
青森県弘前市
日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、青森県弘前市を写真とともに紹介する。
Vol.390/青森県弘前市
夏の青森県では、様々なお祭りに出会うことができた。八戸市の三社大祭にはじまり、青森市の青森ねぶた祭、五所川原市の五所川原立佞武多(たちねぷた)。祭りごとにスタイルの違いがあって、そして、その違いも祭りに参加している方々にとっては、あまり関係ないように思われた。隣の芝は青いといっても、時期が重なる祭り当日に隣の芝を見ているどころじゃない。何より自分たちが盛り上がってこそなのだ。目の前のお祭り、瞬間瞬間が最高! と感じられることが、祭りの良さかもしれない。
夕方から、弘前ねぷたまつりを見に行った。日程によってJR弘前駅と、弘南鉄道側の土手町の2つのコースのどちらかを進む。訪れた日はJR弘前駅前のコースだった。
弘前ねぷたの山車は、主に扇型であることがいちばんの特徴だ。青森市のねぶたは立体的、五所川原市の立佞武多は背が高く、弘前市のねぷたは扇型というわけだ。ほかの地域の山車にも、きっと特徴があるのだろうなあと思う。そして、扇には武者絵が鮮やかに描かれていた。ねぶた(ねぷた)は肉眼で見るのがやっぱり綺麗だ。それだけはずっと共通して感じたことだった。

扇型のねぷたたち。かっこいい武者絵だ

そして、大きいなあ!

日の沈む頃。大きな太鼓とともに。堪らない

ねぷたの明かりに惹き込まれる

夏はまだまだ終わらない

かっこいいなあ

勢いよくぐるっと回転だ

弘前が一段と好きになった
弘前ねぷたの掛け声は、「やーやどー!」だ。青森の「ラッセラー!」とも、五所川原の「やってまれ!」とも違う。そして、これらの掛け声はいずれも「返事」で成り立っているのだと思った。練り歩く人たちが使う言葉ではあるが、観客だって、同じ言葉でレスポンスできるのだ。行列の人たちが観客に狙いを定めて「やーやどー!」を求めたときも、その相手がノリノリだったら「やーやどー!!」と溌剌と返す。互いに気持ちがいいし、そうした駆け引きを覚えた行列の小中学生もいて、ちょっとだけ照れながら、イタズラするみたいに大人に「やーやどー!」と大声で誘って、よっしゃわかった! と応える大人の構図も、いいなあとすごく思った。
あと、扇型だけではなく、万華鏡がぐるぐる回転する山車や、アーティストのライブみたいに白煙が出てくる山車もあった。ぼくはそれを見て、すごいなあとか面白いなあとか、簡単な感想を持つことはできるけれど、でも地元の方々は、もっと細かく「どの山車がどうだった」と、ほんとうは見ていたりするのだろうと思った。毎年祭りがあって、「今年はどうだった」と話せる部分があって、また次のハレの日も待ち遠しくなる。ハレとケは概念だけれど、きっと生きている。
夏の時期に、青森県に来られたのは旅の偶然だった。ほんとうにありがたい機会をもらったなあと、つくづく感謝の気持ちでいっぱいだ。
(仁科勝介)
仁科勝介(Katsusuke Nishina にしなかつすけ)/かつお
写真家として活動。1996年、岡山県倉敷市生まれ。広島大学在学中に、日本の全1741の市町村を巡る。
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)、『環遊日本摩托車日記(翻訳|邱香凝氏)』(日出出版)をはじめ、2022年には『どこで暮らしても』(自費出版)を刊行。
旧市町村一周の旅『ふるさとの手帖』:https://katsuo247.jp
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