保育士不足解消のために必要とされている潜在保育士。潜在保育士の方はなぜ退職し、復帰しないのでしょうか?ほいくみーは弁護士ドットコムと共同で潜在保育士213名の皆さまにアンケートを行いました。
<明日の保育がもっと楽しくなるサイト>をコンセプトにする保育者向けのポータルサイト「ほいくみー」(https://hoiku-me.com)を運営する、株式会社ウェルクス(本社:東京都墨田区両国)は、法律相談サービスを手がける「弁護士ドットコム」(https://www.bengo4.com/topics/)と共同で潜在保育士の復帰についてアンケートを実施いたしました。
潜在保育士213名の回答が集まりました。保育士不足や給料問題に対する潜在保育士のリアルな声がうかがえる内容になっています。
調査の概要(一部)
「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログから待機児童や保育士不足の問題が話題となり、国でもさまざまな対策を考えています。国は、平成29年度までに50万人分の保育士の受け皿を確保するために、約9万人の保育士が必要と試算していますが、保育士資格を保有しながら保育士として働いていない”潜在保育士”は、全国に68万人いると言われています。
◆保育士を退職した理由は「給与への不満」だけではない!
まずは、退職時の年齢を選択形式で回答いただきました。退職時の年齢は「25~29歳(32.9%)」が最も多く、次いで「20~24歳(23.9%)」という結果になっており、結婚や出産などが多くなる時期に増えていると考えられます。

続いて、働いていた期間を選択形式で回答いただきました。最も多い回答は「2~3年(27.2%)」、そして「4~5年(21.1%)」、「1年未満(11.7%)」と60%以上が5年以下で離職していることがわかりました。

退職理由をお聞きしたところ、「給与への不満(63.4%)」が最も多い回答となりましたが、「業務量や残業の多さ(60.1%)」も多く、処遇問題だけではないことがうかがえます。「人間関係」や「プライベートとの両立」も高い数値となり、さまざまな理由が絡み合って退職に至ったと言えるでしょう。

続いて、退職理由の回答の中で最も大きな理由を1つ選んでいただきました。「給与への不満(21.6%)」が上位でしたが、「結婚や妊娠・出産(19.2%)」も多くの回答数がありました。退職した年齢で最も多いのが「25~29歳」ということと照らし合わせると、やはり結婚・妊娠・出産を機に離職している方が多くいると考えられます。

「その他」の回答の一部をご紹介します。
「体調を崩したから退職しました」
「命を預かる責任の重さ、事故への不安から職を離れました」
体調不良で退職したという方もおり、業務量や残業が多く責任感が重いことも関係しているのではないかと考えられます。退職理由の具体的なエピソードもお聞きしました。回答の一部をご紹介します。
「残業して制作物や行事の準備をしているのに自己満足、園長先生の満足にとどまり給料へ反映されない。福祉系の仕事はボランティア精神を持っていると思われタダ働きは当たり前、タダ働きやタダ残業をしてもより良いものを子どもたちに与えられるなら自分を犠牲にしろと叩き込まれている。子どもと遊んでいるわけではなく命を預かっていることをわかっていただきたいです」
「毎日残業、持ち帰りの仕事があり、結婚を機に仕事と家事との両立が難しくなりました。妊娠中、体調を崩しても早退・欠勤は許されず、勤務中破水しても保育士の人数がギリギリだったためすぐに早退できず、結果流産しました」
「保育はチームワーク。しかし、基本女の世界なので妬みあったり、特に私立は長く勤めているから偉いという感じがあったりします。ちゃんと保育を評価してもらいたいです。保育士不足で給料問題についても騒がれていますが、給料の問題だけではないと思います」
◆保育士の給料…月収15万が半数以上!
保育士として働いていた最後の月の月収を選択形式で回答いただきました。「15万円未満(54.5%)」が約半数を占める結果となりました。月収が上がるにつれ回答数が少なくなっており、給料の低さがうかがえます。

◆給料が5万アップしても復職したくない!
今後保育士として復帰したいと考えているかお聞きしたところ、今の状況のままでは「復帰したくない(79.8%)」と考えている方が多くいることがわかりました。

「復帰したくない」と答えた方に復帰したくない理由を選択形式で回答いただきました。「給与が安いから(87.1%)」が最も多い結果となりました。その他の回答の中には「体力への不安」や「命を預かる責任の重さ」などの回答があり、復職のためには”不安”を取り除くための支援も必要だと考えられます。

続いて、月収に5万円上乗せされたら復帰したいと考えられるか訪ねました。5万円の増加では「復帰したくない(76.4%)」と考える方が半数以上いることがわかりました。

月収が10万円アップしたら復職したいと考えるかお聞きしました。月収が5万円増加した場合に復帰したいと答える方は半数以下だったのに対し、10万円増加した場合は「復帰したい(86.5%)」と8割の方が復職を検討することがわかりました。

◆保育士として復職するためには、待遇改善が最も重要
保育士として復職するためには何が必要か選択形式で回答いただきました。「給与アップ(90.6%)」が最も多く、次いで「休日や有給取得の増加(68.5%)」、「事務作業の効率化や削減(64.8%)」という結果になりました。

続いて、復職のために必要なことの中で、最も重要なものは何か1つ回答いただきました。「給与アップ(58.7%)」が半数を占める結果となり、その他の回答の中には「保育士の子どもの保育料無償化」や「保護者対応のサポート」「社会的認知の向上と適正評価」の声があがりました。

「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログをきっかけに保育士の待遇改善についても国は動き出していますが、そのブログをきっかけに保育園問題をめぐる社会の流れは変わると思うかおうかがいしました。「変わる(44.6%)」に対し、「いいえ(52.6%)」と半数以上が悲観的な考えを示していました。

◆潜在保育士の切実な訴え
待機児童や保育士不足の問題を解決するためには何が必要か自由回答でおうかがいしました。回答の一部をご紹介します。
「本来、乳児期の子どもは母のもとで愛情を注がれながら育てられるべきで保育園をたくさん作り、保育士を確保すればいいという問題ではないような気がします。働く母が育休を取得でき、我が子の育児に専念できる期間をもっと保証するべきだと思います。そして、その期間の育児手当を支給してほしい。こういった政策が進めば、待機児童は減り保育士不足もなくなり、人口現象に歯止めをかけることにつながるのではないでしょうか?」
「本当に国がどうにかしようと思っていても今のままでは経営者が喜ぶだけで、保育士の条件は変わらない。給料だけに注目していますが有給を取らないといけない制度をもっと強制化や産休育休の見直し、残業費を出すなど環境面で配慮していただかないことには無駄。保育園にじゃなくもっと保育士だけに目を向け援助を考えて欲しいです」
◆潜在保育士の今!
待遇の低さや人間関係、福利厚生が不十分など、さまざまな理由で退職された保育士の皆さま。退職後はどのような仕事をされているのかお聞きしました。
最も多かった回答は「専業主婦(30.5%)」。やはり、結婚や出産を機に退職される方も多いと言えるでしょう。次いで「その他(27.7%)」となりました。
「その他」の中でも多かった職業は「幼児教室講師」や「幼稚園などのプレスクールの先生」「保育園以外の子育て支援事業」などの子どもと関わりがある仕事です。他には「サービス業」や「休職中」などの回答がありました。

保育士の職を離れても、幼稚園教諭やベビーシッター、幼児教室講師など子どもと関わる仕事に就く方も多いことがわかります。保育士の待遇改善はもちろん、職場の働き方や人間関係なども改善され働きやすい環境が整えば、復職を考える方が増えるのではないでしょうか?
記事に関する詳細
【表題】「5万円の給料アップでも復職したくない!」約8割<潜在保育士のホンネ>
【URL】https://hoiku-me.com/other/nurture-news/28446/
アンケート調査概要
・実施期間2016年4月1日~4月5日
・回答者数:213人
・年齢:18~19歳(0.5%)・20~24歳(8.5%)・25~29歳(27.7%)・30~34歳(23.5%)・35~39歳(15.0%)・40~44歳(13.1%)・45歳以上(11.7%)
・男女割合:女性(95.3%)・男性(3.3%)・不明(1.4%)
■ほいくみーとは
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