日本企業就職を希望するASEAN学生の意識調査
株式会社エナジャイズ(本社:東京都新宿区、代表取締役:尾崎太朗)は、2026年2月、シンガポールにて、日本企業への就職を希望するASEANの大学・大学院生と日本企業の採用マッチングを目的とした就職フェア「ASEAN CAREER FAIR with JAPAN 2026」(以下ACF)を開催しました。同フェア参加者を対象に実施した調査の結果、日本企業をキャリアの選択肢として検討するASEAN学生の約8割が、「給与」よりも「国際的なキャリア形成機会」を重視していることが明らかになりました。
円安や物価上昇が続く中、「日本は外国人材から選ばれにくくなっている」との見方もあります。しかし本調査では、日本企業は「高賃金の国」というよりも、「将来の市場価値を高めるキャリア形成の場」として認識されている実態が示されました。
【調査概要】
・対象:ACF参加者
日本企業への就職を希望するシンガポール・インドネシア・マレーシア・タイ・フィリピン・ベトナムなどASEAN諸国の大学生・大学院生686名
・回答数:285名(回答率41.5%)
・実施日:2026年2月7日
・方法:Google Formによるアンケート調査
・調査テーマ:就職意思決定要因の優先順位、円安環境下での志望動機、将来キャリア志向
【調査結果ポイント】
・円安環境下でも、日本企業志望者の80.7%が「給与」より「国際的キャリア形成」を重視
・一般企業選択では「給与」(61.4%)が最重要であるにもかかわらず、
日本企業文脈では成長要素が上位
・給与が同等であれば、働きたい国として「日本」を選ぶ学生が最多で約半数
・約6割が長期勤務志向
【質問詳細】
質問:日本企業を志望する理由は何ですか?(選択式)

最多は「国際的なキャリア形成機会(80.7%)」でした。一方で給与は36.1%にとどまっています。
この結果は、日本が「短期的な収入を得る場所」ではなく、「将来の市場価値を高める場所」として認識されていることを示唆しています。特に「技術習得」や「研修制度」への評価が高く、日本企業の比較優位が人的資本形成に
あることが明確になりました。
質問:現在の円安や物価上昇にもかかわらず、日本企業をキャリア形成の選択肢にする理由は?
(選択式)

為替環境が日本にとって不利とされる状況下でも、学生の意思決定軸は大きく変わっていません。
給与水準そのものよりも、「成長機会」「経験価値」が優先されていることが確認されました。
これは、日本での就業を短期的な収入確保の手段ではなく、将来のキャリア形成につながる重要な経験と位置づけていることを示しています。
質問:給与が同じであれば、どの国・地域で働きたいですか?(選択式)

給与条件を均衡させると、日本が最多選択となりました。
これは、賃金以外の要素において日本が強い魅力を持っていることを示しています。この回答からも、日本企業は給与競争ではなく、価値競争で優位性を持っていることが裏付けられます。
質問:日本での就業経験は将来のキャリアにどのように役立つと思いますか?(選択式)

日本での経験は、国際市場での競争力を高める資産として認識されています。
特に「信頼性・勤勉性」という回答から、日本的労働文化が信用資本として評価されていることがわかります。
質問:企業を選ぶ際に最も重要な要素は何ですか?(3つ選択)

一般的な企業選択に関する設問では、「給与」(61.4%)が最重要項目として挙げられました。
しかし、日本企業を志望する文脈においては、「技術習得」「研修制度」「昇進機会」といった成長要素が上位に位置しています。この差異は、日本企業に対しては短期的報酬よりも、長期的な能力形成への期待が強いことを示しています。
質問:将来について、どちらがご自身に近いですか?
質問:数年後に転職する予定ですか、
それとも同じ会社で長く働きたいですか?

将来的に働く国に強い固定志向はない一方で、
約6割が同じ企業で長期的に働くことを希望して
います。
明確な昇進機会や継続的な成長機会が提示さ
れれば、日本企業における定着可能性は十分に
あると考えられます。
質問:最も働きたいと選んだ企業の強みは何ですか?(3つ選択)

ここでも「昇進機会」が最多となりました。
給与も重要な要素ではあるものの、最終的な評価軸は「成長可能性」に置かれていることが一貫して確認されました。
質問:日本が国際人材にとって魅力的であり続けるために必要なことは何だと思いますか?(自由記述)
<主な意見>
・多様性の推進、ムスリムへの配慮など外国人受入れ環境の整備
・補完要員ではなく、長期的に会社に貢献する人材として受け入れる姿勢
・英語対応の強化
・明確なキャリアパスの提示
・競争力ある給与水準
・ビザ手続きの簡素化
・メンタルヘルスへの配慮
日本の育成力や技術力への評価は高い一方で、制度面・環境面の整備が今後の課題として挙げられています。特に多文化対応や言語環境の整備が、次の競争力の鍵になると考えられます。
【調査結果分析・コメント】
物価上昇や円安が続く中、日本の国際競争力低下を懸念する声もありますが、統計上は外国人労働者数が増加を続け、過去最高水準を更新しています。本調査は、その背景にあるASEAN若手人財の意思決定の構造を明らかにするものです。
一般的な企業選択では給与が最重要項目(61.4%)となりますが、日本企業を志望する学生は「技術習得」「研修制度」「昇進機会」といった成長機会を重視しており、短期的な給与水準だけで意思決定が左右されているわけではありません。円安など不利な為替環境下でも、日本での就業経験が将来のキャリア形成に資するとの認識が強いことが示されました。
今後、多様性対応や英語環境の整備、明確なキャリアパス設計など制度面の進化が進めば、日本は単なる「人手不足を補う国」ではなく、ASEAN学生が自ら選ぶ「成長拠点」としての地位をさらに強化できる可能性があります。
尾崎 太朗
株式会社エナジャイズ 代表取締役
尾崎 太朗 プロフィール

国境を越えた人財戦略を専門とする実践家。株式会社エナジャイズ代表取締役。2013年より産学連携の「ASEAN CAREER FAIR with JAPAN」を主催し、東南アジアを中心とする若手人財と日系企業を結ぶ越境型キャリアプラットフォームを展開してきた。欧州・アフリカ・南米へも連携を広げ、大学・政府機関・企業が協働する国際人財循環の仕組みづくりに取り組んでいる。海外事業立ち上げ支援やグローバルリーダー育成にも携わり、企業の組織変革を後押し。これまでに世界40ヵ国の大学で講義・講演を行い、労働人口減少時代における戦略的人財マネジメントの重要性について具体的な示唆を提供している。
<ACF>
ACF(ASEAN CAREER FAIR with JAPAN)は、ASEAN地域の若手人材と日本企業・自治体をつなぐことを目的に2013年から毎年開催している国際就職フェアです。大阪大学大学院国際公共政策研究科との連携をきっかけに開始し、これまでに延べ190社の日本企業が参加しています。2026年は2月7日にシンガポール共和国のSingapore EXPOで開催しました。応募者約2,000名のうち事前審査を通過したASEAN各国(シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナムなど)の大学生・大学院生・卒業生686名が来場し、参加者は昨年の592名から増加しました。
<株式会社エナジャイズ>
グローバル化・クロスボーダープロジェクトのハンズオンサポートカンパニーです。企業にあった人財を全世界から発掘する採用活動や、グローバルビジネス強化に向けて、日本人社員だけでなく多国籍人財が活躍できる組織風土を構築するための研修サービスを提供しています。
所在地: 東京都新宿区新宿一丁目18番9号 パディアイルカテリーナビル603
代表者: 代表取締役 尾崎 太朗
設立: 2009年4月
Webサイト: https://www.energize.co.jp/