定だ。
「ながれる」の名前の由来は、傷を負った人が心と体を癒せる場所ではありつつも、留まることなく、次の場所、次の人生のステージに漕ぎだしていける場所でありたいという願いが込められている。
現在「ながれる」の設立に向けて、施設の改装や運営の設計が進められているが、公的な補助金によるサポートの見通しは立っていない。着工〜運営1年目までに約3,000万円の費用が不足しているため、同団体は寄付を募集している。下記の「ながれる」公式サイトより寄付ページを確認できるので、気になる人はチェックしてみて。
「ゆずりは」所長の高橋亜美氏は、「(前略)『ながれる』は、朝起きたときに、『ああこんな心地よい場所で眠れたんだ』と思えたり、緊張や不安がほどけたり、『生きていてもいいかもな』って気持ちが芽生える場所となったら嬉しいです。(中略)街に開かれ、支援する人、相談する人、地域の人、みんなの間で安心が生まれる。泊まっている人たちも、そのあたたかな雰囲気を感じながら過ごせる。そんな連なりを大切に、安心がめぐる場所となることを願っています」とコメントを寄せた。
“半開き”のシェルター「ながれる」設立に向けての活動に注目してみては。
■ながれる
住所:東京都江東区富岡1-12-2
公式サイト:https://nagareru.acyuzuriha.com
(yukari)