
北海道羅臼町は、世界自然遺産・知床を有する自治体として自然と共に歩む取り組みを重ねてきており、3月に「羅臼町ネイチャーポジティブ宣言」を発出している。
2025年度には、エア・ウォーター北海道の寄付事業「ふるさと応援Hプログラム」を活用し、エア・ウォーター・ライフソリューションからの寄付のもと、海中ゴミ回収事業を実施した。
事業の背景と目的
知床の海では、流氷がもたらす恵みを基礎とした食物網により、多種多様な生き物が暮らしている。世界自然遺産に登録された際にも、海の豊かさは高く評価されたそう。
海中に放棄された漁網などは、ゴーストフィッシングという漁業を目的としたものではなく、意図せず生物が網などに絡まって死んでしまう状態を引き起こすため、世界中で問題となっている。
町内のダイビング事業者である知床ダイビング企画では、2013年頃から業務の合間を活用し、ボランティアで海中ゴミの回収に取り組んできた。今回の事業は、知床ダイビング企画のこれまでの取組実績も活用し、同社と羅臼町の連携・協力のもと実施された。
この事業は、時化や流氷などによりやむを得ず流出してしまった海中の漁網などを回収することで、世界遺産でもある羅臼の海の環境を守るとともに、漁網などの回収のダイビングツアー化により継続的な取り組みを目指している。
海中ゴミの回収作業と結果

回収作業の様子
海中ゴミの回収作業は、2025年6月から11月にかけて実施された。3名のダイバーが潜水し、ゴミの状況を確認したうえで、手作業で回収。

羅臼漁業挙動組合の協力による回収
大型のゴミの回収は、羅臼漁業協同組合の指導船の協力により行われた。また、北海道内外からダイビングツアーに参加した人、計8名も回収作業を手伝ったという。
合計16回の回収作業が行われ、計1,276kgのゴミを回収。大部分は漁網やロープといった漁業系のゴミであり、缶類や粗大ゴミは少量だったそう。
松法漁港では934㎏、知円別漁港では257㎏、ルサ川河口では35㎏、瀬石では25㎏、相泊漁港では25㎏の海中ゴミが回収された。

漁網に絡まったエゾメバル
漁網に絡まっていた生物としては、ウニ類やカニ類、ギンポ類などが見られ、死んでしまっているものも多かったという。
また、漁網に絡まった魚などを食べるために潜ってきた鳥類が漁網に絡まり、溺水していることも確認されたようだ。
今後の予定
羅臼町と知床ダイビング企画は、引き続き豊かな海を守る活動を続けていく考えだ。

知床ダイビング企画は、「根室海峡を含む知床周辺の海は流氷の恵みを受け様々な生物が暮らしています。年間の水温変化が20度以上と大きいため多くの種類が入れ替わりで現れ、漁業・観光ともにその恩恵を受けています。また、シロザケやカラフトマスの遡上による陸地への還元もあり、海と陸が非常に深く繋がっている環境です。
水中は陸上とは違いなかなか皆さんの目に触れることがないため意識されにくい環境ですが、海の中にゴミが増えてしまうことで海草の生育に影響したり魚類がゴーストトラップの被害にあったりと、間接的に人間にも影響してきます。今回行った事業でもそういった状況を目にすることもあり、改めて環境維持の重要性を確認しました。
こうした状況を踏まえ2025年には一般のダイバーの方にも作業に参加していただいたところ、『普段見ることのない海中ゴミを見て、環境問題への意識を改めた。』、『また同じような作業をしたい。』といった声をいただきました。これを受け今後もより多くの方にお手伝いいただき、知床の素晴らしい水中世界をより堪能していただきたいと考えています。(一部抜粋)」とコメントしている。
羅臼町での豊かな海を守るための取り組みに注目してみては。
(Higuchi)