ACCJによるカーボンフットプリントの算定やリサーチを起点に、荒川ナッシュ医によるクロージング・パフォーマンスを11月に開催
NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT / エイト]が運営するArt Climate Collective Japan(ACCJ)は、第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館(2026)において、荒川ナッシュ医による展覧会「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」にコラボレーターとして参画します。

日本館にて展示される「赤ちゃん」人形を抱いて。 左:塩見有子(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT / エイト]ディレクター)、右:荒川ナッシュ医
ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展は、イタリア・ヴェネチアで開催される世界最大級の現代美術展です。本年の日本館では、アーティストの荒川ナッシュ医、共同キュレーターの高橋瑞木、堀川理沙による展覧会「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」が開催されます。本展では、2024 年に双子の親となった荒川ナッシュ医の経験を起点に、「ケア」という営みを通して未来のあり方を問いかけます。未来の象徴である赤ちゃんを育てる行為を手がかりに、これからの社会や環境について思考する空間が日本館に立ち上がります。
こうした未来志向のテーマに呼応する形で、日本館における環境配慮の取り組みが検討され、展覧会に関わるカーボンフットプリントの算定およびリサーチが実施されることとなりました。本取り組みにおいてACCJがコラボレーターとして参画します。
会場となる日本館は今年で設立から70年の節目となり、昨年2025年には公益財団法人石橋財団の寄付を通じて行われた、建築家・伊東豊雄氏による環境に配慮した改修工事も完了しています。アーティスト、キュレーター、制作スタッフ、コラボレーターからの協力を得ながら、国際展における制作・輸送・設営・運営を含む活動の環境への影響を可視化し、今後の持続可能な展覧会モデルの構築に向けた知見の蓄積を目指します。
カーボンフットプリントの算定・リサーチと芸術実践の接続
今回の取り組みでは、日本館運営に関わる包括的なカーボンフットプリントの算定と分析、さらにヴェネチア・ビエンナーレ全体による環境配慮への取り組みや他国の展示や運営に関するリサーチも検討しています。算定の対象となるのは、作品制作、素材調達、輸送、現地設営、関係者の移動など、多岐にわたるプロセスです。これらを定量的データと定性的な考察の双方から検証し、国際展における環境への影響の実態を可視化します。さらに本取り組みの特徴は、カーボンフットプリントの「算定」にとどまらず、その結果を芸術表現へと接続する点にあります。
ACCJによる算定とリサーチから得られた知見を起点として、荒川ナッシュ医によるクロージング・パフォーマンスが会期最終日となる11月22日に構想されています。本パフォーマンスは、数値やデータとして現れる環境への影響を、参加型の身体的・詩的な経験へと変換する試みであり、気候危機をめぐる認識と感覚のあいだを往還する新たな芸術的実践として位置づけられます。
クラウドファンディングについて
なお荒川ナッシュは現在、展示の記録だけでなく映像作品としても鑑賞できる作品のためにクラウドファンディングを実施しています。ヴェネチアまで訪れることができる人が限られている現実を踏まえ、日本館から発信する新作映像作品を制作し、日本での発表を目指しています。募集期間はまもなく終了です。ご支援についてご検討いただけますと幸いです。
募集期間:2026年4月12日(日)まで
詳細を見る
荒川ナッシュ医 コメント
パフォーマンス・アーティストとしての仕事で、過去20年間、飛行機に乗り続け、一生涯の累計飛行距離が100万マイル(約160万キロ、地球約40周分)を超えました。アートを通して自分が関わる社会を住みやすくしたい、しかしこの矛盾を抱え、わたしには何が出来るのでしょうか?双子には持続可能な未来があるのでしょうか?
日本館のカーボンフットプリント算定は、日本館という国際的な発信の場で、そういうモデルが提示されてもいいのではと思ったからで、小さな一歩です。ACCJの導きで、アートは何が出来るか、2026年11月に、パフォーマンス・アートを通してまずは考えます。

撮影:ricardo nagaoka
荒川ナッシュ医プロフィール1977 年福島県生まれ。日系アメリカ人。アメリカ合衆国ロサンゼルス在住のクィア・パフォーマンス作家。様々な人物との共同作業を続け、「私」という主体を揺るがしながら、アート作品や作家の主観の不確かさをグループ・パフォーマンスとして表現している。ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザイン、大学院アートプログラム教授。近年では、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン、2025 年)、国立新美術館(2024 年)、CHAT センター・フォー・ヘリテージ・アーツ・アンド・テキスタイル(香港、2024 年)、東京都写真美術館(2024 年)、クンストハレ・フリアール・フリブール(2023 年)、ミュゼイオン・ボーツェン(ボルツァーノ、2023 年)、アーティスツ・スペース(ニューヨーク、2021 年)、テート・モダン(ロンドン、2021 年)、ジャン大公近代美術館(ルクセンブルク、2021 年)、ホノルル・ビエンナーレ(2019 年)などの展覧会に参加。
塩見有子(AITディレクター)コメント
この度、ACCJがコラボレーターとして参画できることを、大変意義深く感じています。本取り組みの特徴は、カーボンフットプリントの算定というリサーチを、荒川ナッシュ医の芸術実践へと接続している点にあります。数値として把握される環境への影響が、どのように身体的・感覚的な経験へと変換されうるのか。このプロセスは、アートが気候危機に応答する新たな可能性を示していると言えるでしょう。
日本館チームから得られる知見が、今後の国際展や美術館の実践に広く共有され、日本のアートセクターにおける持続可能な取り組みの一助となることを期待しています。
第 61 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」について
会期:2026 年 5 月 9 日(土)~11 月 22 日(日)
会場:日本館(ビエンナーレ会場 ジャルディーニ地区内)
出品作家:荒川ナッシュ医
共同キュレーター:高橋瑞木(CHAT 香港紡織文化芸術館、館長/チーフ・キュレーター)、堀川理沙(シンガポール国立美術館、シニア・キュレーター/キュレトリアル&コレクション部門部長)
主催/コミッショナー:国際交流基金
日本館公式ウェブサイト:https://venezia-biennale-japan.jpf.go.jp/j/

イサム・ノグチ《オクテトラ》のあるこどもの国にて、横浜、写真:細川葉子
第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展について
会期:2026 年 5 月 9 日(土)~11 月 22 日(日)
会場:ジャルディーニ地区(Giardini di Castello)、アルセナーレ地区(Arsenale)など
制作:ヴェネチア・ビエンナーレ財団
総合テーマ:In Minor Keys/イン・マイナー・キーズ
ウェブサイト:https://www.labiennale.org/en
ヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアの島都市ヴェネチアの市内各所を会場とする芸術の祭典です。1895 年に最初の美術展が開かれて以来、130 年近い歴史を刻んでいます。近年、世界各地で美術を中心に、国際的な芸術祭が開催されるようになってきていますが、ヴェネチア・ビエンナーレはそれらのモデル・ケースとなった最も著名な存在です。「ビエンナーレ」とは「2 年に一度」意味するイタリア語で、同様な芸術祭の多くが「ビエンナーレ」や「トリエンナーレ」(3年に一度)と命名されているのは、ヴェネチア・ビエンナーレに範をとったものとされています。現在、美術展、建築展、音楽祭、映画祭、演劇祭などを独立部門として抱えるようになりましたが、なかでも美術展は、現代の美術の動向を俯瞰できる場として、また国別参加方式を採る数少ない国際展として世界の美術界の注目を集めています。
日本は 1952 年に初めて公式参加を果たし、1956 年に日本館の完成を経て、今日に至るまで毎回参加を継続しています。1976 年からは国際交流基金が日本館展示を主催し、現在に至ります。https://venezia-biennale-japan.jpf.go.jp
アート・クライメイト・コレクティヴ・ジャパン(ACCJ)について
アートセクターの気候危機への意識向上と理解促進、また、その対策における有用なツールやリソースの発信、協働と支援の場を提供することで、アートセクター全体が地球環境に配慮した活動を構築することを目的としている。
運営:特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
https://accj.a-i-t.net/
AITについて
特定非営利活動法人 Arts Initiative Tokyo(AIT)は、2001年に6名のキュレーターとアート・マネジャーによって設立(2002年法人化)。
現代アートを「学び、対話し、思考する」ための場を提供することを目的とし、約20年にわたり教育プログラムや国際交流、企業連携によるアート・プログラムの企画・運営を行う。2021年よりGCCに加盟、2023年から3年連続で「GCCアクティヴ・メンバー」に認定。2024年7月、気候危機とアートのアクションを通して、サステイナブルなアートセクターの構築を目指すプロジェクト「アート・クライメイト・コレクティヴ・ジャパン(ACCJ)」を立ち上げ、環境意識の醸成と具体的行動の推進に取り組んでいる。
http://www.a-i-t.net/ja/
※ギャラリー気候連合(Gallery Climate Coalition)について:2030年までにアートセクターの温室効果ガス排出量を50%削減し、ゼロウェイストの推進を目標に掲げる非営利的な活動を行う国際団体。アクティヴ・メンバーシップ制度は、過去1年間の持続的な環境配慮の実践が認められた個人・団体に毎年与えられる。


AITの気候危機へのアクション実績と今後の予定(一部)
- 2026年7月(予定)ACCJ年刊誌『ARON'S JOURNEY vol.2 』発行
- 2026年4月(予定)「気候危機とアートの勉強会」第10回「エコロジーから読み直す美術史:アーティストは環境危機にどう応答してきたか」(代官山AITルーム)
- 2026年2月 国立アートリサーチセンター(NCAR)主催のシンポジウム「ミュージアムと気候変動 ―サステナブルな未来に向けて」に共催として参画
- 2026年1月 アーツカウンシル東京主催のフォーラム「芸術文化とクライメートアクション~実践から見える未来~」に参加
- 2025年12月 「気候危機とアートの勉強会」第9回開催「2025年の活動と、気候危機とアートの世界の最新ニュースを紹介」(代官山AITルーム)
- 2025年7月 ACCJ年刊誌『ARON'S JOURNEY vol.1 』創刊
- 2025年7月 気候危機に対するアートセクターにおける応答についてのインタビューシリーズを開始
- 2025年6月・7月「気候危機とアートの勉強会」第7・8回開催(ブリティッシュ・カウンシル 神楽坂および、苗穂基地 札幌)
- 2025年4月 マガジンハウス『BRUTUS』特別編集「地球を思い、次世代に繋ぐ仕事集」にてロジャー・マクドナルドと片岡真実氏のインタビューを掲載
- 2025年4月「気候危機とアートの勉強会」第6回開催(TODA BUILDING「APK ROOM」)
- 2024年7月27日 アート・クライメイト・コレクティヴ・ジャパン(ACCJ)開始、特設ウェブサイトを公開
- 2024年7月27日 気候危機とアートのシンポジウム「アートセクターはどのようにアクションを起こせるか」開催(ヒルサイドプラザ、代官山)
- 2024年5月・7月「気候危機とアートの勉強会」第4・5回開催(CADAN有楽町およびAITルーム)
- 2024年2月 「気候危機とアートの勉強会」第3回開催(森美術館、六本木)
- 2024年~ GCCより日本初の「アクティヴ・メンバー」に認定 ※2年連続
- 2023年 GCCによる「非営利団体・公共団体のための、脱炭素アクションプラン」日本語版Ver.1リリース
2021年~ 『ウェブ版美術手帖』「AITブログ」にて気候危機とアートに関するコラムとインタビュー連載・発信継続中
- 2021年~ Gallery Climate Coalition に加盟