~性教育と緊急避妊薬に関する全国5000人意識調査結果~
NPO法人ピルコンは、公益財団法人ジョイセフの協力のもと、全国の10代~60代の男女5000人を対象に実施した「性教育と緊急避妊薬に関する意識調査レポート」を発表いたしました。その結果、学校での性教育内容と学習者が求める知識のギャップや、性に関する相談先がなく孤立する若者の存在、緊急避妊薬の薬局販売に対する周知不足とより早期の性教育への期待など、日本の性教育を取り巻く課題が浮き彫りになりました。また、3月11日開催のオンラインイベント「性教育の『これから』を考える 2025年度活動報告会」にて、調査結果の発表も行う予定です。ぜひご参加ください。

■調査概要
PDFリンク:https://x.gd/tZawM
実施期間: 2026年1月26日(月)~2月2日(月)
実施方法:Webアンケート調査
対象者: 全国の10代~60代男女(高校生・大学生含む)
有効回答数:5,000名
調査主体:NPO法人ピルコン
調査協力会社:株式会社クロス・マーケティング
協力:公益財団法人ジョイセフ
更に、若者世代(15歳~24歳)、保護者(子ども有)に分けて全体との比較分析を行いました。
■調査結果トピックス
1. 学校での性教育の受講実態とニーズのギャップ
「性教育を受けた」のは約4割。学んだ内容は「体の変化・思春期」が中心だが、保護者の約8割が中学校までに「避妊」、「性的同意・性暴力」など幅広い学習を始めるのが適切と回答。
2. 性の信頼できる情報源や相談先の不足
情報源としてインターネットがトップだが、信頼できる情報源や相談先は「特になし」が最多。
3. 「はどめ規定」「包括的性教育」に関する意識
言葉の認知度は低いものの、制限より充実を求める声が大きく上回る。
4. 緊急避妊薬の周知・提供の課題
2026年からの薬局販売開始についての認知は約4割。性教育を含めた周知が急務。
■調査結果から見えてきたこと
1. 学校における性教育の受講実態とニーズのギャップ
性教育の受講経験と満足度
学校で性教育を受けた割合は全体で40.7%、若者世代では59.2%に達しており、世代間で経験差があることが分かりました。学習内容に「満足・計」の割合は、全体で18.0%に留まる一方、若者世代では「満足・計」が35.9%と増え、一定改善を評価していることがうかがえるものの、「どちらとも言えない」(46.3%)が約半数、「不満・計」が17.7%となり、教育内容や制度設計に改善の余地が大きいことが示唆されました。
●設問:学校で性教育を受けた記憶はありますか?

●設問:学んだ内容に満足していますか?

学んだ内容とニーズ
学んだ内容は「体の変化・思春期」(59.3%)が中心ですが、当時もっと知りたかった内容として「避妊」(16.2%)や「妊娠・出産」(14.2%)、今、重要だと思う内容として「避妊」(24.3%)と「妊娠・出産」(17.4%)の他、「性的同意・性暴力」(14.9%)が挙がっており 、学習者のニーズと実施内容にギャップが存在していました。若者世代でも、保護者層でもほぼ同様のニーズがあり、学校教育がいまだにこれらの項目において十分に応えきれていない実態が明らかとなっています。
●設問:次の項目について、(1)学校で学んだ内容(2)もっと知りたかった内容(最大上位3つ)(3)今、重要だと思う内容(最大上位3つ)それぞれ当てはまるものを選んでください。

性教育開始に適切だと思う時期
「避妊」「性的同意・性暴力」「ジェンダー平等」「性の多様性」など、全12項目において約7割が小学校・中学校までの開始が適切と回答がありました。特に、「妊娠・出産」「避妊」や「性的同意・性暴力」は中学生からの開始を支持する声が約4割と最多で 、小学校からの実施を求める声も約3割となりました。
さらに、保護者層では、より早期の性教育を求める傾向があり、約8~9割が「妊娠・出産」、「避妊」、「性的同意・性暴力」を含む幅広い性教育を中学校までに教え始めるのが適切と回答がありました。
●設問:次の内容について、「教え始めるのに適切だと思う時期」をそれぞれ1つ選んでください。

●設問:次の内容について、「教え始めるのに適切だと思う時期」をそれぞれ1つ選んでください。/妊娠・出産

●設問:次の内容について、「教え始めるのに適切だと思う時期」をそれぞれ1つ選んでください。/避妊

●設問:次の内容について、「教え始めるのに適切だと思う時期」をそれぞれ1つ選んでください。/性的同意・性暴力

また、インターネット・スマートフォン使用の低年齢化を背景に「インターネットの使い方」については過半数(53.5%)が小学校からの指導を求めており 、特に女性保護者の6割以上が早期のリテラシー教育を望んでいると明らかになりました。
性教育がなかったことによる影響については、「不安だった」(23.7%)「どうしたらいいのか分からないことがあった」(17.0%)など、不安や戸惑いにつながったという回答も一定数ありました。
自由記述では、
「避妊の大切さや命の尊さ、ジェンダー平等などを十分に学べた」(16歳・女性)
など、若者世代では性教育を評価する声もあった一方で、
「人の身体のことについて解説されただけで、それに対する向き合い方などの指導はなかった」(15歳・男性)
「人生に関わる大事な内容なのに、教えられた内容が薄すぎる」(16歳・女性)
「将来の役に何も立っていない、タブー視されている感じも理解できない」(27歳・男性)
と不足を指摘する声もあり、性教育の実施状況に学校や教員によるバラつきがあることが推察されます。
また、保護者からは、
「中学生の時にはすでに初潮から2年経っており、小学生のうちに学びたかった」(44歳・女性・保護者)
「繊細なところだけど恐れず繰り返し教育の場面、回数を増やして欲しい。1回程度じゃ意味ないから」(46歳・男性・保護者)
などの充実を求める声がありました。
2. 性の信頼できる情報源や相談先の不足
性に関する情報源
全体では「インターネット」(42.4%)が最多となり、次いで「特になし」(33.4%)、学校・教員(15.9%)と続きました。インターネット上の性情報に関して、「自分が知りたいことを調べるだけだから、本当に大切なことが調べられているか分からない」(21歳・女性)といった、情報の取捨選択や正確性に対する不安の声が寄せられました。
若者世代では、全体と比較して「SNS」(30.6%)「学校・教員」(28.0%)がより高く、特に「学校・教員」は信頼できる情報源としても16.9%と全体より高い値となり、学校での性教育の充実が信頼できる情報を得られる機会につながることが示唆されました。
●設問:性に関する情報の入手先を教えてください。(複数回答可)

●設問:先の問いで選択したうち、最も信頼する情報源を1つ選んでください。

性に関する相談先
全体では「特になし」(63.5%)が最も多く、学校は3.6%、医療機関は6.5%にとどまりました。若者世代でも「特になし」(58.7%)が最も多く、続く「友人・先輩」では13.9%にしか満たず、悩みがあっても相談につながることが困難な実態が明らかになりました。
●設問:性に関する相談先を教えてください。(複数回答可)

3. 「はどめ規定」「包括的性教育」に対する意識
はどめ規定の認知・意識
学習指導要領における「はどめ規定」(※1)についての認知率は18.8%にとどまった一方で、「必要な教育を妨げている」(21.6%)と「制限は一部残しつつ、性交・避妊は教えるべき」(33.5%)を合わせると過半数がより踏み込んだ教育を求めており、「制限が必要」と答えたのは7.8%でした。
※1 はどめ規定:学校の教育内容について定める「学習指導要領」における「妊娠の経過は取り扱わないものとする」等の、性に関する学習内容を制限する規定。
●設問:はどめ規定について、あなたの考えに近いものを選んでください。

包括的性教育の認知・意識
包括的性教育(※2)の認知率は27.6%でしたが、若者世代の認知率は32.0%で、ややその他の世代より上回る傾向にありました。包括的性教育のイメージについては、「重要である」(42.8%)がもっとも高く、「役に立つ」(29.6%)、「身近なものである」(27.0%)が続き、認知層においては肯定的なイメージが定着していました。
●設問:包括的性教育についてどのようなイメージがありますか?最大3つまで選んでください。

包括的性教育について「知っている」・「なんとなく聞いたことがある」を選択した回答者(n=1,379)
※2 包括的性教育:身体や生殖のしくみだけではなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等、幸福など幅広いテーマを含む教育。
4. 緊急避妊薬の周知・提供の課題
緊急避妊薬の薬局販売開始の認知
2026年2月からの緊急避妊薬の薬局販売について「知っている」(14.1%)「なんとなく聞いたことがある」(25.4%)という回答の計は約4割で、社会的な周知が十分に行き届いていない懸念がありました。若者世代の女性の「認知・計」も43.3%でした。
●設問:緊急避妊薬は、2026年2月頃から一部薬局で処方せんなしでの販売が始まる予定です。このことを知っていましたか?

薬局での購入の際に知りたい情報
薬局での購入に際して知りたい情報として、「販売場所(50.4%)」や「価格(43.5%)」が多く、薬剤師には「簡潔な説明(39.6%)」を求める声が多くありました。
●設問:緊急避妊薬が必要となったとき、入手や使用にあたって知りたいと思うことはありますか?(複数回答可)

●設問:緊急避妊薬を薬局で入手する際に、薬剤師からの説明に関する希望はありますか?(複数回答可)

薬剤師の面前服用については、若者世代の女性においても「必要な措置である」(31.7%)がもっとも高い一方、「心理的抵抗がある」(26.4%)という回答も一定数ありました。
●設問:緊急避妊薬を薬局で入手する際に、薬剤師の面前で服用しなければ購入できませんが、これについてどう思いますか?

確実に入手できる価格
要指導医薬品の緊急避妊薬の希望小売価格は7,000円~7,500円程度ですが、希望する価格については全体で「1,000円未満」(35.0%)が最も高く、「3,000円未満」以下では7割強(72.9%)に達し、実際の販売価格との大きな差が明らかになりました。
●設問:緊急避妊薬がいくらであれば確実に入手できると思いますか?

情報周知の要望
また、情報周知に関する要望については、「コンドームや妊娠検査薬パッケージに案内を入れる」(27.5%)、「学校での性教育の充実」(27.4%)がほぼ同率で高く、商品の購入時や教育現場での周知の必要性が挙げられました。
■NPO法人ピルコン理事長 染矢明日香 コメント

今回の調査では、保護者世代から「自分たちは十分に学べなかった」という切実な声が数多く寄せられました。同時に、若者世代からも、「大切なことだからこそ、きちんと学びたい」という強い要望が示されています。世代を超えて、体系的な性教育を求める声が広がっていることが明らかになりました。
しかし現状では、学校教育における性教育の不足や、いわゆる「はどめ規定」による内容制限のもとで、避妊や妊娠、性的同意といった重要なテーマが十分に扱われていません。その結果、若者が自らの健康や尊厳を守るための知識を得る機会が保障されず、インターネットやSNS上の不確かな情報に頼らざるを得ない状況や、相談先を見つけられず孤立する状況が生まれています。これは個人の問題ではなく、社会の制度設計の課題です。
また、緊急避妊薬の薬局販売が市民の声に後押しされて開始されたことは前進ですが、十分な周知とアクセス改善が伴わなければ、権利としての実効性は保障されません。加えて、政府主導でのプレコンセプションケアが推進される今こそ、人権とジェンダー平等を基盤とした包括的性教育を明確に位置づけていくことが必要です。私たちは、幼少期からの心・体を守る学びと若者の避妊や相談・支援へのアクセス改善とをあわせて両輪で推進することを強く求めます。
■オンラインイベントにて調査結果を報告
3月11日(水)に開催されるオンラインイベント「#ピルコンルーム no.48「性教育の『これから』を考える 2025年度活動報告会」にて、本調査結果と2025年度のNPO法人ピルコンの活動報告会を開催します。
詳細・お申込みはこちら
https://pilconroom48.peatix.com/
■参考1:学習指導要領におけるいわゆる「はどめ規定」について
「はどめ規定」は、小5理科の「人の受精に至る過程は取り扱わない」、中1の保健体育の「妊娠の経過は取り扱わない」とする記載で、1998年度に学習指導要領に盛り込まれました。文部科学省はこれらの内容を一律禁止する趣旨ではないとしていますが、指導の際は、児童生徒の発達段階の考慮、保護者・地域の理解、個別指導と集団指導の区別など多くの条件が課されています。その結果、教育現場では現場ではこの規定が障壁となり、小・中学校における性交や避妊、中絶、性的同意を含む性教育の実施を避ける影響を及ぼしてきました。2026年3月現在、文部科学省の中央教育審議会で次期学習指導要領の見直しが行われています。2025年11月には、「はどめ規定」の撤廃を求める4万筆以上の署名が文部科学省に提出されましたが、未だに具体的な議題には上がっていません。
■参考2:緊急避妊薬の薬局販売開始の現状
2026年2月より全国約8,000店舗の薬局で入手が可能になりましたが、希望小売価格で7,000円~7,500円程度という高価格設定が若年層にとっての経済的障壁となっています。また、薬剤師の目の前で服用する「面前服用」が心理的負担となるケースも多く、地域によるアクセス差や夜間・休日の対応不足といった運用面の課題も残っています。