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株式会社Nint

2020~2024年のランドセル市場、3大ECモールの売上と購買動向を調査

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オンラインのラン活は「個性の表現」「機能性」「サステナビリティ」「付加価値」がポイント

「データの価値、人の可能性が輝く世界」をビジョンに、国内大手ECモールの市場動向データ分析ツール「Nint ECommerce」(https://www.nint.jp/ec/) を提供する株式会社Nint(本社:東京都新宿区、代表取締役:吉野順子 以下、「Nint」)は、2020年1月~2024年7月におけるECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングの市場)のランドセル市場について調査いたしましたのでお知らせいたします。

■本記事のポイント
-ランドセル市場の2極化傾向
-オフラインと異なるEC市場の購買動向
-ランドセル本体とオプション品で異なる購買タイミング

■主な調査結果
消費者の趣向は「個性の表現」「機能性」「サステナビリティ」「付加価値」にますます重きを置く方向に進んでいることが伺えます。ランドセルは単なる通学道具から、個性やライフスタイルを反映した重要なアイテムへと進化していると言えるでしょう。
オプション品の売れ方の違いを理解することで、ランドセル市場の奥深さや消費者行動の多様性がより明確になります。これからランドセルやその関連商品を購入される方にとっても、実際の使用シーンをイメージして必要なオプション品をタイムリーに揃えることが重要と言えるでしょう。
本レポートでは、モールごとの売れる時期の違い、TOP100商品で見たときの平均単価構成の違い、ランドセル本体とオプション品での購入時期の違いと、TOP100商品からみるEC市場でのランドセル需要の消費者意識の変化について紹介します。

1:3大ECモールにおける「ランドセル市場」の推移
一般社団法人ランドセル工業会の「ランドセル購入に関する調査(2024年)」によると2024年4月に小学校に進学する児童のランドセルを購入した時期は2023年5月が最も高く、次いで8月でした。2024年以前も毎年同様の傾向のため、5月~8月はランドセル市場が盛り上がる季節といえそうです。
同調査では、さらに購入までに訪問した店舗として「WEB」が36%以上(メーカー/卸しのWEB:17.5%・ショッピングサイト:13.0%、GMS/大型スーパー/モールのWEB:6.6%)を占めているとの調査結果も掲載されています。オンラインでの情報収集や比較検討が、ランドセル購入において重要なプロセスとなっていることがわかります。

図1:3大ECモールランドセル市場推移(売上・数量・平均単価)

3大ECモールのランドセル市場は、売上・数量ともに年々上昇しており、2023年では2022年比で115%で成長しています。販売数量は、2023年に2022年比で136%と大きく伸長しています。
ランドセル市場の購入平均単価は、約5.5万円以上が全体の57%を占め、一つの指標価格となっています。一方、3大ECモールの平均単価は、約半額の2.5万円前後で推移しています。
2023年の3大ECモールのランドセル市場は、2022年に比べ平均単価が減少していますが、販売数量が増加し、結果として総売上高は前年を超えています。

次に月別の売上推移を見ていきます。

図2:3大ECモールランドセル市場推移(売上・数量・平均単価)


図3:3大ECモールランドセル市場売上推移12月推移

図2では月別に2020年1月以降を月次で2024年7月までを月次でまとめました。図3では1月~12月を一つの区切りとして、各年の売上推移をまとめました。

図2では、売上が上昇する際に平均単価も上昇する傾向がみられます。
例年、売上と平均単価は比例関係にあり、5月・6月に売上が上昇するとともに、平均単価も年間のピークを迎えることが多いです。一方で、2023年5月・6月に関しては、売上が年間でピークを迎えたにもかかわらず、平均単価は8月がピークでした。売上構成比が高い月で平均単価がピークを迎えなかった結果、平均単価が低い価格帯の売上構成比が増加したことで、2023年の平均単価が下がったと考えられます。該当月の2022年・2023年の売れ筋商品TOP30を比較すると、3つの特徴が見られました。

一つ目は、2022年の商品に「のみ」早期購入特典として「名入れ」や「刺繍」などオーダーメイドの対応をする商品が多くランクインする一方、2023年の5月の商品では、「名入れ」対応商品は0品、6月の商品では1品のみ確認することができました。この変化の背景には、近年の「本名特定」による犯罪リスクを意識した消費者の行動変化が影響している可能性があります。名入れなど「本名」がわかるような商品を好まない傾向が少しずつ増加しているのではないかと考えられます。

二つ目は、平均単価の違いです。2023年の上位TOP30商品の平均単価を見ると、「5月」のほうが「6月」に比べ約1万円高いです。つまり、市場全体の平均単価から見ると、5月の平均単価は6月に比べ「低い」ですが、上位商品のみで確認すると、逆転現象が起きています。この理由としては、5月の商品売上が分散しており、TOP30以下の商品の売上構成比が高く、特にその商品群の平均単価が低いことが挙げられます。一方、6月はこの逆の現象が起き、TOP30の商品の売上比率が高くなったことが要因と考えられます。また、6月には「アウトレット品が売り切れている」可能性があります。

三つ目は、2万円を割る商品が多くみられる点です。2022年6月の売れ筋TOP30商品は、「名入れ」のオーダーメイド商品を中心に平均単価が6万円を超える一方、2023年6月の売れ筋TOP30商品では、2万円を割る商品が数品ランクインしており、このことで平均単価が減少したと考えられます。2万円を割る商品は、価格が低いにもかかわらず「刺繍」や「ランドセルカバーや防犯ブザー」などの購入特典が付いていることが、消費者の支持を得た要因と推察されます。また、2万円以下の商品が増加している背景には、消費者がコストパフォーマンスと品質向上を求めていることや、所得が上がらない中での物価上昇の影響が絡み合っていることが考えられます。

さらに、2023年度で最も平均単価の高かった2023年8月のTOP30商品を確認すると、2万円以下の商品は1品のみとなり、TOP30商品の平均単価は上昇していました。8月における単価上昇の背景としては、アウトレット商品などが減少し、低単価層の商品がなくなり、すべて2024年製品に移行している可能性があります。これにより、市場全体の平均単価が向上していると考えられます。

これらをまとめると、2023年の売上ピーク時における平均単価が上昇しきらなかった要因は、「名入れ」などのオーダーメイド商品の減少、2万円を割る商品が「特典」と「価格」で消費者の支持を受け、その売上構成比を上昇させたことが主な要因と推察されます。月別の要因としては、5月は上位商品の平均単価が高い一方、TOP30以下で平均単価を下げるような商品の構成比が高かったこと、6月は上位商品にも2万円以下の平均単価商品が増加したことで売上上位、下位関係なく平均単価が下がったことが影響していると考えられます。

図3を見ると、3大ECモールでのランドセル市場は、毎年5月と9月に売上が上昇する傾向が見られます。一方でランドセル工業会の調査によると、ランドセル市場で最も購入が多いのは5月、次いで8月です。(参考参照)EC市場において5月と9月に売上が上昇する理由として、まず5月は新年度が始まってから約1か月が経過し、新入生の入学式が一段落する時期にあたります。ゴールデンウィークの連休中には家族でショッピングする機会が増え、この時期にランドセルの購入が集中することが考えられます。また、長期休暇を利用して実家へ帰省する家族も多く、ランドセル工業会の調査によれば、ランドセルの購入者の54.5%は祖父母(父方・母方合算)です。このため、5月は祖父母からの贈り物としてランドセルの購入が増える傾向があります。これらの需要が高まる中で、EC市場でも早期特典付きやオーダーメイド対応のランドセルが購入の選択肢として選ばれ、売上が上昇する要因となっていると考えられます。

次に、9月は次年度の入学に向けたランドセルの購入が本格化する時期です。多くの家庭ではランドセルを1年前から準備し始める傾向があり、特にブランドやデザインにこだわる家庭では早期購入が推奨されます。9月はこうした「先取り」需要が反映される月と考えられます。また、5月と同様に8月のお盆時期に帰省し、祖父母が購入を決めたランドセルをこの時期に購入するケースも多いと考えられます。さらに、購入するランドセルを決めた後、最もお得に購入する方法として9月のモールセールを利用する方も多く、このためEC市場では8月ではなく9月に売上が上昇する傾向が見られると考えられます。

これらの理由から、ECのランドセル市場では、5月と9月に売上が上昇する傾向があると言えるでしょう。

毎年5月と9月に売上が上昇する一方で、特徴的な動きを見せたのが2020年です。この年は6月に売上が突出しており、これは本来5月にオフラインでランドセルを購入する予定だった消費者が、コロナ禍の影響でオフラインでの購入を諦め、EC市場にシフトしたことが要因であると考えられます。


参考:ランドセル購入に関する調査(2024年)より、ランドセル購入時期のアンケート調査

2:モールごとで異なる!売上ピーク時期
3大ECモールで推移をみていたランドセル市場ですが、その動きは各モール同じなのでしょうか?3大モールをそれぞれ「モールA」「モールB」「モールC」としてその動向を確認します。

図4:モールA ランドセル売上推移


図5:モールB ランドセル売上推移


図6:モールC ランドセル売上推移

各モールで見ると、それぞれ特徴があることがわかります。
モールA・Bは市場の需要時期に売上が上昇し、Aモールでは2023年8月に、Bモールでは6月に売上が高くなる傾向がみられます。
一方モールCでは3月に売上が上昇しています。この傾向は2022年より続いており、2024年も同様の傾向が見られます。4月より進学になるので、「駆け込み需要」なのか、それとも次年度を見据えての「超早期の需要」なのか、モールCで展開する場合は需要の判断がポイントになりそうです。
需要時期に関して数か月の違いなどはありますが、これほどまでに動きが異なるジャンルは珍しいと言えます。

3:売れ筋商品とその特徴
モールごとに売れる時期が異なるため、2020年~2024年の各年を基準に、3大ECモールで最も売れたTOP100商品を各年ごとに集計し、その特徴について5つにまとめました。

1.カラーバリエーション
・2020年~2021年の傾向:ランドセルの売上上位の主流カラーは「黒」や「赤」が中心でした。これらの色は男女の性別に基づいた伝統的な選択肢として定着しており、他のカラーの選択肢は限られていました。

・2022年~2024年の傾向:ミントグリーン、パープル、ピンクなどの鮮やかな色が増え、カラーバリエーションが大幅に拡大しました。特にパステルカラーやメタリックカラーが人気を集めており、個性的なカラーを求める消費者が増加しています。消費者はより自分らしさを表現できるカラーを選ぶ傾向が強まっています。

2.デザインのカスタマイズ
・2020年~2021年の傾向:ランドセルのデザインは比較的シンプルで、消費者が選べるオプションは限られていました。ランドセルそのものが機能的であることが重視され、デザインの自由度は低かったです。

・2022年~2024年の傾向:引手や鋲、ステッチなどのデザイン要素をカスタマイズできる商品が増加しました。特に、消費者が自分だけのランドセルを作りたいというニーズに応える形で、デザインのカスタマイズが可能な商品が多く登場しています。これにより、個性を反映したオリジナルのランドセルを求める消費者が増えています。

3.素材と機能性の進化
・2020年~2021年の傾向:以前はクラリーノや牛革といった素材が主流であり、機能面でもA4フラットファイル対応程度が標準的でした。耐久性や基本的な使い勝手が重視されていました。

・2022年~2024年の傾向:最新のランドセルには高級人工皮革やパール生地、さらには防水や自動ロック機能などが標準装備されています。また、タブレットPCの収納を考慮したデザインや、軽量化が図られた素材の使用が増えており、消費者は、より機能性に優れたランドセルを求める傾向が強まっています。

4. サステナビリティとランドセルリメイク
・2020年~2021年の傾向:環境やサステナビリティに対する意識はランドセル選びにおいてそれほど重要視されていませんでした。

・2022年~2024年の傾向:サステナブル素材を使用したランドセルや、使用後にリメイクして別の商品に生まれ変わらせるサービスが上位に登場しています。消費者の間で、環境に配慮した選択肢や、ランドセルを長く愛用した後、キーケースやペンケース、ミニチュアランドセルなどとして、ランドセルをリメイクするニーズが上昇していると思われます。

5. 購入特典とサービスの充実
・2020年~2021年の傾向:ランドセル購入時の特典やサービスは、ネームタグの付属や少額の割引が主流で、購入後のアフターサービスは比較的シンプルなものでした。

・2022年~2024年の傾向:購入特典として防犯ブザーやランドセルカバーなどの実用的なアイテムが付属するほか、7年間の保証や返品保証といったサービスが標準化されています。また、購入時にクーポンを利用することでさらに特典が増えるといったプロモーションも行われています。これにより、消費者は付加価値を重視する傾向が強まっています。

また、上位TOP100商品の平均単価の構成比(図7)を、市場のアンケート調査結果(図8)と比較すると、高単価商品では、ほぼ同じ構成比に、低単価商品ではEC市場のほうが高く、中単価は調査結果より低い傾向が見られます。
このことから、EC市場で高単価商品が売れていないわけではなく、高単価と低単価の2極化により、単価が下がっているのではないかと思われます。
※TOP100商品はランドセル市場の約25%~30%の構成比です。

図7:3大ECモールTOP100商品の単価構成比


図8:ランドセル工業会の調査によるランドセル購入金額帯

4:ランドセル本体と異なる、ランドセルカバーの需要

図9:3大ECモール ランドセルカバーの売上推移

ランドセル本体が前年の5月~8月に購入される傾向が多いのに対し、ランドセルカバーは「4月」に購入されることが多いことが分かります。この需要は、新入生が学校生活を始めてから、ランドセルを利用した上で、ランドセルカバーの必要性を感じる方も一定数いる可能性があると考察できます。このように「ランドセル本体」とオプション品である「ランドセルカバー」では消費者の購買タイミングやニーズが異なっています。事前にしっかりと計画して購入するランドセルとは異なり、オプション品は使用状況に応じて、後から必要に応じて購入される可能性が示唆される内容です。

作成者: マーケティングセールスDiv アナリスト 山本 真大(Masahiro Yamamoto)
編集者: マーケティングセールスDiv エディター 村上 咲(Saki Murakami)

参考出典元
 ・一般社団法人ランドセル工業会「ランドセル購入に関する調査 2024年

■Nint ECommerceに関して
日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。

活用例
 ・商品在庫(SKU単位)の拡充
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Nint ECommerceを活用することで、ECビジネスチャンス創出に役立ちます。ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりNint ECommerceの詳細をご確認ください。

Nint ECommerceはこちら:https://www.nint.jp/ec/

■調査概要・免責事項
・本調査は、Nint ECommerceを用い、国内の3大ECモールである楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングのランドセルジャンルを対象として、EC市場のランドセル市場を調査しました。
・レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。

■調査期間
・2020年1月~2024年7月
(※本稿における Nint 推計データは 2024年8月時点のものを使用)

■調査機関(調査主体)
株式会社Nint

■調査対象
Nint推計データ(期間:2020年1月~2024年7月)
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により日本国内の3大ECモールで販売される商品の売上金額・販売数量を高精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

■転載・引用について
本レポート・ブログの著作権は株式会社Nintまたは執筆者が所属する企業が所有します。 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記してください。
【出典:「2020~2024年のランドセル市場はこう変わった!-3大ECモールの売上と購買動向を大公開-」(2024年8月29日公開)】

■禁止事項
 ・内容の一部または全部の改変
 ・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
 ・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
■過去の調査レポートはこちら:
Nintでは、国内大手EC市場や越境ECに関する情報を週2回ブログで発信しています。
ぜひご一読ください。

https://www.nint.jp/blog/

■株式会社Nint 会社概要
代表者: 吉野順子
所在地:東京都新宿区西新宿八丁目17番1号 住友不動産新宿グランドタワー37F
URL:https://www.nint.jp/corp/
設立:2019年2月
事業内容:ECデータ分析サービスの提供
■株式会社Nintについて
Nintグループは「データで世界を自由にする」というミッションのもと、急拡大するEC市場において、誰もが最適なマーケティング施策を可能とするECデータ分析プラットフォームを実現します。中国・日本のEC市場で10年以上にわたり、EC市場動向に関する推計データを独自に蓄積・提供し、中国で約4000社、日本で約1300社のサービス導入実績があります。

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