日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、宮城県気仙沼市を写真とともに紹介する。
Vol.331/宮城県気仙沼市
気仙沼市の市街地へ。具体的なプランはほとんど決まっておらず、サユミさんという3年前にお世話になった方にご挨拶をして、それからの予定は未定だった。
サユミさんにお会いするのも緊張した。まず、「ここに来て!」と勤めていらっしゃる場所がわからなくて、案内所で尋ねた。雨が降った後で合羽を着ていたので、「この合羽の人は誰だろう…」とざわついた気配を感じた。
でも、案内所の方が優しく案内してくださって、無事にお会いできたのだった。開口一番、手持ちの大漁旗で、
「おかえりー!!」
と言ってくださった。緊張がうれしさに昇華した。「ようこそ」でもなく、「おかえり」って。それがすごくうれしくて。
おかえりと言っても、気仙沼に来るのはまだまだ3回目だ。それでも、その言葉は、心を魔法のように温かくしてくれた。
そして、サユミさんとお会いしたときに、「今、神社の清掃活動している場所があるから、行ってみたら?」とお誘いをもらって、行ってみることに。
すると、そこでは神社の掃除を、年齢もさまざまな方が集まって行なっていた。何よりとても明るい現場で。いきなりぼくみたいな飛び込み参加の人間がいても、スッと受け入れてくださって。こうした温かな空気感って、簡単なようで簡単ではないように思う。素敵な方たちだった。
清掃がひと段落ついたとき、神社の方が三時のおやつを持ってくるように、「これよかったら皆さんで」と、カツオを持ってきた。
ほんぎゃあ、鰹だ!
「あなたも食べなさい!」
と、半ば遠慮は許しませんという気配で、ぼくも同じ場に混ぜていただき、カツオをいただいた。人との出会いとカツオの美味しさと、ささやかな偶然性が、旅の思い出になっていく。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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