単身の生活困窮世帯は総務省家計調査より通信費が69%高い調査結果も。NPO日本もったいない食品センター調べ。
日本もったいない食品センターは食品ロス削減と生活困窮者支援活動をおこなうNPO法人で、その活動原資の獲得や支援活動ハブ拠点の拡大として小売店「食品ロス削減ショップecoeat」を日本各地で運営するとともに、ウェブサイトから希望される方を対象に食料品を無償で配送または店頭で受取できる食料品支援を実施しています。2017年2月法人認可後よりこの活動を継続的に実施し、支援を申請される方は日々増加を続け2024年3月より集計を開始しました。
当団体のウェブサイトは「食品ロス 無料配布」や「食料 無料でもらえる」「食料支援」「生活困窮者 食料支援」「食料支援受けるには」「食べるものが無い 支援」「食べ物 無料配布」といったキーワードでGoogle検索時に1番目または2番目に位置することや、支援方法についても地域を限定せず「配送」という手段が可能なことからネット検索のチャネルでは食料品の支援を申請する件数としては規模が大きく、自治体の方々にもご参考にしていただけるものと推察します。
この度のレポートは2024年3月1日~2024年8月31日までの6か月間に当団体のウェブサイト(https://www.mottainai-shokuhin-center.org/support/)より生活困窮による理由で食料品支援を応募された個人の方の全1812件のご申告を集計したものになります。
支援を要請された方の居住地
当NPO法人の活動拠点である大阪では「ecoeat」が多く出店していることや認知度の高さも関係しているためか多くの要請を受け付けております。それとは別に八地方区分別の人口割合よりも多くの申請を受け付けたのが関東で、関東での食料品の支援の必要性の高さが窺える結果となっております。
世帯人数のご申告
全体の60%が単身世帯であるが、四人以上世帯の分布にも注目したい結果となっております。総務省統計局世帯人員別世帯分布では五人以上世帯は四人世帯の40%の世帯数となっておりますが、食料品の支援を要請される世帯では五人以上世帯は四人世帯の87%の世帯数となっております。これは世帯人数が五人を超えると生活に困窮する確率が高まることを意味していると考えられます。
二人以上世帯の内、ひとり親家庭の割合
二人以上世帯の723件の内、57.3%がひとり親家庭であることをご申告されています。
これは全体の内22.8%に相当する割合です。
自身の障がいまたは家族の介護を要する世帯
ご自身に身体または精神の障がいを抱えていらっしゃるご申告や同居家族の介護、またはその両方の事由によって思うように就業ができないという申告も多く、全体1809件中で見ると428件(23.6%)が該当しました。
※ 特別障がい害者手当や心身障がい者福祉手当、障がい児福祉手当、障がい者年金等を収入申告に含めた方や障がい者手帳が発行されている旨を記載された方、同居家族の介護をしている旨を記載された方、具体的傷病名とともに就労ができないまたは止められている旨を記載された方を含んでおります。
食料品支援を申請される世帯
以上により生活に困窮され、食料品の支援を申請される世帯を大別すると以下の3つの分類となると考えております。
- 単身世帯:全体の60%
- ひとり親家庭:全体の22.8%で、二人以上世帯の57.3%
- 自身の障がいまたは家族の介護を要する世帯:全体の23.6%
※単身世帯とひとり親家庭は互いに両立しえない要件ですが「自身の障がいまたは家族の介護を要する世帯」は単身世帯にもひとり親家庭にも該当しうる要件のため、注意が必要です。
申請者の年齢分布
全体の60%である単身世帯の年齢分布で60%を超えているのは18歳~30歳と56歳以上で、31歳~55歳の年代では60%未満となっています。36歳~45歳の年代では単身世帯よりもひとり親家庭からの申請が上回っており、この年代では390件中170件、43%がひとり親家庭からの申請となっています。
収入有無のご申告
全体1812件中の32.4%が収入が無いと申告されており、その内容としては事故や傷病・障がいによって就労が困難であることや精神的な罹患によって外出が困難であることにより、生活保護を申請中であるなどが見受けられる結果でした。
収入が有るとご申告された方は全体の67.6%で平均は143,917円の収入申告でした。
その内、単身世帯の平均収入は116,538円。
ひとり親家庭の平均収入は166,750円。
自身の障がいまたは家族の介護を要する世帯の平均収入は141,924円でした。
※30万円以上の収入申告がある家庭の中にはひとり親且つ多子世帯で特別児童扶養手当の支給がある例などを含みます。
支出のご申告
食費・光熱費・通信費・住居費の平均支出を合計すると
- 単身世帯の平均的な支出は94,300円。
- ひとり親家庭の平均的な支出は118,057円。
- 自身の障がいまたは家族の介護を要する世帯の平均的な支出は106,810円
という結果となりました。
食費のご申告
家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要によると単身世帯の食料の消費支出が46,391円(食料品支援要請者の単身世帯の平均は24,444円)、二人以上の世帯の食料の消費支出が86,554円(食料品支援要請者のひとり親家庭の平均は32,664円)と、食費においては食料品支援を要請される方と全国平均の支出額の乖離が大きいように思われます。
光熱費
家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要によると単身世帯の光熱・水道の消費支出が13,045円(食料品支援要請者の単身世帯の平均は14,098円)、二人以上の世帯の光熱・水道の消費支出が23,855円(食料品支援要請者のひとり親家庭の平均は22,297円)、となっており、光熱費においては全国平均に近い支出額となっています。
通信費
総務省家計調査2023単身世帯、総務省家計調査2023二人以上の世帯によると単身世帯の通信費の消費支出が6,610円(食料品支援要請者の単身世帯の平均は11,230円)、二人以上の世帯の通信費の消費支出が12,195円(食料品支援要請者のひとり親家庭の平均は14,851円)となっており、通信費においては二人以上の世帯は食料品支援を要請される方が若干高い支出額ですが全国平均に近い支出額と言えます。しかし、単身世帯においては食料品支援を要請される方が全国平均より69%通信費が高い結果となっています。
住居費
家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要によると単身世帯の住居費の消費支出が23,815円(食料品支援要請者の単身世帯の平均は44,528円)、二人以上の世帯の住居費の消費支出が18,013円(食料品支援要請者のひとり親家庭の平均は48,244円)で、家計調査平均より高い住居費であると言えますがこれは多方面で指摘されているように実態とかけ離れた印象を持つ数字です。
当NPO法人へのご申告においても生活保護の住宅扶助と相殺して住居費無しと申告される例もありますので平均値においては住居費無しを含まない数値で計算しています。
ほぼどのような世帯構成においても近似的な平均支出額となっています。
生活困窮者の生計を立て直す支援
当団体は「地域の食品ロスゼロ」と「地域の食に関する困窮ゼロ」(当団体呼称:ゼロゼロ活動)を目指して活動しております。
食料品支援においては全要請に対して支援を実行できるわけでありません。
ヒアリングや審査を経て実行可否を判断するものになりますが、当団体で実施している支援は食料品の配送または手渡しという方法によるもので、一時的な支援の意味合いが強く抜本的な解決には結びつかないケースがほとんどです。例えば単身世帯の通信費は11,230円と総務省家計調査(6,610円)より4,620円高いですが、平均的な水準へ節約することができれば食費に充当できるため、1週分の食料品支援を申請する必要が無くなるケースが出てきます。
本来はこのようなライフスタイルの改善が伴うことが望ましいため、地方自治体や企業とタッグを組んで生活支援に取り組んで生活を立て直すことができればと考え、ともにゼロゼロ活動に取り組んでくださる地方自治体を募集しています。