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フューチャーアーキテクト株式会社

イノベーションと多様性-Who is least like me? 横河電機株式会社の取組み

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イノベーションワークショップ2014 「グローバル競争を勝ち抜く企業経営~変革への挑戦」第2回開催

フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、10月23日にイノベーションワークショップ2014の第2回を開催しました。本ワークショップは次世代リーダーの育成と業界を超えた企業同士の交流を深める場として2007年にスタートしました。本年は、「グローバル競争を勝ち抜く企業経営」をテーマに全4回をつうじ、グローバル企業のビジネスモデルや人材、ITの活用事例などを学び、議論を重ねています。
第2回では「イノベーションと多様性-Who is least like me?」と題し、横河電機株式会社が取り組んでいる未来志向で新しいアイデアを創造するための試みをご紹介いただきました。また参加者は「バックキャスティング」という手法を用い「2025年の日本の未来」について討議しました。

【開催概要】
 講演者:横河電機株式会社 イノベーション本部 研究・事業開発センター
     組織学習イニシアチブ シニアマネージャ 伊原木正裕
 テーマ:イノベーションと多様性-Who is least like me?
 コーディネーター:明治大学 経営学部 教授 大石芳裕
 日 時: 2014年10月23日(木) 18:00 ~ 20:35
 会 場: フューチャーアーキテクト株式会社(東京都品川区)

【講演概要】
横河電機グループは海外売上比率が約7割、海外社員比率が5割以上を占める多国籍企業である。同社の研究開発部門であるイノベーション本部は今春から組織がフラット化され、技術者は自らのアイデンティティを持ったイントレプレナーとして事業創造が求められている。同本部の10年を振り返り見えてきた課題をもとに、現在は社員一人ひとりが未来志向で新しいアイデアを創造するための「場」を世界中で企画し、イノベーションを生み出すためのチャレンジを続けている。

◆研究部門のミッションと課題
2015年に100周年を迎える横河電機は7割の海外売上比率をもつ多国籍企業である。石油プラントのコントロールシステムを基幹としたメーカーであり、トラブルが発生すれば影響が甚大なため、何よりも「信頼性」に重きを置く社風がある。しかし、現在は信頼性を重視して「安定」を求めるだけでなく、果敢に未来を攻めるイノベーターとしてのスタンスも要求されるようになった。また、研究機関であるイノベーション本部は、開発した技術を事業化提案にまで持っていくことをミッションとしている。研究者には事業を興すというビジネス感覚や能力も求められ、未来の変革をいかに先取りし、どう手を打つべきかを常に考えながら新しい事業の創造に取り組まなければならず、私は研究開発部門でイノベーションを起こすには何か意図的な仕掛けが必要だと考えた。

◆イノベーションに向けた10年の取り組み
イノベーションを起こすために、研究開発部門がこの10年間に実施してきたことを振り返る。2005年当時はビジョンや具体的な目標がトップダウンで設定共有されていたため、現場にはその目標に向かって走ることが要求されていた。しかし2009年にリーダーが交代し、メンバー各々が「研究意義と出口戦略は何か?」という問いに直面する。組織としても経営企画部とともにシナリオプランニングを開始し、展望した未来からバックキャストして研究の在り方をとらえようとした。当初のシナリオは「環境保全の気運」を縦軸、「顧客の利益の源泉の比重」を横軸に据え、未来を4つの世界観に分解するものになった。そのアウトプットを元に、研究部門では各事象を深掘りし、さらに組織横断のプロジェクトでシナリオごとに英国、米国、インドの3ヵ国でワークショップを開催して、より深い洞察を得た。また2025年のビジネス誌を作成するなど工夫を凝らし、未来に対する自分たちの行動についても議論した。この一連の活動の成果をWhite Paper(白書)にして公開すると、新規のお客様から「こんなことも考えているのか」という大きな反響を得ることができた。2012年以降は現場が主導となり、「組織改革」にも着手している。20回を超えるワークショップと数度の幹部合宿を行い、自身の在り方と組織改革について考え抜いた。今春から実施しているイノベーション本部の組織のフラット化もこの議論を踏まえてのものだ。
このように「トップダウン」「ミドルアップ/ダウン」「ボトムアップ」の段階を経て、アイデンティティの確立と意識改革に取り組んできたが、イノベーションを起こそうとする上で大切なのは「多様性」であると強く思う。異なる考えをもった人びとが集まれば意見はまとまりにくいが、これまでにない新しい発想も生まれる。ある研究では、多様性が高まればイノベーションの平均的な価値は下がっていくが、一方で突出したイノベーションが生まれ得ることが示されている。これが多様性のパワーである。また場所(環境)の選定も成否のカギを握る。あるワークショップでは、270度のパノラマ画面に全チームのノートパソコンをつなぎ、各チームの様子をリアルタイムで中継することで、検討過程での多様な視点の取り込みと議論の大幅なスピードアップを可能にした。いつもの会議室とは違う環境が参加者の新たな発想を促すのだ。

◆イノベーションを起こすために必要なこと
同じ企業に長く勤めていると、たとえ職種が違っても同じDNAになってしまう。同質のものからイノベーションは生まれにくい。だからこそ外部のネットワークも積極的に活用して、自分たちと異なるDNAを持つ者と仕事をすることが重要だと考えている。またイノベーションのプロセスを複数の企業と研究したところ、各社とも非常に強く感じていたのは「もはや個社で課題を解決している場合ではない」という共通の問題意識だった。社外のネットワークを使って自身がやりたいことの実現に動いているイントレプレナーは、どの企業にも必ずいる。これからはそういう人たちの企業クラスタを構成し、さらにそのクラスタを接続したネットワークを構築することで、多様な議論と具体的なアクションを重ねていきたいと考えている。

【コーディネーター総評】
イノベーションにはダイバーシティが不可欠であるが、ダイバーシティによって必ずしもイノベーションが起こるわけではない。イノベーションは矛盾結合であるため、ダイバーシティだけではアウトプットは右肩下がりになってしまう。だからこそトップマネジメントの意思決定が非常に重要になってくる。P&Gやユニリーバはオープンイノベーションを行い、売上高に占める特許収入の比率を下げ、営業利益率を伸ばしている。外部から様々な技術や知恵を取り込み、イノベーションを起こしている良い事例だ。
ワークショップは「場の論理」「集合知」など場所が生み出す力を持っている。たとえば日立製作所は取締役会をインドで開き、キヤノンは製品開発を1週間の合宿で行っている。JTインターナショナルは本部を置くスイスで、多様な人材による意思決定を行っている。
バックキャスティングの事例では、デュポンが未来を予測し、複数のシナリオを立てた上で農業分野に進出することを決定した。たとえ現実が描いたシナリオ通りに進まなくてもIT技術の進歩によりシミュレーションのスピードと精度は格段にあがっているため、状況に応じて戦略は変更できる。伊原木氏の講演では未来を予想し、シナリオを描き、実績と擦り合せていく、このPDCAサイクルを速く、うまく回していける企業が生き残るということを示唆いただいた。

【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 T E L:03‐5740‐5817

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