~ 全館空調による良好な環境が 冬季の活動量低下を抑制する可能性 ~
パナソニック ホームズ株式会社
慶應義塾大学
パナソニック ホームズ株式会社と慶應義塾大学 伊香賀 俊治名誉教授・川久保 俊准教授らは、室内温熱環境が子どもの活動量に与える影響について共同で実証研究を行い、その成果が、国際学術誌「Indoor Environments」(2026年3月号)に掲載されました。
子どもを対象に、実際の生活環境下で活動量を実測する研究は、測定機器の管理や保護者の記録負担によりデータ確保が難しいことから実施例が少なく、国内外でも希少です。今回の掲載は、こうした希少性と学術的価値が高く評価された結果です。
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d22927-243-d0e20a81639ad959124d4283addc0750.pdf▶全館空調『エアロハス』の詳細はこちら
https://homes.panasonic.com/sumai/lifestyle/airlohas/
世界保健機関(WHO)は、子どもに対し「1日あたり少なくとも60分の中~高強度の身体活動※1」を推奨※2しています。しかし近年、子どもの活動量は世界的に減少傾向※3にあり、肥満や2型糖尿病、心血管疾患リスクの増加など、長期的な健康リスクが懸念されています。特に日本では、冬季の低温や部屋間の温度差が活動量低下の一因とされ、住宅内の温熱環境の改善が重要な課題となっています。
このような課題認識のもと、近年では医学と建築学分野が連携し、住環境が健康に及ぼす影響を科学的に明らかにする研究が活発化しています。こうした学際的研究の蓄積が進むことで、将来的には、WHOなどによる新たな健康基準策定に向けたデータやエビデンスとして活用されていくことも期待されます。
■研究内容と結果
本研究では、断熱性能が同水準(断熱等級5・6)の戸建住宅に居住する4~12歳の子ども26名を対象とし、腰部装着型加速度計を装着して、スマートフォンやテレビ視聴などの静止状態から、着替えや洗面といった日常動作、歩行や階段昇降など室内での移動を含む動作を「活動量」として捉え、その活動強度(METs)※4 を測定しました。あわせて夏季・冬季の室内温度・湿度を10分間隔で測定し、居室・非居室の温熱環境と活動量の関係を分析。搭載した空調設備(全館空調・個別空調)※5 の比較により、室内温熱環境が子どもの活動量に与える影響を検証しました。その結果、冬季に室温が高いほど子どもの活動量が増加し、非居室(脱衣所など)を含む住宅全体の温度差が少なく温熱環境が良好な場合は、冬季と夏季の活動量における季節差が小さいことが明らかになりました。
この研究の成果から、均一な室内温熱環境を実現する全館空調が子どもの健康行動を支え、冬季の活動低下を防ぐ新たな住宅価値となる可能性が示されました。

空調設備(全館空調・個別空調)が子どもの活動量に与える影響のイメージ<冬季>
■研究実施の経緯
2022年に公表した慶應義塾大学とパナソニック ホームズの調査結果※6では、全館空調を備えた住宅※7への転居者は、活動意欲の改善率が有意に高いことを確認しています。これらの先行知見を踏まえ、良質な室内温熱環境が実際の活動量に与える影響を評価するため、本検証を実施しました。
パナソニック ホームズと慶應義塾大学は、今後も連携を通じて得られた科学的知見を活かして、室内温熱環境の改善に着目した商品開発を行い、子どもの健康行動や住む人の健康・生活の質向上を目指すとともに、健康寿命の延伸や生活習慣病予防など社会課題の解決にも貢献できる、快適で安心な住宅を提供していきます。
◆伊香賀 俊治氏コメント(慶應義塾大学 名誉教授)
「伊香賀研究室では、これまで高齢者の身体活動量と住宅の温熱環境との関連を医学系論文としていくつか発表し、子どもの身体活動量については、幼稚園、小中学校の温熱環境との関連を建築学系論文として発表してきましたが、住宅の温熱環境との関連を医学系論文として発表できたのは今回が初めてです。子どもから高齢者までの健康を支える住まいづくりの一助になる研究成果が得られたと思います。」
◆川久保 俊氏コメント(慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 准教授)
「子どもの活動量測定は大人と比較して難易度が高く、依然としてデータが不足しているのが現状です。そのため、夏季と冬季の二つの季節に子どもの活動量を測定し、その活動量と室内温熱環境との関係を検証した本調査の価値は大変大きなものです。今後も引き続き取得したデータの分析を進め、次世代を担う子どもの健やかな成長に資する研究成果を出せるように努めていきたいと思います。」
◎掲載誌について
国際学術誌「Indoor Environments」は、オランダに本社を置く学術出版社エルゼビア(Elsevier)が発行する、屋内環境に関する国際査読制の学術誌です。換気、空気質、熱環境、室内汚染物質、健康影響など幅広いテーマを扱い、工学・建築・公衆衛生・疫学などの分野の研究成果を世界中の専門家に提供しています。国際的に信頼性の高い学術誌として、室内環境と健康に関する科学的理解の促進に貢献しています。
公式サイト:https://www.isiaq.org/indoor_environments_journal.php
◎論文掲載はこちら(Indoor Environments, Volume3, Issue1)
https://doi.org/10.1016/j.indenv.2025.100147
※1: 「中~高強度の身体活動」は、少し息が上がる程度以上の活動(3METs以上)を指し、速歩や遊び、スポーツなどの日常的な身体活動が含まれます。
※2:WHO「Global Recommendations on Physical Activity for Health(身体活動に関する世界的推奨)」(2010年発表)https://www.who.int/initiatives/behealthy/physical-activity
※3:厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書「日本の子ども・青少年における身体活動・座位行動の実態および諸外国における子ども・青少年に対する身体活動・座位行動指針の策定」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202009034A-buntan9_0.pdf
※4:METsは「Metabolic Equivalents(代謝当量)」の略。身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1METs、普通歩行が3METsに相当します。
※5:「全館空調」は、ルームエアコンを熱源として利用し、搬送ファンとVAVダンパーで風量を制御した空気を各居室へ搬送することで、住宅全体を均一に空調する仕組みです。一方、「個別空調」は、各居室にルームエアコンを設置し、在室時のみルームエアコンを稼働させる間歇的な空調方式で、居室ごとに独立して温度調整を行います。
※6:2022年12月15日発信 パナソニック ホームズ プレスリリース「住宅の空調設備が健康症状と生活の質に及ぼす影響に関する調査で、高性能フィルター搭載の全館空調が有意な改善をもたらす結果を検証」 https://homes.panasonic.com/company/news/release/2022/121501.html
※7:「ルームエアコンディショナを熱源とした全館空調システムのエネルギー消費性能 実住宅における実測調査と理論計算に基づく評価法の検討」 日本建築学会環境系論文集,第91巻,第839号,pp.40-48,2026.1
(DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.40)