0.1秒の瞬低による損失をVoLL(Value of Lost Load)で単価化し、レジリエンス投資の優先順位とROI判断を可能にする解説記事を公開。
※本リリースでいう「瞬停・瞬低」は、電気工学分野の標準規格(JIS/IECの電力品質・EMC規格体系)において用いられる
「概して1分を超えない供給電圧の消失・低下」 を指します。
送配電系統の自動再閉路によって短時間で復旧する事象がこれに該当し、0.1秒はその代表的な時間スケールです。
慧通信技術工業株式会社(以下、当社)は、製造業・物流業において瞬低・瞬停などの電源品質低下が
業務停止損害にどの程度影響するかを定量的に評価する新たな取り組みを開始しました。
本取り組みでは、国際的な評価指標であるVoLL(Value of Lost Load)を用い、
停止リスクを単価として可視化することで、BCP/レジリエンス投資の判断に資する情報提供を行います。
・瞬低・瞬停は年に数回発生する統計的事象であり、製造業・物流業では短時間でも生産停止・出荷遅延に連鎖しやすい。
・試算例では、業務停止1時間で損害は100万円超となり、未供給電力量300kWh換算でVoLLは4,548円/kWhに達する。
・VoLLを用いることで、BCP/レジリエンス投資を電気代ではなく停止コストとROIの観点から比較・判断できる。
2026年現在、エネルギー価格の変動や電力需給の不安定さが社会課題となる中、 電力のレジリエンスは「止めない努力」から「止まった場合の損失をどう評価し、どう備えるか」へと論点が移りつつあります。
本記事では、瞬低・瞬停といった短時間の電源イベントが長時間の業務停止に波及する構造を一次データと損失分解で整理し、 停止損失を単価(VoLL)に置き換えることで、BCP/レジリエンス投資をROIと優先順位の観点から判断するための実務フレームを提示しています。
日本の製造現場では、原因不明の再起動や突発的なライン停止による損失が、個別事象として処理され、十分に可視化・共有されてこなかった側面があります。
本来は電力品質の変動に起因する可能性があるにもかかわらず、その影響は「曖昧なリスク」として見過ごされがちでした。
当社の解説記事では、こうした「電力品質による業務停止損失」を国際的な評価指標であるVoLL(Value of Lost Load)を用いて定量的に可視化し、BCP対策における投資基準を明確化する視点を提示しています。これにより、個別最適にとどまらない判断を可能にし、日本の製造業・物流業の持続的な競争力維持に資することを目指しています。
■ 公開記事(本文)
「何も起こらない価値を可視化する」──VoLLという考え方https://www.ieee802.co.jp/articles/article-046-vol.php

可にも起こらない価値を可視化する:VoLL
本記事は、「瞬低は万が一ではなく、統計的に繰り返し起きる事象である」という前提に立ち、現場停止・復旧遅延・再立ち上げロスを含めた“実際の損失”をどう評価するかを整理しています。
「「万が一」とは呼べない、瞬低の発生頻度という視点
業務停止リスクはしばしば「万が一」と表現されます。一般に「万が一」は 1/10,000(0.01%)程度 の確率を指し、「滅多に起きないから深追いしない」という意思決定を誘発しがちです。
しかし、瞬時電圧低下(瞬低)は“まれな事故”というより、一定の頻度で起き得る電源イベントとして扱うほうが実務に合います。
地域差や観測条件はあるものの、文献では次のような傾向が報告されています。
・20%以上の電圧低下を伴う瞬時電圧低下の回数:1年で約5回
・瞬時電圧低下の継続時間:20秒以下が20%以上、36秒以上が10%程度
(引用:社団法人電気協同研究会「電気協同研究」第46巻第3号 平成2年7月)
参考として、年5回を日割り換算すると 5/365 ≒ 1.37%(粗い近似) となり、「万が一(0.01%)」という感覚と比べて桁が異なります。
重要なのは、短い電源イベントが、工程全体の復帰待ちや再立ち上げを通じて長時間の業務停止に波及する構造が存在する点です。
これは、PLC・制御装置・搬送設備・倉庫システム・通信機器に影響を与える時間帯が、統計的に存在することを意味します。
製造業・物流業での試算例 ──「1時間止まるだけ」で何が起きるか
当社では、過去記事および自社シミュレーターを用い、瞬低・瞬停による業務停止損害を可視化しています。例えば、製造業・物流業を想定し、以下の条件で試算した場合、
- 売上高:20億円
- 社員数:50名
- 影響時間:1時間
- 対応費用:30万円
当社シミュレーターでは、1,364,396円の損害が発生すると算定されます。
(参考:災害・停止影響シミュレーション解説記事)
https://www.ieee802.co.jp/articles/article-014-disaster_simulation.php
この損失には、生産・出荷停止による機会損失、人件費・固定費の空転、再立ち上げ・段取り直しのロスといった、製造業・物流業特有の影響が含まれています。

VoLLシミュレーターによる可視化
VoLLで見ると、停止リスクの「重さ」が変わる
同条件を電力量ベースで整理すると、受電設備500kVA、負荷率60%、停止時間60分の場合、未供給電力量は 300kWh となります。
これに基づく VoLL(Value of Lost Load)は 4,548円/kWh です。
(BCP影響可視化シミュレーター)
https://www.ieee802.co.jp/PPBB/
これは、一般的な電力単価(20~30円/kWh)を桁違いに上回る水準であり、「電気代」ではなく「停止コスト」でBCP投資を判断すべき理由を明確に示しています。
本記事が意図すること
製造業・物流業では、短時間の電源品質低下が、長時間の業務停止に連鎖するケースが少なくありません。それにもかかわらず、多くの対策は初期費用や電気代削減といった観点で評価されがちです。
本記事および関連する解説では、停止リスクを単価化し、UPS・冗長化・運用改善を横並びで比較するための視点を提供しています。