東京地下鉄株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役社長:山村 明義、以下「東京メトロ」)では、新たに作成した東京メトログループ新中期経営計画(東京メトロプラン2021)において持続的な成長の実現に向けた「新技術の開発・導入」を掲げ、企業や研究機関等と連携し、新技術の開発・導入に取り組んでまいります。同取り組みにおける長期的な主要テーマの一つとして、新たに状態基準保全(以下、「CBM※」)の導入に向けた技術開発に取り組みます。
東京メトロにおけるCBM技術の開発では、近年、進歩が著しいセンシング技術やIOTなどを活用して設備状態監視の充実を図ると共に設備状態データにAI・ビッグデータ分析技術などを適用して更なる安全・安定性向上、コスト削減及び保全業務の生産性向上を目指します。また、設備状態データを遠隔監視できるネットワークを構築し、設備故障時における現場支援体制を強化してまいります。
状態基準保全(CBM)の導入に向けた技術開発の概要
1 背景
当社における鉄道設備の保守はTBM(Time Based Maintenance)と呼ばれる定期的に検査を行う時間基準保全を基本としてきました。
近年、著しい進歩を遂げているセンシング技術(※)やIOTを鉄道設備の保守管理に活用し、これまでのTBM基本とした保全体系に、CBM(Condition Based Maintenance)と呼ばれる状態基準保全の概念を加え、異常の早期発見などにつなげることにより、鉄道運行の安全・安定性の向上、生産性向上・コスト削減及び鉄道運営システムの強化を目指してまいります。
※センシング技術:センサーなどを使用してさまざまな情報を計測・数値化する技術の総称
2 CBM技術開発の概要
(1)設備状態監視の充実について
最新のセンシング技術を活用してCBMの基礎となる状態監視技術の開発を進め、設備状態監視の充実を図ってまいります。
(2)更なる安全・安定性の向上及びコスト削減について
長期に渡り蓄積した設備状態データに最新のAI・ビッグデータ分析技術などを用いて、設備の僅かな異常を捉えた故障予知や劣化予測により設備故障の未然防止を目指します。また、分析結果を基に保全計画を策定し、状態に応じた適切な設備保全(コスト削減)を目指します。
(3)保全業務の生産性向上について
設備状態データを活用することで、従来の検査周期や検査項目を見直すなど保全業務の生産性向上を目指します。
(4)設備故障時の現場支援体制強化について
設備状態データを総合指令所等でリアルタイムに監視することにより、設備故障時における現地保守社員の支援体制を強化し、復旧時間短縮を目指します。
3 開発対象
(1)営業車両の各種装置(ブレーキ、制御装置等)に対する状態監視・分析技術
(2)軌道・電車線・信号等の各種地上設備に対する営業車両等を用いた状態
監視・分析技術
(3)その他設備全般に対する状態監視・分析技術
4 開発工程
CBMの導入に向けた技術開発は長期的に取り組むこととし、東京メトロプラン2021期間中はCBMの基礎となる状態監視技術の開発を進めてまいります。具体的には、丸ノ内線2000系車両等を用いたブレーキ装置等の動態保守システムの開発や、軌道・電車線設備等の状態監視技術の開発などに取り組みます。
状態監視技術が確立され設備状態データが十分に蓄積された設備より順次、故障予知・劣化予測などの分析技術の開発を行っていきます。