石川県の伝統工芸に携わる職人や窯元、製造元などが集い、真の多様性を再発見することを目的に結成されたRediscover Projectは、11月2日(土)~2025年3月16日(日)に、金沢21世紀美術館で開かれる「開館20周年記念 すべてのものとダンスを踊って ―共感のエコロジー」に出展する。
会場には、令和6年能登半島地震で破損した九谷焼と珠洲焼の陶磁器片をベースに、輪島塗の技法で新たな造形物に変えた作品が展示される。
石川県の伝統工芸
石川県の伝統工芸について、簡単に紹介しよう。
輪島塗は、石川県輪島市の伝統産業で、何工程にもおよぶ堅牢な塗りと蒔絵や沈金、加飾の優美さが特徴の漆器だ。
珠洲焼は、石川県珠洲市の鉄分豊富な土を高温焼成した陶器。溶けた灰が自然釉薬となり、味わい深い灰黒色の美しさを生み出すのが特徴だ。
九谷焼は、主に石川県南部で生産される磁器。「九谷五彩」と呼ばれる赤・青・黄・紫・紺青を基調とした上絵付けによる色鮮やかさが特徴だ。
展示作品
金沢21世紀美術館に展示されるRediscover Projectの作品は、能登半島地震により破損した陶磁器片や、生産の過程で規格外となった九谷焼や珠洲焼といった工芸品がベースになっている。
本来は廃棄される運命にあったこれらの素材たち、同じ石川県の工芸品でありながら交わることのなかった素材たちは、金沢に避難している輪島塗の職人により、漆と金を用いた「金継ぎ」によって融合され、一つの生命体のように命を宿し、新たな表情を見せる。
3列×8列、合計24のマスに整然と並ぶ陶磁器片のインスタレーションが登場。プロジェクトはまだ発展途上で、今まさに実験中であり、そのプロセスが垣間見られる展示となっている。
メインビジュアルの作品は、九谷焼の白磁に輪島塗の技法で金継ぎされた壺。その素材が持つ美しさや面白さを最大限に生かし、唯一無二の味わいを追求している。
割れた珠洲焼の断面の凹凸を生かしながら、漆錆、研ぎ、黒漆を塗っては乾かしてを繰り返した作品も。断面には金箔があしらわれ、見る角度により様々な表情を見せる。
あらゆる九谷焼の陶磁器片が融合された造形物は、どの破片も必要な存在で、支え合いながら絶妙なバランスを保っている。
Rediscover Projectについて
Rediscover Projectは、能登半島地震を機に立ち上がったプロジェクト「Stand with NOTO(Hope with NOTO)」が前身。Stand with NOTOでは、クラウドファンディングによって資金を調達し、能美市に輪島塗の職人の仮設工房を設置。また、九谷焼の陶磁器片をつなぐことで輪島塗の職人の仕事を創出し、国内外で展示・販売を行ってきた。
活動開始から半年、震災復興のフェーズを経て、リフレーミングの機会を提供することを目的としたRediscover Projectへと変容し、次のステージへと進む。
Rediscover Projectは、能登半島地震で破損した九谷焼や輪島塗、珠洲焼といった同じ石川県でありながら別々の工芸として成立していたもの、本来なら廃棄となる規格外や不完全とされるもの…あらゆるものを融合させ、新しい表現を追求する。
「Rediscover(リディスカバー)」とは「再発見」という意味。今回の出展に際し、「私たちの作品を通して、来館者の皆様が自身の思い出や感情を『再発見』する機会となれば幸いです。」とコメントを発表した。
金沢21世紀美術館、開館20周年記念展示
金沢21世紀美術館は、開館20周年を迎える今年、「新しいエコロジー」という年間テーマに呼応した「開館20周年記念 すべてのものとダンスを踊って ―共感のエコロジー」を開催する。
同展では、社会や精神までを含みうる、総合的なエコロジー理論の行く末を、アーティストの鋭敏な感性と観察を通じて作品として展示。また、同じビジョンを共有する科学者や哲学者などの研究者たちと協働し、専門的な内容を視覚化、可感化することで、感覚を通した学び(Sensory Learning)として伝える。
アフリカ、南アメリカ、アジア、欧米の芸術家、クリエイターが集い、美術館の空間の中でお互いにダンスを踊るように生命とともに生き延びるための知恵を分かち合う。
破損した工芸品の新たな形を見に行ってみては。
■開館20周年記念 すべてのものとダンスを踊って ―共感のエコロジー
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1丁目2−1
会期:11月2日(土)~2025年3月16日(日)
URL:https://www.kanazawa21.jp/
Rediscover project特設サイト:https://rediscoverproject.jp
(Higuchi)